インテル、和歌山県などと教育分野向けICT利活用で協業
〜クラスメイトPCを50台導入し、家庭への持ち帰りも可能に

左から山口裕市教育長、中川一史教授、宗像義恵取締役副社長

5月27日 発表



 インテル株式会社は、5月27日、和歌山県教育委員会および放送大学と、和歌山県内の小学校を対象にした教育現場におけるICT利活用の取り組みに関する協業プロジェクトで調印。教員および児童のICT活用能力を育むための教育の整備と普及を目指して、産官学連携で取り組むと発表した。

 同日午後1時30分から、和歌山市内で行なわれた会見では、インテルの宗像義恵取締役副社長のほか、和歌山県教育委員会の山口裕市教育長、放送大学 ICT活用・遠隔教育センター・中川一史教授が出席。三者が調印書に調印したのちに、説明を行なった。

和歌山県教育委員会の山口裕市教育長 放送大学 ICT活用・遠隔教育センター・中川一史教授 インテルの宗像義恵取締役副社長
調印するインテルの宗像副社長など関係者 三者が調印した調印書

 和歌山県では、2009年3月に、同県としては初めてとなる「和歌山県教育振興基本計画」を策定。その中で基本方針として、「子どもの自立を育む学校教育の推進」を掲げており、高度情報化社会に対応した教育に取り組んでいる。今回のプロジェクトを通じて、和歌山県内の市町村との連携、ICT利活用による先進的授業のための教員研修、教育方法の研究、児童1人1台のPCと電子黒板の活用、地元企業によるITサポートなどを通じたICT利活用に向けた広範な教育分野への支援を行なう。

 「教育環境整備」としては、県内の研究対象校4校の児童に対して、今年6月からクラスメイトPCを1人1台環境で配布。さらに電子黒板などのICT機器と連携した授業を行なえるようにする計画。クラスメイトPCは、インテルが開発した教育分野向けの専用のタブレットPCで、軽量で、持ち運びやすく、耐落下衝撃性などの特徴を持つ。すでに東京都中央区教育委員会と実施している実証実験でもクラスメイトPCを導入している。

今回の協業の取り組みは3つの観点から行なう 三者の協力体制について インテルはクラスメイトPCの提供などを行なう
学校に導入されるクラスメイトPC 共同学習におけるICTの有効利用活用を狙うという

 インテルの宗像義恵取締役副社長は、「インテルでは、柏市や中央区の小学校において、実証実験を行なってきたが、和歌山県でのプロジェクトは、約50台のクラスメイトPC配布し、全校で1人1台の環境が整う初めての例となる。児童が学校で使用しているクラスメイトPCを自宅に持ち帰り、家族と一緒に利用して、予習・復習をするといった使い方の実験も取り入れていくことになる」とする。

クラスメイトPCが1人1台環境で導入される4つの研究対象校

 今回、導入する小学校は、那智勝浦町立色川小学校、有田川町立修理川小学校、有田川町立西ケ峰小学校、北山村立北山小学校の4校で、いずれも山間部の過疎地にある小学校。最大でも児童数が1校17人であり、2学年共同の学級や、小学校と中学校が併設されているという例もある。また、ブロードバンド環境の敷設状況は、児童を持つ家庭の約半分程度となっているほか、一部地域ではケーブルテレビの導入によって、ブロードバンド環境が浸透している例もあり、家庭へのネットワーク環境の広がりをみながら、家庭における学習ツールとしても活用していく考えだ。

 和歌山県では、「担任の教員が2学年を同時に教える際には、複数の教材を用意したり、片方の学年の説明をしている際には、もう片方の学年は自習、課題学習といったことになるが、その部分をICTがカバーできるようになるといった活用方法も考えている。また、過疎地では、美術館や図書館などのインフラが近くにないため、都市部の児童と、学習体験や入手する情報量に格差が生まれる可能性もある。こうした点を是正する上でもICTを利活用していきたい」としている。

 また、インテルでは、「児童に求められているのは、ICTの利活用力、問題解決力、協働力、思考・判断力、コミュニケーション力など。これを21世紀型スキルと位置づけ、これを効果的に習得するための仕組みを児童に提供するとともに、それを教える教員に提供していくことが必要。今回のプロジェクトは、その具体的な成果を求めるものになる」と位置づけた。

 さらに中川教授も、「授業でのICT利活用の効果については、学力の向上にどれだけ効果があるのかといった議論もあるが、これは学力=知識、理解の習得に重点が置かれすぎているためであり、知識理解を課題解決や探究活動に応用するという現在の社会で求められるスキルには結びついていない。ICTの活用の効果は、習得型学習の側面だけでなく、表現力や思考力、判断力を育成する活用型学習にある。今回のプロジェクトを通じて、21世紀型スキルを養う教育モデルを構築したい」などと語った。

 「教員の指導力の向上」では、 研究対象校の教員に対しては、インテルの情報教育支援プログラム「インテル Teach」を活用。さらに放送大学の中川教授の協力を得て、授業の評価や授業法の指導などを行なう。

 インテル Teachは、インテルが10年前から全世界で展開しているICT利活用向上を目指すための教員向けの教育プログラムで、これまでに全世界40カ国、600万人がの教員が利用。日本でも30,500人の教員が受講した実績を持っている。

 さらに、放送大学 ICT活用・遠隔教育センター・中川一史教授が中心となり、研究対象校でのICT利活用授業計画、教員研修プログラムの評価、授業指導や助言、授業環境についての評価などを行なう「T21プロジェクト」を発足。このプロジェクトを実行するためのT21実行委員会を、教育工学および情報教育関係者、教育委員会関係者、学校教員、和歌山県関係者、インテルとともにスタートさせ、「ICT活用授業モデルの構築という観点では、とくに、共同学習場面でのICTの有効活用を研究していきたい」(中川教授)とした。

 また、「ITサポート」では、和歌山県白浜町にあるクオリティの関連会社「株式会社エスアールアイ」と連携して、学校現場に対するITサポートとヘルプデスクの提供に加え、支援体制の構築によるICT人材の育成、雇用創出を図る。

 「インテルにとっては、教育現場のICT利活用の促進だけでなく、こうした活動を通じた地場IT産業のビジネス機会の創出にもつなげたいと考えている。ここまで含めたビジネスモデルを構築した上で、全国に広げていきたい」(宗像副社長)としている。

 一方、和歌山県教育委員会の山口裕市教育長は、「今回の実証実験の成果をもとに、これをモデルケースとして、和歌山県内外に展開していけるように考えていきたい」とした。

 まずは2011年3月までに実証実験を行なった結果を取りまとめ、次年度以降の活動に生かしていくことになるという。なお、このプロジェクトは時限的なものを設けずに展開していくことになるという。

(2010年 5月 27日)

[Reported by 大河原 克行]