レノボ、ThinkPadのNEC PC米沢工場での試験生産を開始
~NEC・レノボの合弁から1年が経過し、協業をさらに加速

ロードリック・ラピン氏

7月4日 発表



 レノボ・ジャパン株式会社とNECパーソナルコンピュータ株式会社(NEC PC)は3日、NECレノボ・ジャパングループ発足1周年を迎えての記者説明会を開催。この中で、グループ会長のロードリック・ラピン氏は、これまでの1年間の成果を振り返るとともに、今後、大和研究所で開発するThinkPadの一部を、日本ユーザー向けにNEC PCの米沢工場で試験生産することを発表した。

 NECとレノボ・ジャパンの合弁によるグループが発足して7月4日でちょうど1年が経過した。2012年度の両社合算による年間出荷台数は、前年比6%増の398万1,000台、年間売上高は同11%増で、日本市場シェアは過去最高の26.4%に達した。これについてラピン氏は、「これまでのPC市場では2社が合併しても、さまざまなボトルネックで1+1が2にならず、1.5程度に収まっていたが、我々は日本市場に注力した結果1+1で2を超える結果を出した」と、幸先の良いスタートを切ったことを紹介した。

 Lenovo単体のワールドワイドの業績はというと、この1年間でシェアを2倍に伸ばし、順位も世界4位から2位に登りつめており、ラピン氏はこれも、合弁による効果がLenovoグループ全体に波及したためと説明した。

 顧客サービスの面でも両社は協業や内容強化を進めており、レノボでは個人向けのコールセンターをNEC PCへ移管、NECでは無償修理の1日対応を開始するなどしてきたが、今回新たに、7月30日よりレノボの法人向け製品についてもNEC PCに電話サポートを移管することを発表した。これにより、これまで平日のみだったサポートが、第3日曜日を除く土・日・祝日にも受けられるようになる。

 同グループでは2011年からの3カ年で日本シェア30%という目標を打ち立てているが、ラピン氏はそれに向け、2012年度はさらなる投資と、両社間での積極的な人事交流や共同開発を行なっていくと述べた。

2012年度は国内出荷台数、売上高とも伸び、過去最高シェアを獲得ワールドワイドでもLenovoは世界第2位に当面の目標は国内シェア30%

 続いて、レノボ・ジャパン代表取締役社長の渡辺朱美氏が、レノボとしての取り組みについて説明した。

 渡辺氏は、大学卒業後にIBMに就職し、当時の大和研究所で勤務。1990年代前半はThinkPadの開発、後半はThinkPadの販売に携わった経歴を持つ。NECと合弁したことで、NEC PCの持つ日本向け技術をレノボ製品に取り入れ、日本市場に合わせた製品ラインナップを拡充するとともに、シェアおよび国内顧客満足度で外資系1位を目指したいとの意思を改めて表明した。

 また渡辺氏は、合弁による具体的な成果として、23型液晶一体型PC「IdeaCentre B540p」にNEC PCが開発したTV視聴/録画ソフト「SmartVision Light」を搭載することを発表した。同ソフトは10年以上の実績を持ち、現在でも最新の「VALUESTAR W」などに搭載されている。

 ホームネットワークや、スマートフォン、Twitter連携機能の付いたフル版ではないが、渡辺氏は、優先度の高い機能を少しでも早くユーザーに提供したかったため、スタンドアロンとなるライト版の提供に踏み切ったと説明した。同製品の発売は8月下旬の予定。

渡辺朱美氏レノボの法人向け製品もNEC PCで電話サポートを請け負う
IdeaCetre B540pにSmartVision Light搭載実機

 次に、NEC PC代表取締役社長の高塚栄氏が、同社の取り組みについて説明した。

 高塚氏は、この1年間について、レノボの統括力、技術力、世界シェア2位の勢いを感じ、刺激を受けながら取り組んできたとした上で、合併当初はNECがどうなるのかという不安の声もあったが、それを払拭する結果が出せたと、自己評価した。

 昨日発表になった、重量約875gの世界最軽量Ultrabookである「LaVie Z」は、開発こそNEC PC単独だが、合弁の相乗効果によるリソースを活かしたものだと紹介した。高塚氏によると、これまでNECでは、売れ筋のみでノートPC 3機種、デスクトップPC 3機種といったラインナップ展開をしていたが、合弁を機に、技術者としての“世界一を作りたい”という思いを結実させ、LaVie Zを完成させたという。

LaVie Zを持つ高塚栄氏PC+の時代に合わせ、AKK+を提供し、顧客満足度向上を図るLaVie Zの軽さの秘密は、底面に使われた新開発のマグネシウムリチウム合金
同じ体積のアルミはほぼ2倍の重量がある実際の底板LaVie Z内部。手前の凸字状のものがバッテリ
ヒートシンク。ヒートパイプはCPUだけに伸びており、チップセットは内部の吸排気だけで排熱するSSDはモジュール式約875gという軽さのため、女性でも片手で楽々持てる

 さらに今後は、Lenovoの持つ技術を深いレベルでNEC PC製品に融合させる予定で、具体的内容は明かされなかったが、1月のCES 2012で披露された特徴的なLenovo製品の開発者らと、日本向けに最適化したものを開発中だという。

 また、これまでNEC PCは、安心・簡単・快適の“AKK”をモットーに製品開発を行なってきたが、今後はPCがスマートフォンやタブレット、クラウドとも連携する“PC+”の時代になることを見据え、AKKも遠隔サポートなどの最先端技術を応用したAKK+へと進化させていくとした。

 さらに高塚氏は、同社のPCは基本的にどのメーカーのマシンやクラウド/サービスともつながることを目指すと明言。ユーザーが一番使いやすいと思うどの商品やサービスとも連携可能にしつつ、同社製品同士ならより便利になるといった味付けをすることで、差別化していくとの方向性を示した。

ThinkPadの米沢事業場での試験生産開始を発表

 最後に、ラピン氏が再登壇し、もう1つの協業として、Lenovoが大和研究所で開発しているThinkPadの一部を、NEC PCの米沢事業場において試験生産開始することを明らかにした。

 具体的な機種名や時期、規模などは明らかにされていないが、対象となるのは日本市場に投入するモデルの一部。今後、本格生産に移行するかどうかは、試験生産のフィードバックを元に判断していく。

 質疑応答で、ThinkPadの米沢生産のメリットについて問われたラピン氏は、短納期が可能になることを挙げた。また、競合他社は現在、中国市場でのシェア獲得に躍起になっているが、Lenovoはすでに1位の地位にあるため、戦略的市場として他の外資系よりも日本により注力できると説明した。

 今後の課題について、渡辺氏は、レノボ・ジャパン単体の国内シェアはまだ8%程度であるため、ブランド認知力を挙げるべく努力したいと述べた。また、高塚氏は、合弁運営についての難しさは特に感じていないものの、お互い顔をつきあわせたビジネスをするために、現在六本木と大崎にあるそれぞれの事業所をなるべく早く統合したいとの考えを示したほか、PC以外の製品にも取り組んでいきたいとの意欲を見せた。

(2012年 7月 4日)

[Reported by 若杉 紀彦]