日本HP、企業向けノート/デスクトップ/ワークステーションを一斉に発表
~コストから“節電”と“リモート”へ流れが変わる


 日本ヒューレット・パッカード株式会社は、企業向けPCの新ラインナップを発表した。今回、発表された製品はデスクトップPC 2機種、ノートPC 6機種、エントリークラスサーバー 2機種、ワークステーション 1機種に及ぶ。

 ここでは、発表会の模様と、サーバー製品などの動向を紹介する。ノートPCについては別記事を参照されたい。

●IT機器への要求が変わった
岡 隆史 副社長

 取締役 副社長執行役員 パーソナルシステムズ事業統括の岡 隆史氏は、「3月11日の東日本大震災以来、世の中全体が変わったが、IT機器に要求される要素も大きく変わった。以前はコストと機能が重視されていたが、節電という機能が非常に重視されるようになった」と語った。

 「省電力については、電力の利用制限という大きな枷がある。また、そういう状況下では、オフィスに全員が出社して勤務するというスタイルも変えなければならない可能性が高い。自宅からリモートで勤務するとか、東京ではない遠隔地に置かれているサーバーを管理するという状況も増えるだろう」とリモート機能の充実が必須であると述べた。

「節電」が重要なテーマに浮上どこにいても仕事が出来る環境が必要になった

 また、質疑応答に対して次のように語った。

 「ポータブル性がありバッテリを内蔵しているノートPCの出荷比率が高まるのではないかと予想しているが、3月の時点ではまだその兆候はない。しかし日本HP社内でも、勤務スタイルの変化に合わせて、これまでノートPCが支給されていない社員全員にノートPCを配布するよう動いている。夏の節電対策を控え、ここ2~3カ月で、ノートPCの比率が高まると見ている」。

 「デスクトップPCやワークステーションに対するUPSの出荷量はあまり増えていない。市場からUPSが払底している状況なのも影響している。ただし、サードパーティ製品についての問い合わせは増えており、動作検証やセット売りの準備は進めている」。

 「部材については、サプライチェーンに問題はない。しかし、長期的にはメモリや光ドライブのピックアップなどは、供給が減る可能性があり、価格動向には注意している」という。

●エントリーサーバーでもリモートと節電に対応

 今回、発表されたサーバーは2機種で、「HP ProLiant ML110 G7」(87,150円~)と「HP ProLiant DL120 G7」(99,750円~)。いずれもエントリークラスのサーバーとなる。

 製品を紹介したインダストリースタンダードサーバー製品本部 本部長の橘一徳氏は、「従来、エントリーサーバーはコストが最優先で、コストパフォーマンスの高さで選ばれていた。しかし、省電力、遠隔操作、管理機能の重視などの機能は不可欠のものとなった。今回のエントリーサーバーは、機能を削って価格を下げたのではなく、エンタープライズクラスの機能を盛り込んだ上で、10万円を切るスタート価格に設定した」と語った。

これまでのエントリーサーバー求められる要素が変わったサーバーに提供されるリモート管理機能

 節電については、32nmプロセスで製造されてTDPが20Wからと低いXeon E3ファミリCPUの搭載、多数の温度センサーによって特定の部分を冷却するゾーンクーリング、最大変換効率が92%と高い80PLUS GOLD認証電源の採用などが中心技術となっている。

 リモート機能は、HP独自の「iLO(アイロ)3」を標準搭載し、電源の操作、OSに依存しない仮想コンソール、手元のPCの光ドライブを仮想メディアとしてサーバーにマウントさせる遠隔メディアマウントなどが可能となっている。また、ホットプラグ対応のHDDや、冗長電源対応など、可用性にも配慮されている。

●デスクトップPCやワークステーションも“節電”

 デスクトップPCは2機種4モデル、ワークステーションは1機種2モデルが発表された。

 いずれもIntel CoreシリーズCPUをベースとした製品で、省電力性とセキュリティへの配慮が特徴となっている。

 デスクトップPCでは、電源効率90%以上の80PLUS GOLD電源の搭載などにより、最小で17Wに消費電力を抑えた。4年前のモデルでは85Wを消費しており、約80%削減したことになる。

 ワークステーション「HP Z210 Workstation」と「HP Z210 SFF Workstation」は、Xeon E3の搭載で基本性能を上げた。また、ワークステーションとして初めてIntelのvProに対応して管理性を高めている。

 また、HPのワークステーションは、エンジニアによる専用サポート窓口があり、土日祝日の修理対応も標準で用意される。

 製品説明にあたったPSG製品統括本部 本部長の島田昌彦氏は、「今後、節電状況によっては、勤務のシフトが変更され、土日に勤務することが増える可能性が高い。こういうサポートの体制の充実が、必要とされる機会が増えるだろう」と述べた。

4年前の製品に比べると、消費電力は大きく下がったHPオリジナルの電源管理ソフトウェアが付属する電源管理ソフトウェア「HP Power Assistant」の画面例
省スペースデスクトップPCには、ディスプレイと一体になるオプションも用意されるデスクトップPCの消費電力比較。右は4年前のモデル最新機種は16Wなのに対し、4年前の機種は75Wを消費する
ワークステーションの新旧消費電力比較。右が4年前のモデル3Dを使ったベンチマークソフトでの比較。消費電力自体の差は少ないが、3Dのスムーズさは大差がある。消費電力とパフォーマンスの比率では大きく向上している

 また、ノートPCに関しては、メンテナンス性の向上が最大の眼目だ。従来のHPのノートPCは、HDDやメモリの交換などが難しい製品が多かったが、今回の製品の大半は、本体の底面が非常に大きく開くようになっている。このフタの固定も単純なネジ止めで、すぐに外せる状態だ。

 また、キーボードは、アイソレーション型が中心となり、本体デザインも金属表面を生かしたシンプルなものとなっている。

ノートの底部が大きく開く。メンテナンス性が大きく向上した実機の例。底面のほとんどの部分が開いてしまうフタは1枚板で薄い

(2011年 4月 21日)

[Reported by 伊達 浩二]