UQ、定例説明会で「WiMAX 2」に向けた道のりと技術的優位性を解説
~イー・モバイルが42Mbpsなら、我々は48Mbpsになる

代表取締役社長の野坂章雄氏

9月29日 開催



 UQコミュニケーションズ株式会社は29日、報道向け説明会「UQコミュニケーションサロン」の第2回を開催。2012年に商用サービス開始を予定する「WiMAX 2」に向けたロードマップや、競合他社に対する技術的優位性などを解説した。

 2月に行なわれた第1回では、当時の代表取締役社長である田中孝司氏が説明を行なったが、今回はまず6月に新社長に就任した野坂章雄氏が現状などについて説明した。

 まず、加入者数の推移について、9月末で33万契約となる見込みで、2011年3月末には当初からの目標通り80万契約を実現できる見通しだとした。ただし、製品の内訳については変化が出てきている。これまでは、3/4近くが外付けの通信カードだったが、iPadの登場以降、同社が「WiMAX Speed Wi-Fi」と呼ぶ携帯型のWiMAXルーターの出荷が増えている。また、WiMAXを標準搭載するノートPCも増えており、2011年3月には通信カードの割合は1/2程度になる見込みという。

 基地局数は8月に1万局達成が発表されたが、9月末には11,000局、2011年3月末には15,000局にまで増やす予定で、2010年の3月の7,000局から2倍以上に増えることになる。

契約数の推移は見込み通り機器の内訳には変化が基地局は2010年度末までに15,000局になる見込み

本日付けでWiMAX PC バリューセットキャンペーンを開始

 製品の展開/マーケティングについては、本日付けで、「WiMAX PC バリューセット」キャンペーンを開始することを発表。これにより、最大2カ月間の利用料と初期登録料が無料になり、無料期間終了後も10カ月間は、「UQ Flat」の最低利用料が380円から0円になり、最大利用料も4,980円から4,600円に引き下げられる。

 野坂氏はこのキャンペーンの狙いとして、WiMAXは使ってもらえれば、その良さが納得してもらえるので、まずはユーザーに使ってもらう最初の一歩を後押しすべく、訴求していきたいと考えた、と語った。

 また、9月1日から、米Clearwireと提携し、2011年3月まで無料で米国においてWiMAXを利用できる「WORLD WiMAX」サービスを開始したことも言及した。同サービスでは、特別な手続きなしに、完全無料でWiMAXが利用できる。

 10月5日から幕張メッセで開始される展示会「CEATEC JAPAN 2010」では、7日に野坂氏による講演が予定されているが、そのタイミングで新しいモバイルルーターなどが発表される予定という。

 また、すでに予告されている通り、CEATECの同社ブースでは、通称「WiMAX 2」ことIEEE 802.16mを使った、超高速通信のデモを行なう。

●WiMAX 2では300Mbpsを超える速度を実現
ネットワーク技術部長の要海敏和氏

 このWiMAX 2の技術面については、同社ネットワーク技術部長の要海敏和氏が解説を行なった。

 WiMAX 2は、現行のWiMAXとの互換性を保ちながら、周波数帯域を10MHzから20/40MHzに、MIMOを2x2から4x4(技術的には8x8まで)へ増強するなどし、転送速度を下り40Mbps/上り10Mbpsから330Mbps/112Mbpsへと高速化するもの。また、350km/hを超える速度で移動しながらも通信できる。

WiMAXとWiMAX 2の比較

 このような高速通信が可能になる理由として要海氏は、WiMAXが通信方式にOFDMA方式を使っていることを挙げた。

 競合のイー・モバイルが10月にサービスを開始する予定のDC-HSDPAサービスは、電波のシンボル長に対して5MHzのRF信号を2つだけ送信するCDMA方式を採用する。これに対し、WiMAXのOFDMAでは、1,024のサブキャリアに分割して通信する、これにより無線リソースの高密度使用が可能、低クロックで信号処理の精度が高いといったメリットが出せるほか、MIMO技術も組み合わせることで、300Mbpsを超えるような広帯域化が容易に実現できるという。

WiMAXは、MIMO技術により、リニアに速度を向上できるOFDMAを採用するのも、DC-HSDPAに対する優位点

 もう1つ、DC-HSDPAに対しては、42Mbpsという数字が現実味を伴わないことを強調した。というのも、これは3GPPが規定する規格自体がそのような書式になっているのが原因なのだが、この数字には誤り訂正にともなう実行転送速度の低下分が含まれていないからだ。

 要海氏は、移動体無線通信では誤り訂正が必須であるとした上で、WiMAXは6bitの内1bitを誤り訂正符号に用いているので、DC-HSDPAのように、この誤り訂正符号分も転送速度に含めると現行のWiMAXは48Mbpsとなるし、逆にDC-HSDPAに誤り訂正符号分を加味すると、35Mbpsになると説明し、現行WiMAXでもDC-HSDPAより高速であるとした。

誤り訂正符号分を加味すると、WiMAXは48Mbps相当となる逆に3GPP系の規格から誤り訂正符号分を差し引くと、このような速度になる

 WiMAX 2は、WiMAXと互換性があるので、WiMAX 2に移行しても、現行の機器はそのまま利用できる。商用導入時期は2012年を予定しており、これは競合となる次期LTE(3GPP Release 10)に対して2年先行していることをアピールした。

 CEATECで行なわれるデモは、有線を使った仮想的なものとなるが、4台のPCに4本ずつのフルHD動画と、1台のPCに3DフルHD動画のストリームを、WiMAX 2の端末から配信し、300Mbpsを超える性能を実証する。

 このほか、要海氏は、UQが可能な限り帯域制限を行なわない方針であることも、競合に対する優位点であるとした。現在、3Gキャリアは軒並み、一定以上の通信を行なうユーザーに対して、帯域の制限などを行なっている。

 これに対してUQコミュニケーションズでは、もともと高速大容量通信として出発し、かつそれを差別化要因としていることから、そのような制限は一切行なっていない点を訴求している。

 ただし、これは逆に考えると、ヘビーユーザーとライトユーザーとの間に不公平感も生まれるため、将来的には何らかの是正を行なうことも検討しているが、同社では、WiMAX 2への移行による高速化や、周波数の追加獲得による容量拡大といった努力により、帯域制限は今後も可能な限り行なわないことを明言した。

(2010年 9月 29日)

[Reported by 若杉 紀彦]