株式会社東芝は9日、20nm世代として世界初となる、LSI向けのCMOS素子で実用的なプロセスを実現する新技術を開発したと発表した。
20nmプロセス世代では、チャネル部での電子の移動度の低下や、ゲート電力のしきい値電圧のばらつきが大きく、従来のバルクCMOSの適用が物理的に困難とされてきた。今回、東芝はチャネル部の不純物について、表層を低濃度、奥側を高濃度に変化させる構造をとることで、ゲート電極の制御を抵抗の低い表層の部分に絞り込み、電流を制御できる技術を開発した。これにより、コストがかかり生産効率が低下するSOI(Silicon-on-Insulator)基板や、3Dゲート構造などが必要なく、バルクCMOSを延命できるという。
これまでは、nMOSについてはチャネル不純物の開発が進んでいたが、pMOS側の最適化との両立が実現できていなかった。東芝は、nMOSおよびpMOSを効率的に形成する素子構造とプロセスを開発し、従来よりも15~18%の高い性能を実現。今回の技術の特長は、材料と構造の最適選択にあるとし、pMOSの不純物をヒ素に変更し、Si:C層(炭素添加シリコン)の直下に、新たな中間層としてボロン添加シリコン層を設けるだけで解決することが分かったという。
この成果は、米国メリーランド州で開催される半導体の国際学会IEDMで発表される。
(2009年 12月 9日)
[Reported by 山田 幸治]