日本AMD、未発表GPUでDirectX 11 SDKをデモ
~CEDECにて、国内初

日本AMD 土居憲太朗氏

9月1日 発表



 日本AMD株式会社は1日、未発表のGPUを用いたDirectX 11 SDKのデモを、ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2009」で公開した。

 デモを担当したのは、同社マーケティング本部 PCプラットフォーム・プロダクトマーケティング部の土居憲太朗氏。AMDの未発表GPUを搭載したマシンで、DirectX 11 SDKに収録されているサンプルプログラムを動作させた。こうしたデモの公開は国内で初という。

 1つ目のデモでは、描写されている戦車のグラフィックスに対し、汎用演算API「Compute Shader 5.0」のON/OFFでパフォーマンスを比較。OFF時に70だったFPSが100強まで向上したことを示した。

1つ目のデモCompute Shader 5.0をOFFにした場合のエフェクト。FPSは70程度Compute Shader 5.0をONにした場合のエフェクト。FPSは100強

 2つ目のデモでは、DirectX 11環境でのテッセレーションをデモ。テッセレーションのバージョンの切替や、スライドバーによる頂点の増減をリアルタイムに操作した。さらに、頂点を増やすことにより負荷が高くなるが、必要ない部分ではテッセレーションをOFFにすることで負荷を抑える機能も紹介した。

テッセレーションのデモテッセレーションをリアルタイムで操作テッセレーションが不要な部分をOFFにして負荷を下げる機能も

 同氏は、「今後プログラムを書く中で、キャラクターをリアルに表示するために必要になってくる技術だろう」とした。

 今後のロードマップでは、DirectX 11対応GPUのリリースを“Coming Soon”(もうすぐ)とし、2010年にはメインストリームノートPC向けにDirectX 11対応GPUをリリースする予定。日本ではノートPCへのGPU搭載率が5%程度だが、ヨーロッパでは6~7割あり、それをターゲットにするという。

●DirectX 11は次世代グラフィックス技術の塊
マイクロソフト 鵜木健栄氏

 AMDの講演に先立ち、マイクロソフト株式会社 XNAグループ XNAデベロッパーエバンジェリズム リードプログラムマネージャー/DirectX プログラムマネージャーの鵜木健栄氏がDirectX 11を紹介。

 「DirectX 11は、今やグラフィックスだけでなく汎用的なComupte Shadingもサポートする。ハードウェアによるテッセレータや、新アルゴリズムによるテクスチャ圧縮を搭載し、次世代グラフィックス技術の塊になっている」と述べた。

 DirectX 11における大きな変更点として、下位互換性を備えDirectX 9/10/10.1のハードウェアに対してもインストールできること。DirectX 9/10対応アプリケーションとの互換性を備えること。対応OSがWindows Vistaと7であることが挙げられた。

 なお、DirectX 11はWindows 7に搭載されており、RTM版などで体験可能となっているが、一般のユーザーへも近いうちに公開される予定だ。

●CPUとGPUを擁するのがAMDの強み

 これを受け、AMDの土居氏は、AMDが打ち立ててきた世界初の記録を振り返り、パフォーマンス/ワットの向上やスイートスポット戦略により成功を収めてきたとする。その成功例として、Radeon HD 4000シリーズを挙げ、テッセレーションを含むDirectX 10.1対応やATI StreamによるトランスコードとAI操作でゲームの可能性を広げてきたという。

 ここでおなじみのカエルとゴブリンを組み合わせたFroblinのデモを紹介。GPUを用いたATI Streamにより、3,000に上るキャラクターのAIをリアルタイムで動作させ、スムーズにパスファインディングが行なわれることを示した。

 そして、コンピュータ業界ではオープンスタンダードが求められており、インターフェイスやAPIがオープンな物へと切り替わってきたことを紹介。CPUとGPUを擁するAMDのプラットフォームで、ATI Streamなどを含む強力なAPIを組み合わせることで、処理の振り分けを最適に行なえるとした。

AMDと旧ATIの世界初の記録パフォーマンス/ワットの強化スイートスポット戦略
ATI Streamによるパスファインディングテッセレーションのデモ

●DirectX 11への移行が進む

 AMDのセッションの次のコマでは、NVIDIAの風間隆行氏がDirectX 11の機能を掘り下げて紹介した。

 同氏は、「D3D11(Direct3D 11)はD3D10に改良と追加が施されたバージョン」と位置づける。追加された機能としてはCompute Shader、テッセレーション、マルチスレッディング、Dynamic Shader Linkageがあり、改良された機能としてはShader Model 5.0、新しいテクスチャ圧縮、より広いメモリ領域、Read-Only Depthなどを挙げた。

 上記に機能により、DirectX 11では下位互換性や、プログラミングの自由度の高さ、表現力の強化などがあり、移行が進むとした。

NVIDIA 風間隆行氏DirectX 11への移行が進む理由新しいテクスチャ圧縮アルゴリズム(下)と旧アルゴリズム(上)の比較

(2009年 9月 2日)

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