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10cm精度で測位が可能なTOUGHPADで視界ゼロでもラクラク除雪

 パナソニックが業界としては初となる1周波RTK-GNSSを搭載したWindowsタブレット「TOUGHPAD」を開発、この12月から北海道岩見沢市で、このシステムを使った除排雪作業支援システムの実証実験を開始する。

 既存のTOUGHPADに衛星電波受信モジュール、ワイヤレスWAN、1周波RTK-GNSS、外部アンテナを接続、3次元道路地図などを併用し、道路環境の可視化を実現する。

 RTK(Realtime Kinematic)による測位システムは2周波を使った専用端末であれば2cm程度の精度での測位が可能だが、かなりの高額になってしまうため、普及が限定的なものとなっている。また、1周波のものではコールドブートに10分間を要するにもかかわらず、やはり相当のコストがかかってしまう。

 そこでパナソニックでは、1周波のRTKとWANによる国土交通省提供の電子基準点1,200カ所を使った補正データを併用し、独自のアルゴリズムによって条件次第では10cm精度の測位を可能にするシステムを開発した。同システムではハードウェアとして50万円前後、現場に応じた3D地図の作成等に要する費用を入れても、これまでの数分の一のコストで提供できるという。

 北海道岩見沢市での除排雪支援では、除雪支援アプリを開発、雪に覆われた道路建造物を可視化する。また、スマート農業や、土壌汚染や空間線量汚染など環境の調査保守など、作業位置の目視特定が困難な用途での使い方が想定されている。

 例えば、雪深い地域の農道は、雪の降る季節は除雪せずに、春を迎えた時点で除雪を開始する。その作業においては作業者が道路について熟知していなければならず、例え熟知していたとしても側溝に除雪車を落としてしまうような事故が絶えなかったという。作業者が見えないはずの道路が見えれば……、というのは、関係者にとって悲願でもあったという。

 また、農業においては肥料の散布作業などで、どこまで肥料を撒いたか分からなくなるうえ、撒き過ぎはかえって農作に悪影響を与えてしまう。現在、北海道の超大規模農家などでは、こうした作業のために軽く100万円を超えてしまうような専用機が使われているにすぎず、普及は限定的なものとなっている。それを半額以下で提供できるソリューションであれば、ぜひ使いたいという現場は少なくないはずだ。

 パナソニックでは、除雪と農業は密接な関係があると考えているという。というのも、除雪のシーズンと農繁期はちょうど表裏の関係にあるからだ。個々の農家がシステムを導入するのは難しいかもしれないが、自治体として導入してもらい、除雪用のものを農繁期に農業用に貸し出すようなことができれば両方で活用してもらえるからだ。

 市場規模としては、日本国内におけるいわゆる豪雪地帯の自治体は約100市町村。除雪用装備を持つのは1万車両程度あるのではないかという見積もりだ。そこに農業用を加えれば約6万台となり、そのシェアの半分以上を取りたいとパナソニックでは考えている。

TOUGHPADに高精度測位システムを実装、除雪支援アプリとともに使うことで、豪雪地帯の雪の下を可視化することを説明するパナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部市場開発部ソリューション事業推進課主幹、西谷裕之氏
除雪車にTOUGHPADをマウントで取り付けるることでカーナビ的な装備となる
農業用のトラクターに取り付けたところ。外部アンテナ入力がされているのが分かる
ドライバーからはこんな感じ。今回行われたデモでは除雪車とトラクターが登場したが、両車ともにフロントガラスには目隠しのために暗幕が貼られていた
道路を可視化した3D地図。今回のデモ用に作成されたもので会場の駐車場全体を地図データにもっている。あまりにも細かい地図では導入コストが高くなってしまう
障害物が近づくと画面全体が黄色くなり注意を促す
さらに近づくと赤くなる
駐車場にマークされた白線を目隠し走行。地上に置かれたカボチャのオブジェを踏まないで通過できるか……
見事に成功。10cm精度ならこんな芸当も可能だ
ドライバー視点ではこうなる。ドライバーに聞いたところ、どんなに視界が悪くてもやはり前方は凝視するので、できればもう少し画面は大きい方がありがたいということだった。汎用的なタブレットを使っているため、そのような要望にもすぐに応えることができる

(山田 祥平)