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キヤノン、2014年はスマホ/タブレット印刷の市場拡大を牽引
~インクジェットプリンタ新製品発表会を開催
(2014/8/29 06:00)
キヤノンは28日、インクジェットプリンタ「PIXUS」シリーズならびに、ビジネス向けの「MAXIFY」、「Satera」シリーズの製品発表会を開催。新製品の概要や、コンシューマ、ビジネスそれぞれの製品戦略などを紹介した。
冒頭で挨拶に立った、キヤノンマーケティングジャパン株式会社代表取締役社長の川崎正己氏は、国内の市場動向と新製品のターゲットを紹介。
国内のインクジェットプリンタ市場は、2014年前半に消費増税前の駆け込み需要や、Windows XPサポート終了という効果があったものの、年間を通しては前年(2013年)並みの510万台規模と予測。
他方、プリンタへ印刷をするデバイス(ホストデバイス)の出荷台数は、PCが微減傾向にあるのに対して、スマートフォンやタブレットが伸長。実際にスマートフォンから印刷したことがある人も2011年の9.5%から2013年には32.3%へ、タブレットから印刷したことがある人は2011年の5.9%から2013年には31.7%へ拡大しているとのデータを紹介した。川崎氏は「スマートデバイスからの印刷を普及させることは、まだ道半ばにある」とし、2013年から訴求を進めてきたスマートフォンからの印刷に引き続き注力していく姿勢を示した。
また、スマートフォンから75%が写真印刷、タブレットからは54%がネット上のコンテンツを印刷したことがあるというデータも提示。クラウドやSNSのデータを印刷したことがある人も32%に上っており、「スマートデバイスとクラウドの普及は、プリンタにとっても大きなチャンス」とした。
こうした戦略の下、今回発表された製品では、最上位モデルにNFCとWi-Fiを利用して“タッチ”するだけで印刷できる「PIXUSタッチ」や、タブレットからコンテンツを編集/印刷できる「EasyPhoto-PhotoPrint+」(EPP+)に対応したほか、従来モデルより提供していたクラウドサービスとの連携機能「PIXUSクラウドリンク」はサービスを拡大させ、OneDriveなどにも対応。これらの機能で「ホームプリント市場を活性化させる」と意欲を示した。
さらに川崎氏はビジネスプリンタ市場についても言及。510万台規模のインクジェットプリンタ市場のうち、ビジネスインクジェット市場は53万台規模に過ぎないが、実際には家庭向けに販売されているモデルをビジネスに利用している例もある。そこにビジネスレーザーの市場を合わせると、180万台規模の市場になると分析。ビジネスインクジェットついては現在の53万台から、60~70万台規模になると予測している。
これまでキヤノンでは、家庭向けインクジェットの一部モデルや、レーザー製品のSateraシリーズでビジネス用途の提案を進めてきたが、利用する環境や印刷ボリューム(枚数)などに応じて細やかに対応すべく、スモールオフィスを主要ターゲットとするビジネスインクジェット「MAXIFY」シリーズを発売する。MAXIFYという名称は、最大を意味する「MAX」に、動詞化する時に付与される「IFY」をを付加。ダイナミックに進化を続けるというイメージを与えるブランド名であるという。
また、Sateraシリーズも新製品を投入。Sateraは大企業からスモールオフィスまで幅広くカバーし、MAXIFYはスモールオフィスを中心にカバーする。これにより川崎氏は「オフィスのあらゆるプリントニーズに応えられる盤石な体制が整った」とし、両ブランド共通のキャッチフレーズ「Biz Printer is - あらゆるビジネスに、キヤノンの解答」で展開していくことを紹介した。
家庭向け、ビジネス向けの双方でシェア1位を狙い、プリンティング市場全体でも国内ナンバーワンの地位を確立していくことに意欲を見せた。
続いて登壇したキヤノン株式会社取締役 インクジェット事業本部長の大塚尚次氏が、新製品の概要を紹介した。
PIXUSシリーズは2013年にPIXUSクラウドリンクとPIXUSリンクを発表し、ユーザー数が順調に推移。写真印刷だけでなく、クラウドやスマートフォンと連携しても使いやすいプリンタというイメージが浸透してきているとした。しかし、プリンタに対するニーズはさらに多様化しており、それらのニーズを汲み取った上で「より手軽に簡単に」をコンセプトに進化させたという。
「MAXIFY」については、ビジネスシーンにおいてインクジェットの利用動向を調べた結果、印刷品質への満足度は高いが、印刷速度やランニングコストに不満が残ること。そして、やはり文字のみを印刷するユーザーが多いことから黒文字の印刷品質が最重要と判断。大塚氏は「スピード、画質、ランニングコストという3大ニーズに応えるべく開発した製品」という言葉でMAXIFYのコンセプトをまとめた。
印刷速度については、印刷開始前に必要となる動作を並行処理することでファーストプリントタイムを約7秒に短縮。連続印刷については、余白部分を利用して次の用紙を重ねて搬送させる「重ね連送」の採用で、最大でモノクロ約23ipm、カラー約15ipmを達成した。さらに、最上位のMB5330で、新型のCISセンサーを2つ搭載することで両面同時スキャンに対応している。
また、最大500枚給紙/ADF50枚搭載や、大容量インクに対応させることで運用時の手間を軽減。さらにランニングコストも、ビジネス用途にも提案してきた従来のインクジェット複合機「MX923」からモノクロで28%、カラーで25%低減させた。
さらに、文字をくっきり見せ、耐擦過性、耐マーカー性、耐水性にも優れる、新開発の高濃度ポリマーインクを採用したほか、2004年に発表した高密度印刷技術「FINE」を軸にしたプリントヘッドも新たに開発している。
このほか、クラウド連携機能の「MAXIFYクラウドリンク」や、スケジュールを設定しての省電力機能なども搭載する。
「ブサかわ猫」のフォトコンテストも開催
最後に、マーケティング戦略について、キヤノンマーケティングジャパン株式会社 取締役 常務執行役員 イメージングシステムカンパニープレジデントの八木耕一氏が説明。
同氏の説明の中では、「市場活性化への新たな取り組み」として、同日発表されたPIXUSの女性向けモデル「PIXUS Atelier」について紹介。八木氏は「家庭用プリントにはクラウドやスマートデバイスというチャンスもある一方で、成熟感があった。そこで着目したのが女性」であると、本製品発売の背景を紹介した。
女性に着目したのは、子供を中心としたコミュニティや行事などがあることや、身の回りのものを手作りしたい、自己表現したい、といったニーズがあることが理由。Atelierでは、女性向けにオリジナルカラーの「エクリュベージュ」を採用したほか、パッケージもオリジナルデザインのものを利用。Atelier向けのスマートフォンアプリ「PIXUS Atelier PRINT」やプリントレシピサイト「Atelier GALLERY」などを提供していく。
販売戦略については、スマートフォン/タブレットからの印刷を市場に浸透させるべく、「スマフォトプリント」のキャッチコピーで製品訴求を行なっていく。
CMキャラクターは従来から引き続き女優の桐谷美玲さんが務めるが、加えて、ドラマ「半沢直樹」や「ルーズヴェルト・ゲーム」で強い存在感を示した俳優の石丸幹二さんも上司役で共演。新TV CMは、写真を撮ってしまうほど猫が好きな桐谷さんに、スマートフォンで撮影した大量の猫の写真を見せつけてられて石丸さんがたじろいでしまう、といった内容のもの。このTV CMに絡めて、ブサイクだけど愛らしい愛猫の写真を募集する「ブサかわ猫ちゃんグランプリ」も開催する。
CMに出演した桐谷さんと石丸さん、さらに同じくCMに登場している猫の「レオン」くんも来場。スマートフォンを用いてレオンくんを撮影し、PIXUSタッチを使って印刷するデモなどを披露した。