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Microsoftの戦略転換に伴い、研究開発体制も変化

加治佐俊一氏
1月27日 実施

 日本マイクロソフト株式会社は27日、「2014 Technology Update」と題した記者説明会を開催。同社業務執行役員 最高技術責任者兼マイクロソフトディベロップメント株式会社代表取締役社長の加治佐俊一氏が、Microsoftの現在の研究開発体制や、Microsoft Researchでの研究成果を発表した。

 Microsoftの研究開発に関する説明会は、過去3年間このタイミングで実施されており、今回で4年目となる。基本的に、Microsoftの研究機関であるMicrosoft Research(以下、MSR)での取り組みの紹介が主な内容となるが、2012年にMicrosoftが「デバイス&サービスカンパニー」への戦略転換を打ち出したことで、MSRでの研究や、Microsoftでの開発体制も大きく変化しているという。

 ちなみに、同社の言う「デバイス&サービスカンパニー」と言うのは、「全世界の人々に対して、家庭でも職場でも外出先でも、自分にとって最も大事な活動を実現する一連のデバイスとサービスを個人・法人に提供する」ということを意味する。

 もう1つ同社にとって大きな変革が、組織の改編。2013年7月付けで同社は、製品ごとに分けていた組織を、機能面で分割した。これにより、それまで9つに分かれていた同社の開発体制は、「Operating Systems」、「Application and Services」、「Cloud and Enterprise」、「Devices and Studio」、「Business Solutions」へと再編された。機能面で部門は分かれているが、横の連携を重視しているのも新戦略の特徴で、「One Microsoft」体制の打ち立てを標榜する。

 すでに、この変更による影響は、開発にも現われている。分かりやすいものとしては、OSなどのプラットフォーム開発サイクルを3年から1年程度へと短縮した「ラピッドリリース」がある。Windows 8から8.1へのアップデートはその1例。

 また、アプリやクラウドサービスについては、小規模な機能開発を常時行ない、場合によっては日単位のサイクルで、開発から適用までを行なっている。ストア版「One Note」でのOCRや遠近補正機能付きの写真撮影機能がその1例だが、実はこの機能は東京のチームが、米レドモンド本社やMSRと連携して開発した。変更適用についても、例えばExchange ServerよりExchange Onlineから先に行なうというように、クラウドサービスの優先度を上げているのも、変更の1つだ。

現在のMicrosoftでの研究開発部門の位置付け
開発部門の構成。例えば今では、PCでもスマートフォンでもOSは1つの部門で開発する
開発モデルの変革

 MSRでの研究成果としては、進化した「Talking Head」、3Dプリントにおける最適化や、新型Kinectを用いたデモなどが紹介された。

 Talking Headは、感情表現パラメーターなどを用い、リアルタイムで表情生成と音声合成が可能なCGの顔で、2012年1月に披露された。その後改善を加え、現在では、音声認識や音声合成がより自然で高精度になったほか、スマートフォンとクラウドを活用した今風のスタイルへと変貌した。3D FACEアプリを使って、誰かの顔の周りを周りながら写真を撮影すると、データがクラウドにアップロード・処理され、その人の顔を使った、3D CGが出来上がるという具合だ。

【動画】2012年のTalking Head
【動画】最新版は、スマホの写真からクラウドを使ってモデリングできるように

 3Dプリントについては、Windows 8.1でのネイティブサポートや、プリンタの低価格化などにより、一般ユーザーへの普及度も高まりつつあるが、色々と課題も残る。例えば、出力したものの頑丈さは、フィラメントの素材の変更で改善されてきたが、ソフトウェア面からも貢献ができるのではと開発されたのが最適化を行なうソフト。これを利用すると、普通ただの空洞となる中身を、立てた時、自立するようバランスを計算した上で、メッシュ化させることができる。

3Dプリントに対する最適化を行なうソフト
全体の重心を考慮に入れた最適化を行なうことで、1kgの重りを載せても自立し続けられる

 最後にXbox Oneで採用された新しいKinectセンサーがデモされた。これは、基本的な仕様はXbox版と同じで、1080pのRGBカメラ、アクティブ赤外線カメラ、ノイズ除去可能なマイクなどを搭載するが、コネクタが一般的なUSB 3.0になっているのが違う。まだ正式には発売されていないが、開発者向けに先行提供が開始されており、人気の高さから、追加の募集も行なっている。

 新型Kinectセンサーは、関節が25個まで、そして同時に6人まで認識可能になった点に加え、体の各部位の向き、手の向き、肉眼では見えないような暗い場所での深度、ユーザーの表情と(Xboxなどに対する)関心度の認識も可能になっている。実際のデモの様子は動画を参照頂きたい。

【動画】新型Kinectのデモ

(若杉 紀彦)