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GLOBALFOUNDRIES、他社との提携を強めたFoundry 2.0構想を推進
~2.5D/3D TSV技術を展開、20nmも2014年半ばに投入
(2013/12/5 15:47)
GLOBALFOUNDRIESは5日、都内で記者会見を開き、来日したVice President, Office of the CTOのSubramani Kengeri氏が、同社の最新動向などについて説明した。
周知の通り、GLOBALFOUNDRIESは元々AMDのCPUを製造していた製造部門が独立したファウンダリ専業会社。モバイル、ネットワーク、自動車、航空、コンシューマなど、今後拡大すると見込まれる半導体市場の潜在的なニーズに応え、収益を拡大するために、ファブレスでチップをデザインする企業の下請けへと転換した。
特に近年は、モバイルやネットワーク通信分野が拡大しており、そこに注力することで市場拡大が見込まれるが、半導体の進化は製造プロセスの進化によって支えられており、その開発にかかる費用は微細化に伴い増加傾向にある。一方で市場は、より低コストの実現に期待を寄せており、この矛盾が半導体業界が抱える問題となっている。
20nmクラス以降のプロセス技術では、電力あたりの性能が重視されるため、FDSOI、フィンFETなどの新構造などを盛り込む必要がある。そのためには露光技術の改良を行なわなければならない。また基板搭載面積の小型化や放熱処理の問題に対し2.5D/3DなどのTSV(シリコン上に穴を開け、ワイヤーを通すことで立体的にスタッキングしたダイを接続する)パッケージング技術も必要だ。またこれまで200mmウェハから300mmウェハに移行することで低コスト化を実現したように、450mmウェハへの移行も必要になるとしている。
このように20nm以降のプロセス製造のためには、莫大なコストがかかる。例えばGLOBALFOUNDRIES自体の工場設備投資には67億ドル、プロセス技術の開発は13億ドル、チップのデザインには1億5,000万ドルかかったとしている。
そこでGLOBALFOUNDRIESは「Foundry 2.0」という構想を立ち上げ、実行に移している。Foundry 2.0構想を簡単に言ってしまえば、パートナー各社との連携をより緊密に、そしてオープンにすることで、1つのデバイスを共同作業で製造することである。これまでファウンダリは単なるファブレス企業の下請けとして機能していたが、これからは顧客が他社の技術を活かした設計やテストなどをシームレスに展開できるようになるとしている。
その成果の1つとしてはARMと共同で実現したCortex-A12の実装で、28nmのSLPプロセスにおいて早期にPOP IPを実現。40LPプロセスのCortex-A9と比較して1.7倍の性能と、1.5~2倍の電力効率を実現したという。
また、CPUのようなロジックのみならず、電力管理などを行なう高電圧デバイス、無線通信を行なうRFやセンサーなどのアナログデバイス、低消費電力データを保持するNVM、高速性を実現するeDRAMも実装できるとした。
さらに顧客は、工場の製造過程における製造データを「Snapshot」という仕組みを通して利用でき、歩留まりの改善を実現できるという。この診断データは暗号化されており、データの機密性を実現したという。
3拠点で地理的リスクを分散、年間800万ウェハの出荷体制
GLOBALFOUNDRIESの現状については、2012年1月に米国ニューヨーク州マルタに新たに建設したファブによって、ドイツ・ドレスデンとシンガポールのファブと合わせて3つの工場となり、“真のグローバル”なファウンダリを実現。世界の人材雇用を喚起したとともに、天災などによる地理的なリスクも回避でき、さらにはパートナーと近いところで協業が行なえるとした。
経営陣には、本来顧客の立場であった人材を雇用し、「顧客の立場に立った視点でのサービスの提供」を実現したとしている。
ニューヨークのファブは28nm以降の最先端プロセスに注力。現在のウェハ製造能力は6万枚/月となっている。一方ドレスデンのファブは45nm~28nmで製造能力は8万枚/月、将来的には10万枚/月まで引き上げる。シンガポールのファブは180nm~40nmで製造能力は300mmウェハが5万枚/月、200mmウェハが18万枚/月となっており、300mmウェハに関して今後は8万枚/月以上まで引き上げるとし、200mmウェハ換算で年間800万枚製造できるとアピールした。
Foundry 2.0構想によるメリットや結果も出てきており、Infineonのマイコン向け40nm製造プロセス技術によるeFlashの共同開発や、PeregrineのRF SOIの共同開発が既に成果を上げた。また、GLOBALFOUNDRIESは前年比31%と半導体企業の中で最も成長率が高く、ピュアファウンダリとしても第2位のシェアを獲得した。
今後はプロセス開発のみならず、アナログ/RF/TSV技術にも注力
今後のロードマップとしては、20nm/14nmを2014年以降に投入するほか、10nm/7nmなどの素材などについても研究開発を進めており、プロセスの微細化を進めていくとした。
また、電力管理ソリューションやMEMS、eNVMなどのアナログソリューションを同一ダイに形成する技術、またRFモジュールを一体化する技術などの研究開発も進めているとし、設計や製造のサポート、2.5D/3D TSVによる統合なども実現するとした。
パッケージング技術としてはTSVに注力し、現在インターポーザを介した2.5DによるTSV技術の評価が完了し、利用できる状態にあるとした。ロジックとメモリをTSVで接続した製品のみならず、ARMコア採用のロジック同士を接続した試作品も完成したという。シリコン上に直接スタッキングする3D TSVについても開発が済んでおり、2014年第3四半期より利用可能になるとした。