【COMPUTEX 2012】
GLOBALFOUNDRIES、プロセスロードマップなどの説明会を開催

GLOBALFOUNDRIES CTOオフィス 先端技術アーキテクチャ担当主席 スブラマニ・ケンゲリ氏

会期:6月5日~6月9日(現地時間)

会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 GLOBALFOUNDRIESは、COMPUTEX TAIPEIが開催されている会場近くで記者説明会を開催し、半導体メーカーなどに提供している製造技術やサービスなどに関する説明を行なった。

 GLOBALFOUNDRIESは、元々AMDのプロセッサを製造する部門が独立して設立された企業で、現在はAMDとの資本関係はなく、アブダビの投資会社の子会社として完全に独立したファウンダリとして運営されている。元々AMDの製造部門としてスタートした事もあり、AMDのプロセッサ(AMD AシリーズAPUおよびOpteronなど)の製造を請け負っているが、AMD以外の半導体製造も請け負っている。

 現在半導体業界は、垂直統合から水辺分業へと転換しているまっただ中で、製造技術や製造施設を提供できるファウンダリの重要性は以前にも増して高まっている。

●UMCを抜いて2番手に躍り出たGLOBALFOUNDRIES

 GLOBALFOUNDRIES CTOオフィス 先端技術アーキテクチャ担当主席 スブラマニ・ケンゲリ氏は「ファウンダリビジネスは、通常の半導体ビジネスに+5%で成長が予想されている」と指摘。半導体ビジネス自体の成長を超える勢いで成長する見通しで、半導体ビジネスが急速にファウンダリを利用する方向に変貌を遂げつつあるとした。

 TSMCのようなファウンダリサービスを製造する企業が現れるまで、半導体メーカーは、すべてを自社で製造、設計していた。例えば、CPUを例に取れば、命令セットアーキテクチャ、マイクロアーキテクチャ、製造プロセスルール、製造というすべての段階において、半導体メーカーが準備し、自社で解決するビジネスモデルをとっていた。

 しかし、1980年代頃から、徐々にファウンダリサービスを提供する企業が現れ、ファブレスベンダーと呼ばれる工場を持たない半導体ベンダーからの生産請負が始まり、現在では半導体を一貫して設計、製造するベンダーはIntelやDRAMベンダーなどの数少ない例外を除けば、ほとんどがファウンダリサービスを利用するようになっている。

 ケンゲリ氏は「このトレンドを引っ張っているのは特にモバイルアプリケーションだ」と述べ、スマートフォンやタブレットなど向けのプロセッサが急成長を遂げており、今後半導体業界のフォーカスは低消費電力、ローコストでかつ高性能という方向に向かっていくだろうと指摘した。ファウンダリに委託される半導体も、従来のようにやや世代の古い製造プロセスルールではなく、65nm以降の比較的新しい世代のプロセスルールの受託が急速に増えており、これからは最先端の技術に積極的に投資していく必要があるという認識を明らかにした。

半導体産業全体の成長予測、年率5%の成長が予想されているそれに対してファウンダリビジネスの成長は年率10%が予想されている半導体の成長を支える鍵はモバイルアプリケーションだという

 そうした業界の変化を受けて、GLOBALFOUNDRIESのビジネスも急速に成長しているという。ケンゲリ氏は「我々は昨年(2011年)の第4四半期にUMCを抜いて業界で2位になった。これは、UMCが比較的古いプロセスルールが中心なのに対して、GLOBALFOUNDRIESは65nmや45nm以下のような最先端のプロセスルールの導入が進んでいるからだ」とアピールした。

 ケンゲリ氏によれば、GLOBALFOUNDRIESの売り上げの80%は65nmより微細化されたプロセスルールが占めており、比較的古い世代の需要が大きいUMCに比べると、売り上げが伸びている現状だという。

GLOBALFOUNDRIESの売り上げの多くは65nm以下の世代からGLOBALFOUNDRIESは2012年第4四半期にUMCを抜いて2位になった

●2013年にはFab 8本格稼働、300mmウェハ月産20万枚体制

 そうしたGLOBALFOUNDRIESの好調さを支えるのが、同社が進める世界に分散しておかれている製造拠点だ。

 GLOBALFOUNDRIESの製造拠点は、300mmウェハを利用して製造する拠点に限ったとしても、元はAMDのFab30(別記事参照)およびFab36(別記事参照)だったドイツ ザクセン州ドレスデンにあるFab 1、シンガポールにあるFab 7、アメリカ ニューヨーク州マルタにあるFab 8の3つがある。

【表1】GLOBALFOUNDRIES各製造拠点の生産能力など(GLOBALFOUNDRIESの資料より筆者作成)
 Fab 1Fab 7Fab 8
場所ドイツザクセン州ドレスデンシンガポールアメリカ ニューヨーク州 マルタ
対応プロセスルール45nm以下130nm~40nm32/28nm以下
生産中のプロセスルール45/32/28nm130nm~40nm28nm
月産ウェハ量8万枚5万枚6万枚

 ケンゲリ氏によれば、アメリカのニューヨーク州に建設されたFab 8は、28nmプロセスルールでの生産が始まっており、現在20nmプロセスルールもテスト生産中で、まもなく製品レベルの生産も始まっていくという。Fab 8での生産に関しては今年度中は少ない生産量に留まるが、2013年にはフル生産に近い量が生産可能になり、単純計算でも月産20万枚近くまで300mmウェハの生産能力になると説明した。

GLOBALFOUNDRIESの各製造拠点この図では2013年の生産キャパシティは月産18万枚だが、すべて順調にいけば20万枚に近くなるという

●32/28nm HKMGを他のファウンダリ先駆けて本格的に立ち上げる

 このように他社に先駆けて最先端のプロセスルールを導入することで、ファウンダリビジネスの2番手に躍り出たGLOBALFOUNDRIESだが、今後もそうした好調さを維持していくために、最先端技術の積極的な導入に力を入れていくという。

 ケンゲリ氏は「すでに我々は32/28nm世代で、HKMG(High-K Metal Gate)を導入した。HKMGは省電力などの点で大きな効果があるが、高い歩留まりを実現するのは難しい技術だ。実際、他のファウンダリも導入にチャレンジしているところもあるが、その歩留まりは低いレベルに留まっている」と、同社の32/28nmプロセスルールのアドバンテージをあげた。

 ケンゲリ氏によれば、GLOBALFOUNDRIESはHKMGの導入に成功し歩留まりも急速に上がってきており、現在までに25万枚のウェハの出荷を終えているという。実際、AMDがAMD AシリーズAPUとして販売しているLlanoとTrinityもこのHKMG対応32nmプロセスルールで製造されており、2011年の第4四半期(10~12月期)には歩留まりが倍になり、AMDが求める量を完全に出荷できているのだという。

HKMGの導入では他社よりも早く歩留まりを向上させることができるようになっているAMDのLlanoやTrinityの製造に利用されているGLOBALFOUNDRIESの32nmプロセスルールにもHKMGが採用されている

●HKMG対応28nmプロセスルールでARM Cortex Aシリーズの最適化に対応

 ケンゲリ氏によると、GLOBALFOUNDRIESがハーフノードの28nmでもHKMGが導入されているが、すでに32nmプロセスルールでHKMGが導入済みであり、技術としても熟成され歩留まりなどには問題が無いと説明した。

 GLOBALFOUNDRIESは、ARMと協業することを2011年12月に発表しているが、すでにARM Cortex-A9のデザインを採用したSoCが同社の28nmプロセスルールに最適化され、最高で2.5GHzで動作するチップが製造可能な状態にあるという。また、同社が現在量産に向けて開発している20nmプロセスルールのテストチップもテープアウト(設計データを製造工程に送付した状態のこと)しているとのことだった。

 なお、ケンゲリ氏によれば、同社の28nm世代では、HPP(PCのCPUやGPUなど性能重視の向け)、LPH(低消費電力で高性能なプロセッサ向け、スマートフォン向けSoCなどに対応)、SLP(低消費電力、ローコスト向け、通信チップなど向け)という3種類を用意しており、それぞれの顧客が目的に応じて選択できるという。

 この3つは、次の20nm世代(20nm以下の世代ではハーフノードへの移行にのみになるという)でも同じになるとのことだった。ケンゲリ氏は「GLOBALFOUNDRIESの20nmプロセスルールでは他社の20nmに比べてコストあたりの性能も、消費電力も上回っている」と述べ、他社の20nmよりアドバンテージがあるはずだとアピールした。

28nmプロセスルールでもHKMGに対応する28nmプロセスルールではARMのCortex-A9への最適化がすでに済んでいる
28nmプロセスルールではHPP、LPH、SLPの3種類が用意されるGLOBALFOUNDRIESが示した28nm、20nm、競合他社の20nmとの性能比較

●14nmでFinFETを導入し、14nm以下の世代でEUV導入の準備を進める
14nm以下の世代で導入が予定されているFinFET、EUV、450mmウェハ、ダイスタッキングなどの新技術

 ケンゲリ氏は20nmより先の世代で導入される技術についても説明した。現在、次世代の技術として開発しているのは、FinFET、EUV(極端紫外線)露光、450mmウェハ、ダイスタッキングなどの技術だという。

 このうち、FinFETは、Intelが22nmプロセスルールで導入したトライゲートトランジスタ(別記事参照)に似た技術で、ゲートにフィンを持たせることでチャネル長を狭めることが可能になり、トランジスタの集積度を上げられ、消費電力を削減できるなどのメリットがある。ケンゲリ氏によれば、FinFETを14nm世代以降で導入するという。なお、FinFETの開発に関しては、IBM、Samsung Electronicsなどと協力しており、低コストで低消費電力な半導体を製造することが容易になると説明した。

 EUV露光によるマスク作成に関しても14nm~10nm世代での導入が検討されているが、どの世代で導入するかは「必要に応じて」(ケンゲリ氏)とのことで、必ずしも14nmや10nmで導入するというわけではないようだ。現行の光学でのマスク作成で可能であれば、14nmや10nmでもそれを流用するということになるという見通しを明らかにした。

(2012年 6月 8日)

[Reported by 笠原 一輝]