ブラザー、「ジャスティオ」シリーズの新製品発表会を開催
~同社初となるドキュメントスキャナ4製品を投入

7月4日 開催



ブラザー販売株式会社代表取締役社長片山俊介氏

 ブラザーは4日、同社初のドキュメントスキャナ、およびビジネス向けプリンタ/複合機「ジャスティオ」の新製品発表会を開催。同社の取り組みと中長期の目標の説明、および新製品の特徴についての発表を行なった。

 発表会ではまず、ブラザー販売株式会社代表取締役社長の片山俊介氏が登壇。東日本大震災を受けての2011年の同社の支援活動の概要を報告した後、同社の中長期の事業戦略を説明。2015年までに売上を現在の1.5倍である7,500億円、営業利益580億円という目標を示した。

 その具体的な施策として、設備投資や研究開発投資、M&Aはもちろんのこと、シースルー型ヘッドマウントディスプレイや、この日発表のドキュメントスキャナといった新規事業への取り組み、さらにハードウェアと外部サービスを効果的に連携させるポータルサイト「Brother Online」などを紹介。「不透明な経営環境が続いているが、ブラザーらしい価値を提供できるよう努めて行きたい」と意欲を語った。

東日本大震災の復興へのブラザーグループの取り組みとして、支援活動の例を紹介マイルストーンとなる2015年に現在の1.5倍となる売上高7,500億円を目指す中期戦略「CS B2015」
具体的施策の1つ、新規事業への取り組み。6月に発売を開始したヘッドマウントディスプレイ、この日発表のドキュメントスキャナなどを紹介同社製品と連携するポータルサイト「Brother Online」の紹介。サイト自体はすでに発表されている

●ドキュメントスキャナ4製品を投入、最上位機種はPCレスで使用可能

 続いてブラザー販売株式会社取締役の三島勉氏が登壇し、新製品の説明を行なった。製品の詳細な仕様については関連記事で紹介しているため、本稿ではドキュメントスキャナ市場参入の理由、および同社製品の強みなどについての発表を中心に紹介する。

 この日発表されたのは、同社では初となるドキュメントスキャナで、ビジネス向けプリンタ/複合機のブランドである「ジャスティオ」シリーズの新製品として、卓上用途からモバイル用途まで計4機種が発表された。

 これらを投入するに至った背景について、三島氏は「スキャナ機能の強みを活かすため、複合機の1機能というだけではなく、ドキュメントスキャナ自体の事業参入の検討を進めてきた」と説明。2007年に誕生し、いまや多彩なラインナップを展開するジャスティオブランドの複合機に備わる「スキャン to Eメール送信」、「スキャン to FTP」など各種機能のノウハウを活用することが1つの目的と語った。

 ラインナップは、卓上タイプ2製品、モバイルタイプ2製品の計4製品。いずれもビジネスユースおよび個人ユースの両方を想定しており、卓上タイプでは大量の資料のすばやい電子化や効率的な共有、FAXの通信費や印刷費の節約、さらに個人ユースでは「断捨離」といったキーワードを挙げたほか、学校資料やレシピのデータ化やグループ内での共有を利用目的として挙げている。

ブラザー販売株式会社取締役の三島勉氏ブラザーグループの事業ドメイン。5つに分かれており、その中でもプリンタやラベルライターを扱うプリンティングのソリューションズ事業が売上の約7割を占めるオフィス向けのジャスティオ、家庭向けのマイミーオの2つのブランド。今回の新製品は家庭向けの側面も持つが、ジャスティオブランドでの投入となる
同社のドキュメントスキャナの市場分析。2010年は2009年に対して190%の伸びで、その後も堅調に推移すると予測この日参入が発表されたドキュメントスキャナ。全4製品をラインナップするビジネスユースと個人ユースの両方を想定する

 大きな特徴として、無線/有線の両方に対応した卓上タイプの上位モデル「ADS-2500W」が実現している「PCレス」をキーワードとして挙げる。これはFacebook、Evernote、Picasaなどのクラウドサービスに、写真や書類をスキャナから直接アップロードして共有できるというもので、PCレスで動作することが他社製品にない大きな特徴であるとする。

 またモバイル端末の連携機能として、専用アプリを導入したiOS/Android端末にスキャンしたデータをPCレスで直接取り込める「Brother iPrint&Scan」のほか、スキャナとAndroid端末をUSBケーブルで接続してスキャンデータを直接Android端末で閲覧できる「スキャン to Android」も搭載する。これらダイレクトクラウド、ダイレクトモバイルの機能について同氏は「既存のこのクラスのスキャナにはない、ブラザーのドキュメントスキャナの大きな特徴」と自信を見せた。

フラグシップモデル「ADS-2500W」のキーワードは「PCレス」PCを経由せず、スキャナから直接無線LANを経由してクラウドサービスにアップロードする機能を備えるスキャンデータを直接タブレットなどに送信する機能、USBケーブルでスキャンデータを直接Android端末に保存する機能などのモバイル連携機能を備える
通常のスキャナを利用した場合とのフローの違い。通常のスキャナではPCに保存してアップロードした後、PC上のファイルを削除する手間がかかるが、同社スキャナの利用時にはこの手間が不要になるとしている主に法人向けの機能として、FAXの代替となる「スキャン to Eメール送信」、FTPサーバに直接保存できる「スキャン to FTP」の紹介毎分24枚/48面の高速読み取りが可能。超音波センサーによる重送検知機構や、傾き補正、裏写り除去などの機能も搭載
最上位機種の「ADS-2500W」。PCレスでの利用を前提としている。このモデルのみ発売は10月タッチ操作に対応した液晶画面。PCレスで操作できるADFを閉じた状態。一部がスケルトンになっており液晶画面が見える
こちらは一般的な卓上モデルの「ADS-2000」。データをUSBケーブル経由でAndroid端末で閲覧できる「スキャン to Android」にも対応ハンディタイプの「MDS-700D」。小型ながら両面スキャンに対応する
同じくハンディタイプの「MDS-600」。クラス最軽量の315gを謳う年間目標販売台数は4機種合計で5万台としている。同社ではドキュメントスキャナの市場規模を25万台と見ており、シェアでいうと20%に相当する数字

●A4モノクロレーザープリンタ/複合機5機種もモデルチェンジ

 またこの日は、A4モノクロレーザープリンタおよび複合機の新製品5機種も同時に発表された。複合機の「MFC-8950DW」ではプリント速度が従来機種の30ppmから40ppmへと高速化したほか、用紙にトナーを瞬時に付着させる新定着技術の採用により、モノクロレーザープリンタの「HL-6180DW」ではスリープモードからの復帰時間が約20秒から約4秒へと大幅短縮、また待機時消費電力も約75Wから約4.6Wへと劇的に削減された。

 このほか自動両面プリント機能などの機能も搭載した今回の新ラインナップについて、同氏は「お客様が望む仕様を徹底的に強化した結果」と説明し、新カテゴリのドキュメントスキャナを加え、ジャスティオブランドをさらに充実させ、販路の拡大を図っていきたいとした。

A4モノクロレーザープリンタおよび複合機の市場規模。こちらも堅調に推移しているとする高耐久モデルとコンパクトモデルの2ラインナップのうち、この日は高耐久モデル5製品の新モデルを発表プリント速度が高速化。45枚のプリント時、従来モデルに比べて約24秒短縮されたとしている
トナーの新定着技術の採用で、スリープモードからの復帰時間、待機時消費電力が劇的に短縮された。このほか耐久枚数も20万枚から30万枚へと向上している年間目標販売台数は5機種合計で3万台としているモノクロレーザープリンタの「HL-5450DN」。有線LANを搭載する
同じくモノクロレーザープリンタの「HL-5440D」同じくモノクロレーザープリンタの「HL-6180DW」。5年無償保証がつくPROブランドの製品
モノクロレーザー複合機の「MFC-8520DN」。有線LANを搭載する同じくモノクロレーザー複合機の「MFC-8950DW」。5年無償保証がつくPROブランドの製品

(2012年 7月 5日)

[Reported by 山口 真弘]