日本マイクロソフト株式会社は、Windows PCの消費電力検証に関する記者説明会を開催。同社コマーシャルWindows本部業務執行役本部長の中川哲氏が、PCの具体的な節電対策やその効果を説明した。
中川哲氏 |
中川氏によると、Windows PCは節電に関する設定項目が多いこともあり、3月11日の東日本大震災以降、同社にはその効果的な方法について問い合わせが多く来た。それを受け同社は3月16日に、節電方法を説明するページを用意したところ、10日間で30万のアクセスがあったという。
しかし、そこで紹介されているWindowsの省電力設定は、本来ノートPCのバッテリ駆動時間を延ばすことを目的としたものであり、ACにつないだ状態に関しては、まだ節電する余地がある。そこで、同社はさまざまな利用状況における各種PCの電力消費を詳細に検証し、そのデータおよび効果的な節電対策をとりまとめ、公開した。
まず、その検証方法だが、2006年発売のWindows XP搭載、2008年発売のWindows Vista搭載、2010年発売のWindows 7搭載のデスクトップおよびノート、計6台を用意し、財団法人電力中央研究所に持ち込んで、電力測定を行なった。
PCはその当時売れていたものを選ぶことで、実際に各家庭/企業で利用されているのに近い環境にした。現地では交流安定化電源や、0.01W単位での測定が可能な電力計を用意し、詳細な測定を行なった。
ここから判明した傾向の1つは、新しいPCほどアイドル時の消費電力が少ないということ。検証に使ったPCは、どれもハードウェア構成が異なるが、ノートの比較では、XP:Vista:7の消費電力(アイドル時)が36W:31W:16Wと、総じて新しいハード、新しいOSは消費電力が少ないことが分かる。
もう1つ分かったのは、PCをシャットダウンするのとスリープにするのでは、どちらの方が節電効果が高いのかということ。これは、立ち上げてから終了するまでの時間によって、どちらを選んだ方が良いかが変わることが分かった。
PCは、システムの内容をメモリに保持するためスリープ時はもちろんのこと、シャットダウン時も最低限の待機電力を消費している。今回検証に使ったPCにおけるその差は、平均で0.5W、最も大きいWindows Vistaのデスクトップの場合でも1.5W程度と、意外と少ない。
一方で、シャットダウンからの起動と、スリープからの復帰における差は大きく、積算電力量は約3倍の開きがある。つまり、マメに電気を落とそうと、短時間でシャットダウン~起動を繰り返すと、返って消費電力量は増えてしまうことになる。
具体的には、起動(復帰)→アイドル→シャットダウン(スリープ)までの間隔が、おおむね1時間30分から1時間50分未満である場合、スリープを使った方が節電となる。
検証環境 | 実際に使ったハイエンド電力計。0.01W単位で計測できる | 利用したPCの構成 |
各PCでのアイドル時の消費電力。新しいほど低い | スリープは待機電力こそ若干高いが、スリープ移行/復帰時の消費電力は低い | 実際のアイドル時の待機電力の計測結果 |
起動/終了時の電力量の計測結果 | これから約1時間半以内だと、電源をオン/オフするより、スリープを使った方が節電になることが分かる | グラフにした場合 |
上記の結果は、PCを使わない時のものだが、PCを使っている時の節電対策は、ディスプレイの輝度を落とすことに尽きるという。今回の検証によると、ディスプレイの輝度を40%に落とすと、ディスプレイ単体で平均約38%、PC全体で平均約23%の節電になるという。
また、同社は企業内での利用方法を想定し、PCを起動し、IEでのブラウジングを30分行ない、10分離席した後、20分間IEを利用し、30分離席する(計90分)というパターンを用いて、PCの電源プランの変更が、どれほど効果あるかも確かめた。
Windows XPでは、「最小の電源管理」設定にすると、バッテリ使用時はこまめにHDDやディスプレイの電源が切断され、10分後にはスリープ(スタンバイ)へと移行するが、電源接続時はディスプレイの電源が切れる以外には、全く節電がされない状態となる。
この状態と、PCを省電力設定にし、ディスプレイの輝度を40%に落とした状態とでは、消費電力量に3割近い差がでる。
この結果をもとに同社は、東京電力管区内でどれほど消費電力が削減されるかも試算した。現在、日本全国には約7,230万台のPCがあると言われ、人口比から東京電力管区内には約2,455万台のPCがあることになり、その内約2,284万台がWindows XP以降を搭載したPCと推定される。
この全PCを先の利用シーンに当てはめて90分間動かした場合、節電設定による消費電力の削減は35万kWにおよぶことが分かった。
もちろんこの数字は、2,284万台の節電設定がされてないPCがすべて同時に起動した場合との差の最大値であり、この数字が実現することはないが、単純計算でその3分の1が3割の節電を行なったとしても10万kW近い電力が削減される計算になり、各個人/法人の地道な節電の積み重ねが大きな効果を呼ぶことが分かる。
今回の計測データはExcelデータとして、本日付けで公開されており、同社は企業などがPCの節電を行なう際の資料にして欲しいとしている。なお、説明会では言及されなかったが、このデータには本体を抜いたACアダプタだけの消費電力なども掲載されている。
また、PCの省電力設定の方法が分からない個人ユーザー向けに、「Windows PC自動節電プログラム」も公開したほか、節電に関する無償の電話サポート窓口も開設した。同プログラムを使うと、電源プランの設定が省電力なものに変更される。
同社では、今後もCO2排出削減の観点からも節電に関する取り組みを行なっていくとともに、今回のデータは米国へもフィードバックしていく。
(2011年 5月 10日)
[Reported by 若杉 紀彦]