GLOBALFOUNDRIES、2011年は28nmプロセスを立ち上げへ

ダグラス・グロースCEO

1月25日 開催



 半導体ファウンダリのGLOBALFOUNDRIESは1月25日、同社の戦略に関する記者会見を都内で開き、米国から来日した最高経営責任者(CEO)のダグラス・グロース(Douglas Grose)氏が2010年の総括と2011年の展望を紹介した。

●Chartered買収から1年、ウェハ処理能力を拡大へ注力

 同氏はまず、2010年を振り返り、「半導体プロセスの微細化により、素材面や露光技術、パッケージ技術における改善が必要になり、設計の複雑さが増大。これによりIDM(垂直統合型デバイスメーカー)のモデルはファブライト/ファブレス化の傾向が進んでいる。それによって我々のようなファウンダリ専業企業へのニーズが高まってきた」とした。

 2010年にGLOBALFOUNDRIESは、Chartered Semiconductor Manufacturingを買収。これにより従業員数は11,000名超となり、3カ国/12拠点にまたがる事業展開を可能にした。顧客はファブライト/ファブレス企業を中心に、IBMなども含む150社で、これらの顧客に向けて最先端の技術を提供し、提供までの期間短縮/付加価値の高い製品の提供に注力してきたとした。

2010年の半導体の技術動向Charteredを買収した新生GLOBALFOUNDRIES

 投資への取り組みとしては、ドイツのドレスデンにあるFab 1の処理能力の拡大に努めた。処理設備の追加と増強を行ない、約9,900平方mのクリーンルームを新設。2011年半ばにもウェハ処理能力を8万枚/月に増強する見込み。

 米国ニューヨーク州にもFab 8を建築中で、2013年より稼働開始の予定。操業開始時期の関係もあり、主に20/28nmプロセスルールの製造に注力し、6万枚/月のウェハ処理能力を達成したいとした。

 また、アブダビにおいても国際空港の隣接地を購入し、新たにテクノロジー・クラスタを創設する予定。IPソリューションに関する研究およびパートナーとの協力の拠点にしつつ、人材の育成や奨学金プログラムの提供など、積極的な投資を行なうとした。

ドイツ・ドレスデンのFab 1の拡張アメリカ・ニューヨークのFab 8への投資アブダビにおける展開

●28nmプロセスに注力

 技術面への取り組みとしては、主に28nmプロセスルールの開発に注力。Gate First(製造工程でゲートを先に生成する)技術により、40nmと比較して集積度が約2倍となり、最高で50%の高速化とスイッチあたりの電力の50%低減を実現した。技術としては引き続きHigh-Kとメタルゲートを採用する。28nmについては2011年第2四半期にもテストのテープアウトが可能とした。

 一方、32nmについては2011年中に量産を立ち上げられる。製品としてはAMDのLlano(ラノ)を挙げ、クアッドコアのx86 CPUとDirectX 11のGPUを統合したAPU製品となる。また、SamsungもHigh-Kメタルゲートとしては初のSoCとなる製品をリリースできるとした。

28nmの特徴32nmプロセスの製品は2011年度中にも出る予定

 直近で特に注力するプロセスルールは28nm。要因として市場のモバイルプラットフォームへのニーズを挙げ、「近年、3Gネットワークへの加入者が急増し、インターネットビデオの普及によりトラフィックが増加した。モバイル環境におけるインターネットビデオの実現のためには、低消費電力と高性能、長時間バッテリ駆動を実現しなければならないが、28nmプロセスで実現できると顧客は期待している」と語った。

 そして、IBM、Samsung、ST Microの3社とCommon Platform Allianceを組み、4社共同で2011年中に28nmプロセスに対応したファブを同期に立ち上げることを目標とする。これにより顧客は28nmプロセスにおける膨大かつ柔軟なキャパシティのメリットが得られるとした。

 また、今後大きく成長が見込まれるモバイル機器に関して、ARMとのパートナーシップを強め、業界初の28nmプロセスによるCortex-A9コアをテープアウト。消費電力を最大30%低減し、待機時のバッテリ寿命を2倍に伸ばした。また、マルチタスク性能やグラフィック性能を大幅に高めた。さらに、Cortex-A9をベースとしたSoCも開発中で、10MHz~2.5GHzで動作するデュアルコアマクロを実現するとした。

28nmプロセスへのニーズの高まり4社共同で28nmプロセスを立ち上げ
ARMとの協力による28nmプロセスのSoCプラットフォームの開発開発中のプラットフォームIP「Semper」

●2011年は投資を拡大、20nmや極端紫外線露光技術の開発へ

 2011年以降については、まず投資額を2010年の約2倍となる54億ドルに増やす。重点投資は200mmウェハを利用したMEMS製品(圧力センサーや加速度センサー、ジャイロスコープなど)のほか、前述したFab 1の生産能力の拡大、Fab 8の建設、そしてアブダビのテクノロジー・クラスタ計画となる。

 技術面では28nmの実用に向けた開発だけでなく、22/20nm技術に関する基礎研究に着手する。特に28nmからのフルノードリフレッシュとして用意する20nmは多くの顧客が必要とすると見込んでおり、注力していく。なお、28nmまではGate First技術が有効だが、20nmからはGate Last(製造工程で最後にゲートを生成する)が有効になるとし、High-Kメタルゲートと共に組み合わせていきたいとした。

2011年は2010年と比較して2倍の投資額へ28nmプロセスの実用に向けた取り組み20nmプロセスも開発し、Gate Last技術を採用する

 MEMSに関しては、現在の市場は主に150mmウェハでの製造がメインだが、200mmウェハで投入することで大量需要に応えていきたいとした。また、これによりMEMSの大規模ファブレス企業が出現するのではないかという期待を寄せた。

 パッケージング技術についても研究開発を進め、3Dスタッキング技術によりコストと性能の改善を図るとした。

 半導体を製造する上で重要となる露光技術については、微細化に伴いEUV(Extreme Ultraviolet:極端紫外線)露光技術の研究開発を進め、2012年後半にFab 8へ導入、2014~2015年の量産実用化を目指す。なお、導入に関しては試作フェーズを省略し、早期に採用していく意向を示した。

200mmウェハによるMEMSの立ち上げ3Dスタッキング技術による性能の工場
EUV露光技術の研究開発Fab 8へ先行導入し、一気に実用化を目指す

(2011年 1月 25日)

[Reported by 劉 尭]