「iLounge Pavilion」はCES内における企画展示エリアの1つで、CES 2010からスタートした比較的新しいエリアだ。そしてiLoungeの名称から想像できるように、Mac OSおよびiOSに関連するハードやソフト、そしてアクセサリ群を紹介するブースが集まっている。
「iLounge Pavilion」が企画された経緯については関連記事を参照してもらうのが一番だが、要はAppleが2009年を最後にMacworldへの出展を取りやめたために、2010年以降は出展者がIntrenational CESへと大量に鞍替えしている。米国のコミュニティサイトであるiLoungeの名称が付いているのは、ある程度の展示スペースをまとめて確保するすることで、出展者移籍の音頭を取ったのがこのiLoungeということだ。もちろんCESを主催するConsumer Electronics Association(CEA)も積極的な営業を展開したことは間違いない。
ラスベガスコンベンションセンターのノースホール側に位置する「iLounge Pavilion」の入場口。もちろんCESの参加者であれば誰でも入場できる | フロア内にも企画展示としての「iLounge Pavilion」と他のエリアを分ける境界線が引かれている |
この試みは結果的に成功を収めたようで、初の企画展示だった2010年の終了後、すぐにCEAはCES 2011におけるiLounge Pavilion面積の倍増を発表している。実際、2011年のフロアマップを見ると倍増以上にフロア面積が拡がっていたうえに、初見となる出展社も増えた。iOS搭載端末数の絶対的な増加で、iPodやiPhone、そして2010年開催時には存在しなかったiPadなどに対応するアクセサリを中心としたアフターマーケットが着実に伸びていることがうかがえる。
もちろんMacやiOSに関連するプロダクトはこのエリア以外のCES展示会場全体や併催イベントなどでも数多く見ることができる。これはブースの出展契約を直接CEAと交わしているか、あるいはiLoungeが一括して契約したエリアの中でブーススペースを得ているのかが主な違いとなる。
入り口付近のラウンジでは、歴代のiPodやiOS搭載デバイスが展示されている | バイヤー向けのガイドCDや、出展者による販促品などもこのラウンジスペースで多数配布されている | 連日午後2時以降は大手出展者である(*)speckがスポンサーとなって、ここネバダの地ビールも振る舞われた |
規模の拡大はiOSやMacプラットフォームのユーザーにとって喜ばしいことだが、一方で懸念がないわけではない。Macworldでは主催者のIDGや、主たる出展者であったAppleの影響力である程度コントロールできていた部分におさえが効かなくなっている。
具体的な例としては、今回このエリアで『iPod 2』(もちろん、そんな製品は現時点で存在しない)対応をうたうクリアケースやスタンドを展示しているブースを複数見かけた。さらには『iPhone 5』(これまた現時点で存在しない)の文字を見るに至っては、口あんぐりというほかはない。未発表製品に対する真偽はこの場で語らないにせよ、クオリティの低いコピー品のようなものを展示するブースが存在することなども含めて、他の優良な出展者側からしてみれば、少なくともこのiLounge Pavilionのエリア内ではある程度の規制を求める声が複数の出展者から聞こえてきたのもまた事実である。
前置きがやや長くなったが、早速このiLounge Pavilionエリアで見かけた注目すべき製品やサービスを紹介していこう。なお、他の展示ホールやCES Unveiled、併催イベントのDigital Experience、Show Stoppersなどで出展されていたiOS、Mac関連製品にについては、別途紹介する記事を掲載するが、例えばユニバーサルリモコンといったように同系統にカテゴライズできるような場合は、比較が容易なように別エリアからの出展者による情報が含まれている場合もある。
●iPad用外付けHDDを展示した「HyperMac」昨年(2010年)に続いてMacそしてiOSデバイス用の外部パッテリパックを展示したHyperMacだが、従来製品と微妙に異なる点は、Apple側の意向で電源供給ケーブルにMagSafeコネテタが使えなくなっている。前回まではかなりグレイな話で、Apple純正のMagSafe対応充電器のケーブルを切断して流用していた。これを今度はAirLineにおける電撃供給アダプタに切り替えることで対策をした格好。12VのコネクタからMagSafeへのケーブルはAppleから純正品が出ているので、それを利用してHyperMacを外部バッテリにすることになる。
また新たにiPad向けのプロダクトも出展。1つはプロトタイプとしてのiPad用の外部HDDストレージ「HyperDrive iPad HardWare」。最大750GBの映像や音楽をストレージしておける。HyperDirve側のインターフェースはUSB-miniUSBで、Apple純正のCamera Connection Kitを使って接続する。上記と同じように、接続の中間にApple純正品を利用することを前提として、グレーな部分を回避する狙いがある。
もう1つ「HyperJuice Stand」という新製品もアナウンスされた。これは仕組みとしては単純な物で、iPad用のスタンドに11,000mAhのバッテリを内蔵した製品、充電はminiUSBケーブルで行なう。iPadを設置する角度も2段階から選択可能。
●バッテリチャージャ
iOS搭載製品に置けるアフターマーケットは、アメリカが車社会であることを実感させるもので、カーチャージャー、そして保護ケースとその保護ケースに付属するエクストラバッテリ、さらにBulutoothヘッドセットである。数年前から存在するiPhone向けのソーラーチャージャ兼エクストラバッテリには、Sumart CanadaからiPad向けの大型製品も登場。ソーラーパネル部分はスタンドも兼ねている。
ソーラーパネル部分を引き出して、iPadを置いたときのスタンドとして活用できる。バーチカルモードでもホリゾンタルモードでも利用が可能 | クルマの後部座席に乗せた子供向けにiPadによるエンターテインメントを提供させる仕組み。長時間ドライブでも飽きさせない工夫。GripDaddyの製品 |
●iPhone/iPadをリモコンに
昨年は1~2社程度だったが、2011年になって増加しているのが、iPod touch/iPhone/iPadをユニバーサルリモコン化する製品だ。会場内を歩き回ったところ総数10種類前後といったところ。接続方法には2種類あって、1つはケースと一体型にすることで、iOSデバイスとは30pinコネクタで接続する方法。この場合、iOSデバイスのケースやコネクタそのものにiRの送信機能が付く場合が多い。
一方、新興勢力と言えるのは、iOSデバイスとiR送出機能付きのデバイスをBluetoothで接続する方法だ。この場合リモコンとなるiOSデバイスを操作対象物に向けることなく、リビングであれば、リビング内のすべてのiRリモコン対象機器をコントロール可能になる。
残念ながらユニバーサルリモコンとは言え、学習機能までもっている製品は少なく、大抵は製品カテゴリ(TVやBlu-ray Discプレイヤー、ホームシアターなど)を選択した上でメーカーを選ぶスタイル。多くの企業ではメーカー製品であれば90%程度はカバーしていると紹介している。ただし主に米国市場向けであることから、日本向けモデルにどれだけの対応が行なわれているかは、実際に使ってみないとわからないと言ったところ。
おおかまかにケースタイプのものは60~70ドルの価格帯。iR送出ユニットを個別に持つ製品はやや付加価値がついて80ドルから100ドルといったところ。いずれもハードウェアを店頭やAmazonをはじめとする通販から購入した上で、iOS AppをiTune Storeからダウンロードしてインストールする仕組み。ソフト自体はすべて無料で提供される。いずれもコントロール対象となる新製品の登場とともにソフト側で対応するとはコメントしてはいるものの、購入にあたっては末永くサポートしてくれそうなメーカー製を選ぶのがいいだろう。
こうした一部ユニバーサルリモコンがBuletoothによりiOSデバイスと連携を図っていることから想像できるように、実は今回のCESにおいてはiOSそしてAndroidをコントローラユニットとするBluetoothデバイスが増えている。iLounge Pavilion編で触れるのも微妙な話だが、背景にはやはりAndroidの台頭がある。
実際こうしたBluetooshデバイスを活用する場合、何らかのハードウェア開発が欠かせない(いわゆる製品製造過程と、多かれ少なかれ製品在庫が発生する)。一方でiOSデバイスにインストールしなければならないソフトウェアの配信はiOSのApp Storeに一元管理されている。もちろんガイドラインを守って制作されたソフトがそうそうAppleによる審査を通過しないということはあり得ない話だが、リスクが存在することは事実。そこにAndroidというセカンドオピニオンが用意されたことで製品のリスクヘッジがとれるうえ、インストールベースの増加が期待できるようになったことが背景ともいえる。
●ひねりのあるBlutoothネタ●山のようにあるケース類
デコやアーティスティックな方向性でブランドの確立を目指す出展者の例。 |
iLounge Pavilionを散策していると、これでもかと言わんばかりに出展の山を築いているのがiPhoneとiPadのケース類。iPhone/iPadは単独モデルとして圧倒的な数が出荷されているのは間違いないが、果たしてこれだけ圧倒される物量のケースをユーザーが消化できているのか、かえって心配になるほどだ。
また、全般的な傾向としては、いずれの出展者もブランドの確立に躍起になっているということが感じられる。デコを中心にしたり、有名デザイナーやアーティストを起用して唯一無二のアクセサリを制作したりと、そういう付加価値からブランドを起ち上げようと、いわば大きなチャレンジを行なっている段階だ。
一方で老舗ともいえるケースメーカーは、その品質やいままで築いてきた実績で着実にシェアを伸ばしている印象。日本からもTrinityやTUNEWAREなどが出展している
日本から出展しているTrinity。「Simplism」のブランドで国内製品として安心して購入できる定番ブランドの1つである。今年で2年連続の出展となるが、社長の星川氏自ら接客におもむき、商品説明を行なっていた。日本から来ているスタッフ数も、展示規模を考えるとかなり多め。世界市場進出に向けた意欲がうかがえる。現在は世界15カ国に製品を展開中とのこと。 |
●ちょっと変わったイヤフォン
こう言ってはなんだが、iPhoneやiPodに標準で付いてくるステレオイヤフォンの音質にはがっかりさせられる。本当に音楽好きであれば動作確認程度にとどめ、お気に入りのイヤフォンを選ぶことを薦めたい。もちろん製品はピンからキリで、極めはじめるとキリがなくShureやUltimate Earなど数万円単位の高級ブランドもいいが、お財布と相談しつつもやはりある程度納得できるのは1万円前後の価格帯だろう。
もちろんここCESでもラスベガスコンベンションセンターの各ホールで無数のイヤフォンメーカーが展示、試聴を行なっている。音質などについては専門誌に譲るとして、ここiLounge Pavilionからはちょっとユニークなイヤフォン製品を2つ紹介する。
●バラエティに富んだ出展物
そのほかiLounge Pavilion内で印象に残った出展物は写真を中心に紹介する。
(2011年 1月 11日)
[Reported by 矢作 晃]