エプソン、新カラリオでシェア51%を目指す
~使いやすさを売りに複合機の買い換えを促進

左から、羽片、奥村、平野の各氏

9月2日 開催



 セイコーエプソンは、インクジェットプリンタ「カラリオ」シリーズの発表会を都内で開催した。

 セイコーエプソンの羽片忠明取締役は、「1995年にカラリオを発売して以来、今年で15年目を迎えた。今年度中には3,500万台の累計出荷に達する見込みであり、これらももっとお客様との生活密着度を高めて、『暮らしの中で、無くてはならない存在へ』という取り組みを加速したい。今年のカラリオの新製品ではユーザーの声を反映した改善に取り組んだ。とくに、もっと簡単な操作にしてほしい、無線LANの設定を簡単にしてほしい、パソコンを使わないでアルバムを印刷したい、インテリアに合う色のプリンタが欲しいといった観点から要望に応えた」と語った。

カラリオの累計販売台数とトピック暮らしの中で、無くてはならない存在」を目指す今年の改善ポイント

 また、セイコーエプソンの業務執行役員情報画像事業本部長 奥村資紀氏は、「今年は簡単、快適を進化させ『プリンタ選びで、もう迷わない』をキーワードにした」と語る。

 「複合機では、使いやすさと置き場所で迷わない。コンパクトプリンタは年賀状作りで迷わない、顔料モデルはビジネス用途で迷わないと訴える。逆に唯一、迷っていただけるように主力機種のEP-803Aには、ホワイトモデルを投入した。従来のブラックモデルと合わせて、どちらにするか迷っていただける」とした。

 エプソン販売代表取締役社長の平野精一氏は、「インクジェットプリンタの市場は回復しており、2010年度は5,000万台を越える。カテゴリ別の目標シェアは、複合機が50%以上、コンパクトプリンタが60%以上、単機能プリンタが50%以上を目指す。インクジェットプリンタ全体では、51%上のシェアを目標としている」と述べた。

今回投入される8モデルの全容直販価格が公開された。顔料単機能のPX-203のみ発売日が遅い既存機種を含めた全ラインナップ
PCとデジカメが回復傾向なので、プリンタも引っ張られるインクジェットプリンタの市場予想。今年は対前年で105%になる。2008年も上回り、年間500万台を越える見込み全体で51%のシェアが目標。コンパクトプリンタで大きな伸びを見込んでいる
「プリンタ選びで、もう迷わない」がキーワードジャンル別の訴求ポイント。顔料系は明確にビジネス用途と位置づけられているすでに複合機から複合機への買い換えが中心になってきている
買い換えを訴えるのは、使いやすさと置き場所がポイント置き場所の自由度を高める無線LAN搭載機が、出荷量の7割を占める5年前の機種と比べると、これだけ進化している。体積はほぼ1/3になっている

 以下、プレゼンテーションと展示の内容をまとめて、ジャンルごとに紹介する。

●無線LAN機能の強化が目立つ染料系複合機

 EP-903/803/703の各機種は、点灯するLEDが操作を指示してくれる「カンタンLEDナビ機能」が最大の訴求点だ。以前からチルト可能な前面操作パネルで、操作性の良さを訴求しているが、さらに改良が進んでいる。

 さらに、無線LANを搭載するEP-903/803では、無線LAN機能の強化が目立つ。IEEE 802.11n対応、PCとUSBで接続するだけで無線LAN設定を自動設定する独自の仕組み、外部ストレージのネットワーク共有(903のみ)などが盛り込まれている。

 ハードウェア面では、外観上の変更点は少ないが、内部での改良は進んでいる。質疑応答では、ヘッドの目詰まりの原因が紙粉であることの解明から、ヘッド素材を改良し、目詰まり防止動作を少なくしたという事例が紹介された。

EP-803Aのみ、ホワイトモデルが用意される。販売比率は50対50を見込むEP-803AWはツヤのあるホワイト用紙トレイもちゃんとホワイトになっている
オプションの両面印刷ユニットも、ちゃんとホワイトTransfarJetに対応しており、対応デジカメからデータを転送できるEP-903Aはオートシートフィーダ付
最上位機種なので多機能だUSBに接続したストレージをネットワーク共有できるのが売りUSBメモリなどにも対応する。スキャンデータをPDF化して共有するなどの使い方が提案されている
EP-703Aは、USB接続対応のみで、普及機の位置付ローカルで直接接続するのであれば、機能的には充分備わっている小容量のインクカートリッジが新たに用意される。単価が安いので、使用量が少ないユーザーに向く
スマートフォンでは、iPhoneに加え、Androidにも対応したiPhoneには、シンプルな無償ソフトと、高機能の有償ソフトが用意されるAndroid用は有償アプリとなる
会場に並べられたデモ機

●モノクロレーザーがライバルの顔料インク機

 顔料インクを使用する機種として、複合機の「PX-503A」と単能機の「PX-203」が発表された。

 プレゼンテーションでも、モノクロレーザープリンタとの比較がされるなど、低価格なSOHO/オフィス市場をにらんだ製品だ。

 ビジネス用途に使われているインクジェットプリンタは、全体の2割で約100万台という。それを50%程度伸ばしたいとしている。

 用紙がフロントローディングになり、両面印刷機能を備えているので、文字情報中心の個人宅でも魅力的な存在になりそうだ。

スモールオフィスに似合いそうなPX-503Aスリムだが250枚用紙が入るPX-203両面印刷に対応した新エンジンの紙経路
オフィスで使う場合、レーザープリンタとインクジェットプリンタのどっちを選ぶかという理由を聞いている。印刷速度や給紙容量、テキスト印刷の画質などがレーザーの利点と認識されているレーザーの長所に対抗するための要素を取り込んだ単機能のPX-203
無線LANと前面給紙、両面印刷がポイント複合機のPX-503Aスキャナーとメモリーカードスロットが加わる

●キーボード付きコンパクトプリンタ

 キーボード付きコンパクトプリンタは、昨年登場したが、あまりの売れ行きに品不足となり、TV CMも途中で打ち切られたという。それでも対前年で2倍になったという。今年は潤沢に供給し、3割増しを狙う。

 当初は、シニア層をターゲットにしていたが、実際には幅広い層に受け入れられたという。PCで年賀状を作るのは面倒くさいという層は、思っていたよりも多いようだ。

キーボード付きコンパクトプリンタの市場は、昨年1年で2倍に拡大した購入した理由は、「パソコンを使わなくてすむから」が83.4%で一番多いシニア層を想定していたら、30代女性などファミリー層にも受けた
昨年のE-800の認知率は42.5%で、複合機の73.3%には届いていない。まだ、拡大の余地は大きいE-810。大きな液晶とキーボードが特徴。リモコンも備えており、デジタルフォトビューワーとしても使えるキーボードは50音配列

●カラリオ ミー
カラリオ ミー E-340は2色。左がシルバーで、右がピンク

 L版写真やハガキを印刷するコンパクトプリンタの市場は、ボディーカラーが大切だ。今年は2色用意される。

●CMに黒木メイサさんが加わる

 TV CMについては、別途発表会が行なわれたので、そちらのレポートをご覧いただきたい

今年は役所広司さんに、黒木メイサさんが加わったCMの一場面こちらは年賀状編

●質疑応答
質疑応答の模様。回答しているのはエプソン販売 取締役 販売推進本部長 中野修義氏

 発表後の質疑応答では、率直な回答が多く、会場が沸いた。

 「(キヤノンさんとの違いは)無線LAN接続の簡単さと、カラーの6色プリントだ。キヤノンさんも6本インクを使うが、うち2本は同じ黒だ(注:顔料インクと染料インクを使い分けている)」とか、「(キーボード付きコンパクトプリンタでは)カシオさんには負けない」などの発言は発表会では珍しい。

 また、「(目標シェアが)50%ではなく、51%なのは、確実にトップシェアを取るというこだわりである」という回答があり、今年の製品への自負が強く伺われた。

 インクジェットプリンタは、年賀状をターゲットにする年末商戦で、その年の出荷数の大半を売り上げる。また、例年キヤノンとエプソンの2社が40%以上のシェアを占める。今年の2大メーカーの対決は、無線LANと操作性が争点になっており、製品の特徴がやや似ていることもあって興味深いものになりそうだ。

(2010年 9月 3日)

[Reported by 伊達 浩二]