台湾Acerは27日、中国北京で「Source Home 2010」と題した発表会を開催し、今後同社のコンシューマ製品の中核を担うメディアプラットフォームとなる「clear.fi」などについて説明した。
●ついに世界シェア1位が射程に入ったAcer発表会ではまず、同社社長のGianfranco Lanci氏が、現在のPC市場を取り巻く環境や同社の直近の業績などについて説明した。
会場は2008年のオリンピック会場の間近にあるホテル | AcerのGianfranco Lanci氏 | 会長のJ. T. Wang氏もスピーチした |
同氏によると、経済不況の煽りを受けた2009年から、2010年第1四半期は成長基調に転じたという。同社は2009年第3四半期に、PC世界市場でDellを抜き、2位のシェアを確保した。その勢いは止まらず、2010年第1四半期にはDellとの差を広げ、1位のHewlett-Packard(HP)との差を縮めた。さらにノートPCだけに絞ると、僅差ではあるが、HPを抜きシェア1位に到達したという。発表会の後半で同社会長のJ. T. Wang氏が述べたように、全PCでのシェア1位も射程圏内に入ってきたと言える。
具体的な数値として、売上高は前年同期比46%増の49億4,800万ドル、営業利益は同31%増の1億6,100万ドル、PC全体のシェアは14.1%、ノートPCのシェアは19.4%となった。
Gartnerの調査によると、2010年第1四半期でついにAcerのノートPCの世界シェアは1位になった | 同期の業績 |
同社の好調ぶりは、成熟市場、新興市場を問わないが、現在世界で2番目に大きな市場と言われる中国でだけはノートPCが5位、PC全体では6位と苦戦を強いられている。この状況を打破するため、午後には中国企業のFounderとの業務提携が発表された。
Founderは中国ローカルの企業で、PCのみならずICT(information Communication Technology)業界で幅広くビジネスを行なっている。特にPC業界ではデスクトップPCで強みを持つ。一方のAcerは、ノートPCや製品のデザインで定評がある。
この両社が得意分野をそれぞれ補完し合うことで、両社の中国でのプレゼンスを強める。具体的には、製品の計画や、研究開発、販売/流通の面で協業を行なっていく。ただし、過去、GatewayやPackard-Bellに対して行なったような買収ではなく、両社のブランドなどはそのまま継続する。
とはいえ、双方の代表者は、2社で合わせて中国市場シェア3位を目指すと明言しているほか、PCBや後述する電子書籍でも協業を行なっていくなど、両社の関係は、今後、より緊密となるものと思われる。
新興国でのAcerのシェア。中国は低迷している | そこで中国企業のFounderと業務提携を行なう | その場で、調印式も行なわれた |
●独自のメディアプラットフォーム「clear.fi」
また、Lanci氏は、PC業界の今後の動向についても展望した。同氏によると、PCのコモディティ化に伴い、消費者の購入の動機付けや選択が変わって来ているという。例えば、CPUの速さやストレージの多さといった技術的な点は、セールスポイントになっておらず、代わって、デザインがもっとも重要な要素になりつつある。加えて同氏は、もはや「Wintel」にこだわる必要もなくなり、それは単なる選択肢の1つでしかないと述べた。
また、インターフェイスがキーボードからタッチへと移行しているほか、デバイスの数が1家に1台から1人台以上になり、分散して保存されるデータをシームレスに扱いたいという要望が生じるようになった。
clear.fiの説明を行なったJim Wong氏 |
その要望に答える解として、今回同社が発表したのが、「clear.fi」と呼ばれる、統合メディアプラットフォームだ。
clear.fiは、一言で表わすと、DLNAサーバー/クライアント機能と共通化されたユーザーインターフェイスを持つ、デジタルデバイスのためのプラットフォーム。前述の通り、個人が利用するデバイスは複数台に渡り、コンテンツはデバイスごとに分散して保存されている。DLNA機能を利用することで、データがどのデバイスにあろうが、ユーザーはそれを意識することなく、コンテンツにアクセスできるようになる。
しかし、ユーザーインターフェイスがデバイスごとに違っていたのでは、不便になる。そこで、同社は今後、PCの範疇を超え、デジタルメディアアダプタや、果てはスマートフォンにもclear.fiの共通したユーザーインターフェイスをかぶせていく。もちろん、画面解像度はデバイスにより異なるので、全く同じわけではないが、アイコンや操作性、機能などを徹底的に統一化していく。
clear.fiの特徴として、同社ITGO社長のJim Wong氏は、4つの「簡単さ」を挙げた。1つ目が「セットアップの簡単さ」。DLNAに準拠することで、ネットワークの設定などしなくても、つながるようになる。2つ目が「探しやすさ」で、つながるデバイスの持つコンテンツが、ジャンルごとに表示される。3つ目が「共有の簡単さ」で、コンテンツをドラッグアンドドロップするだけで、共有され、他のデバイスに保存させることもできる。そして4つ目が「拡張の簡単さ」で、PCメーカーらしくHDDの交換や増設も簡単にこなせるよう設計されているという。このclear.fiの利用イメージについてWong氏は、「“ホームクラウド”あるいは“パーソナルクラウド”」だと表現した。
clear.fiは、まだ開発中で実装時期は不明だが、今後同社のさまざまな製品に展開され、他社製品との差別化を図っていく。一種の囲い込み戦略ではあるが、そこにつなげるTVなど一部のジャンルの製品については、他社製品との接続性も確保していくとしている。
clear.fiはデスクトップPCからスマートフォンにまで統一されたユーザーインターフェイスを提供 | 実際にノートPC上で動作しているところ | clear.fiの特徴 |
今回、clear.fi以外にも、ハードウェアとして電子書籍端末「LumiRead」が発表された。6型の電子ペーパーを採用し、3GやWi-Fi、ハードウェアキーボードなどを備え、AmazonのKindleと似通った作りとなる。第3四半期から、米国、ドイツ、中国で順次発売する予定。中国については、Founderがコンテンツを提供する。
また、第4四半期に投入予定のタブレット端末も参考程度ながらデモが行なわれた。スペックなどは全く不明だが、7型のカラー液晶と、本体下部にハードウェアキーボードを装備し、LumiReadを一回り大きくしたような姿をしている。
液晶はタッチ操作に対応し、デモ機にはclear.fiが実装されていた。電子書籍の閲覧以外にも、Webブラウズや、写真/動画の再生も可能となっている。
展示会場には、Core i5を搭載した「Timeline X」なども展示されていた。それらについては、別途レポートをお送りする。
電子書籍端末「LumiRead」 | 参考披露されたのタブレット端末。UIはclear.fiになっている |
電子書籍の購入/閲覧も可能 | そのほか、各種メディアファイルも再生できる |
(2010年 5月 27日)
[Reported by 若杉 紀彦]