医療機器や健康管理サービスの連携による健康管理を支援するNPO法人コンティニュア・ヘルス・アライアンス日本地域委員会(代表企業=インテル株式会社)は17日、コンティニュア設計ガイドラインに準拠した機器およびサービスの利用が開始したと発表した。
コンティニュア・ヘルス・アライアンスは、個人が利用する血圧計、体重計といった機器、医療機関が利用する医療機器、これらの機器と連動したソフトウェアやサービスなどが連携することで、パーソナルヘルスケアの質的向上を目指すNPO法人。参加メンバーは全世界で220社を超え、日本企業はNTTデータ、NTTドコモ、パナソニック、東芝、タニタなどが参加している。
今回、ワールドワイドの代表を務める、米Intelデジタルヘルス事業本部パーソナルヘルス推進担当ディレクターのリック・クノッセン氏が来日し、ワールドワイドでの活動状況と、日本への期待を次のように述べた。
「コンティニュア・ヘルス・アライアンスは、これまでバラバラに記録されていた健康関連機器のインターフェイスに互換性を設けることで、相互互換性のある健康管理システムを拡大し、皆さんが健康的で豊かな生活を送るための支援を行なうことを目的としている。計測したデータが正しく記録され、正しい場所に、正しく届く環境を作ることで、この目的に近づくことができるのではないかと考える。対象領域は、予防的な健康管理、慢性的な疾患管理、高齢者の自立的生活の3分野を考えており、家庭で利用する血圧計、歩数計、体重計、投薬管理といったシステムを、インターネットを通じ、健康の指導を行なう機関や、医療機関、高齢者向けサービスを行なう機関、個人のデータ記録サービスの提供会社などと連携する」。
「アライアンスが誕生したのは2006年6月でその時には22社にしか過ぎなかったが、2009年12月現在で227社が参加している。認証機器の製品化もスタートし、現在で20点、年末までには50を超える機器が揃うことが確実となっている。EUでは助成金対象事業に選ばれた。日本は全世界で先駆けとなる機器を開発する実力ある企業がたくさん揃っている国で、今後、より多くの対応機器、対応サービスが増加することを期待している」。
コンティニュア・ヘルス・アライアンス 代表 リック・A・クノッセン氏 | コンティニュア・ヘルス・アライアンスの使命 |
コンティニュアが対象とする3分野 | コンティニュア参加企業数の推移 | 認証機器の製品化始まる |
日本での現状については、インテルの吉田和正社長が説明した。「日本の少子高齢化が進む中で、豊かな暮らしをどのように実現していくのかは大きな課題といえる。ICT(Information and Communication Technology)を活用することで生活習慣病を予防し、医療費の増加を抑制することに繋げるのが我々の目指す方向性。PCにとってもヘルスケアデータを管理、活用していくという新しい役割が与えられたということだと考えている。対応機器だけでも数年で数万台の市場規模に広がっていくだろう」。
インテル 吉田和正社長 | 日本におけるヘルスケア環境 | 日本におけるコンティニュアの活動 |
今回、対応機器の利用を開始したのが、訪問看護サービスを提供しているセントケア・ホールディング株式会社、健康診断施設向け総合検診システムを提供する株式会社エム・オー・エム・テクノロジー、総務省が推進するユビキタスタウン構想推進事業である自治体遠隔疾病管理ソリューションの3つの案件だ。
利用が始まったセントケア・ホールディング株式会社の訪問看護アセスメント | 利用が始まった株式会社エム・オー・エム・テクノロジーの総合検診システム | 利用が始まった自治体遠隔疾病管理ソリューション |
セントケア・ホールディングでは、コンティニュア規格対応のASPベース訪問看護支援システム「看護アイちゃん」を利用し、コンティニュア対応機器と連携することで血圧などの測定データを改めて入力することなしに、データ登録している。ビデオでは、実際にこのシステムを利用する看護師のコメントが紹介され、「血圧計はデジタル化されているにもかかわらず、入力作業は人の手によるアナログ作業で、入力間違いも起こる。このシステムでは入力作業がなくなるため、手間が軽減し、間違いも減るため、我々看護師は患者さんとのコミュニケーションに注力できる」と対応システム利用による、業務負担削減が実現されていることが説明された。
また、医療の専門家の立場から、帝京大学 本部情報システム部部長で、帝京大学医学部付属病院で麻酔科講座を担当する澤智博氏が、コンティニュア・ヘルス・アライアンス対応機器増加による、医療変革について言及した。
「これまで医療機関と患者さんとの関わりは、何か異常が起こった際に診療に訪れる、点の接点しかなかった。しかし、今回の仕組みのように日常データを記録することが一般になれば、そのデータをベースにした生活改善提案など、疾患を治すことに留まらない新しいパラダイムによる疾患管理が可能となる。こうしたシステムが普及し、予防的健康管理が医療機関の仕事へと変化していくことを期待したい。また、医療現場の業務としても、電子カルテなどの病院情報システムや、検査部門の医療機器はデジタル化されているものの、患者さんのベッドサイドの血圧計、体温計、体重計といった病院内のラストワンマイルのデジタル化は遅れている。この部分もデジタル化されていくことで、医療現場にも変化が起こることにも期待したい」。
帝京大学 情報システム部 部長 帝京大学医学部付属病院 麻酔か講座担当 澤 智博氏 | 日本の医師数と65歳の人の人口 |
新パラダイムの慢性疾患管理 | 医療機関が期待する医療現場でのラストワンマイルソリューション | 医療現場が期待する医学研究への応用 |
今回の発表内容 | コンティニュアの適用分野拡大 | 発表まとめ |
会見終了後、会場では利用がスタートしているセントケア・ホールティングの「看護のアイちゃん」、エム・オー・エム・テクノロジーの総合健診システム「LANPEX evolution」のコンティニュア規格対応版をはじめ、24社の対応ソリューション展示が行なわれた。
認証機器を開発するためには、アライアンスへの参加が条件となる。参加企業にはライセンス料なしで、無償で開発のためのソースコード、試験ツールの活用が可能となる。
(2010年 2月 17日)
[Reported by 三浦 優子]