マイクロソフト、高度IT人材育成を目指し国立高専機構と包括協力関係を締結

包括提携契約書を前にした参加メンバー

12月18日 発表



 独立行政法人国立高等専門学校機構とマイクロソフト株式会社は18日、実践的で国際競争力のある高度IT人材の育成を目指し、「Microsoft Education Alliance Agreement」を締結した。

 Microsoft Education Alliance Agreement(以下、MEAA)は、ワールドワイドで実施しているマイクロソフトと公的教育機関との包括的な協力協定。マイクロソフトのテクノロジやプログラムを通じ、学生のテクノロジへの興味を喚起し、可能性を実現できる力を習得するための質の高い教育を提供できるよう、マイクロソフトと教育機関が協力するプログラムだ。

Microsoftワールドワイドエジュケーション担当バイスプレジデントアンソニー・サルシト氏

 ワールドワイドでこのプログラムを担当している米Microsoftワールドワイドエジュケーション担当バイスプレジデントのアンソニー・サルシト氏は、MEAAについて次のように説明する。

 「仕事柄、世界中の教育機関、政府関係者と会うことが多いが、『教育こそ、経済成長の根本』という意見をよく耳にする。Microsoftとしても同じように感じており、このようなアライアンスは、そのためのチャレンジをするための第一歩となる。提携の内容は国によって異なり、例えばメキシコでは高専のような機関と合意を締結したが、米国では各学校と結んでいる。提携相手は、むやみに数を増やすことを目的としているのではなく、集中的に投資し、優秀な人材育成を進めていくことにしている。この提携を機に、高専機構と協力し、学生の皆さんにインスピレーションを与え、新しいイノベーションを生み出してもらいたい。当社は全世界の学生が参加する技術コンテストImagine Cupを開催しているが、高専の学生さんには2010年にポーランドで開催予定のイベントを皮切りに、毎回イマジンカップに参加してほしい」

独立行政法人国立高等専門学校機構の林勇二郎理事長

 高専が提携を結んだ背景を、独立行政法人国立高等専門学校機構の林勇二郎理事長は、次のように説明する。「現在、独立国立高等専門学校機構では、第2期中期経営目標期間を迎え、地域に根ざし、なおかつグローバルな教育を目指して活動を進めている。今回の提携により、共通のITプラットフォームを持つことは、スケールメリットを持ちながら、日本では地域に根ざした教育を果たしやすい環境が整ったと感じている。この度の提携を機に、国の高等教育機関としての役割をさらに強化していきたい」

 今回の包括協力の具体的な中身は以下の通り。

 (1)教育環境を整備するために、包括ライセンス契約を締結し、全教職員と高専生の約6万人が最新のマイクロソフトテクノロジを活用できるIT環境を学内に実現。マイクロソフトの教育機関向け無償コミュニケーションサービス「Microsoft Live@Edu Outlook Live」を活用した、高専卒業生を中心に継続的に連携できるコミュニケーション基盤を整備し、コミュニケーションネットワークや交流強化を実施する。ソフトウェア開発製品などを自習用ソフトとして、学生に提供する「Microsoft DreamSpark」による、高専の全学生のソフトウェア開発環境やデザインツール活用と同プログラムを活用したカリキュラムキットによる講義/学習の実施。マイクロソフトの提供する教育制度「マイクロソフトIT Academy」により、高専の全学生が、全世界共通のマイクロソフトの認定資格を取得する準備や資格取得機会を獲得。

 (2)世界に通じる高度人材育成に向けた共同教育として、高専機構の教育プログラム「ITリーダー育成キャンプ」にマイクロソフト側が継続に協力し、高度IT人材の育成を目指す。さらに、インターンシッププログラムや、高専生が取得してきた実践的なスキルを活用による応用力を習得。国際的な技術コンテストImagine Cup(日本大会または世界大会)に挑戦することで、世界に通じる高度IT人材を育成する。

高専機構とマイクロソフトの協力に関する概要高専機構とマイクロソフトの協力内容高専の概要
高専の中期経営計画目標高専がすでに実施している共同教育事例マイクロソフトをはじめとしたソフトメーカーと協力して実施しているプロコン
マイクロソフトと高専との協力例マイクロソフトと高専によるこれまでの取り組みその1マイクロソフトと高専のこれまでの取り組みその2

 マイクロソフトで今回の提携を担当したパブリックセクター担当の大井川和彦執行役常務は、「日本だけでなく、ワールドワイドで実施している大規模プログラムであるMEAAを日本で初めて締結することができた。『理系離れ』を打破するような教育プログラムを提供していきたい。高専向けのスペシャルプログラムを設けた『ITリーダー育成キャンプ』は、今年はクリスマスをつぶして実施する。その結果、世界に通用する技術力を身につけた高専生が多数誕生すれば、今回の提携は成功といえるのではないか」と説明する。

 独立行政法人国立高等専門学校機構の木谷雅人理事は今回の提携の成果を、「高専の学生数は、1学年1万人と決して大人数ではないが、実験/実習を重んじた高等教育を提供することで、自分で企画構想し、予算/スケジュールなどの制約の中で自分の手で組み立てていく力を持った人材を育成する日本に特化した教育機関となっている。この厳しい経済環境下にあっても就職率は高い。高専機構では5年ごとに中期経営計画を出しているが、その中で国際的に活躍できる人材の育成は目標の1つであり、国際的な技術コンテストであるImagine Cupに参加することは、学生が刺激を受ける有益な機会となっている。今年度は、東京高専チームが国内予選を勝ち抜いてエジプトの全世界大会に進んだが、残念ながら世界大会での入賞は逃がした。マイクロソフトからのツールの提供、先端の技術者からの指導、さらにImagine Cupのような試みがあれば、学生が意欲を持つ動機となるのではないか」と分析している。

 提携機関は2009年12月から1年間。「1年後、成果を見て、契約の延長もふまえてあらためて協議したい」(マイクロソフト・大井川執行役常務)という計画だ。

マイクロソフト執行役常務パブリックセクター担当大井川和彦氏独立行政法人国立高等専門学校機構理事の木谷雅人氏
今回の包括提携による高専側からの期待その1今回の包括提携による高専側からの期待その2

(2009年 12月 18日)

[Reported by 三浦 優子]