富士通マイクロエレ、LSI事業の再構築計画を発表

代表取締役社長の岡田晴基氏

8月27日 発表



 富士通のLSI事業子会社である富士通マイクロエレクトロニクス株式会社は27日、東京の富士通本社で記者会見を開催し、LSI事業の再構築計画を報道機関向けに説明した。同社の代表取締役社長を務める岡田晴基氏が説明にあたった。

 初めに岡田社長は、今後はLSI事業の売り上げが大きくは伸びないとし、その前提で安定的に利益を上げていくことを目指すと述べた。それからプレゼンテーションに入った。

 岡田社長は半導体事業を取り巻く環境と直近の動向を簡単に解説した後、3つの改革を実施すること、その結果、売上高営業利益率で平均8%を2012年会計年度(2013年3月期)~2014年会計年度(2015年3月期)に達成することを目指すとした。

 半導体事業を取り巻く環境では、半導体製造技術の微細化によってプロセス開発の費用が巨額になっており、半導体需要は2008会計年度下半期に急減したが2009年2月を底になだらかな回復基調にあり、半導体ユーザーのニーズが多様化していると述べた。

記者会見のプレゼンテーション目次半導体事業を取り巻く環境富士通マイクロエレクトロニクスのロジックLSI受注状況。2007年4月を「100」とした指数である

 そして3つの改革を実行すると説明した。3つの改革とは、「事業モデルの改革」、「費用構造の改革」、「商品ポートフォリオの改革」である。

 事業モデルの改革では投資の重点を「微細化プロセスと製造」から「商品とIP」にシフトする。富士通マイクロエレクトロニクスの工場で量産するLSIは45nm世代までとし、40nm世代のLSIの量産は台湾のTSMCに委託する。また28nm世代の高性能LSIプロセス技術開発はTSMCとの共同開発とする。28nm世代のLSIの量産もTSMCに委託する計画である。また高性能ロジックを封止する高性能パッケージング技術をTSMCと共同で開発する。これらの共同開発と生産委託によって「微細化プロセスと製造」の投資を大幅に削減する。一方で海外企業の買収や海外企業との提携などを駆使し、「商品とIP」を強化する。

3つの改革と損益目標投資の重点を「微細化プロセスと製造」から「商品とIP」にシフト
先端プロセスの開発と生産でTSMCと協業海外企業の買収や海外企業との提携で商品を強化

 費用構造の改革では、2年間で固定費を中心に800億円の経費を削減する。2009会計年度に650億円を削減し、2010年度に150億円を削減する計画である。そのために国内のLSI製造能力を縮小する。3本ある6インチ(150mm)ウェハ処理ラインを1本に集約するとともに、4本ある8インチ(200mm)ウェハ処理ラインを3本に集約する。この集約によって6インチおよび8インチのウェハ処理能力を8インチ換算で85,000枚/月(2009年3月末時点)から7万枚/月(2010年3月末時点)へと減らす。2本ある12インチ(300mm)ウェハ処理ラインは18,000枚/月の能力をそのまま維持する。

固定費の削減計画ウェハ処理ラインの集約更なる固定費削減の内訳

 商品ポートフォリオの改革では、商品の絞り込みとポートフォリオの再編成を実施する。商品系列を競争性(他社商品に対する競争力)と成長性(市場の成長力)で分類しした。そして現在の主力商品20種類を14種類に絞り込み、4つの応用分野に商品開発を集中させることにした。4つの応用分野とは「モバイル/エコロジー」、「自動車」、「映像機器」、「ハイパフォーマンス(産業機器と複写機)」である。さらに、新規事業として窒化ガリウム(GaN)材料によるパワーデバイス事業を立ち上げる。2010年後半にエンジニアリング・サンプルを出荷する計画である。

 これら3つの改革により、2008会計年度に約600億円の営業損失を計上していた収支を、2009会計年度には約150億円の営業損失に改善し、2010会計年度には約100億円の営業利益へと黒字転換する。さらに、2012~2014会計年度には平均で8%の売上高営業利益率を達成する。ちなみに売上高は2008会計年度が3,903億円。2009会計年度は2,900億円の見通しで、2010会計年度は売上高を8%伸ばして3,100億円にする目標を立てている。2011~2014会計年度の売上高は3,100億円~3,400億円で推移するとみている。

商品を競争性(他社商品に対する競争力)と成長性(市場の成長力)で分類商品開発を集中する4つの応用分野主要商品20種類を14種類に絞り込み、6種類の商品は新規開発を縮小・凍結
「映像機器」分野の商品ポートフォリオ「自動車」分野の商品ポートフォリオ「モバイル/エコロジー」分野の商品ポートフォリオ
「ハイパフォーマンス」分野の商品ポートフォリオ新規事業(窒化ガリウムによるパワーデバイス)2014年度までの収支計画。2011年度には過去にロジックLSIで計上した140億円の営業利益を上回る、150億円以上の営業利益を出す

(2009年 8月 28日)

[Reported by 福田 昭]