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IBM、1,000倍の記録密度を誇る「原子ストレージ」の実験に成功

トンネル電流を用いて磁気の配向を変更する模式図

 IBMは8日(米国時間)、磁気記録媒体として世界最小の「原子ストレージ」の記録実験の成功を発表した。理論的には従来の1,000倍の記録密度を持つストレージが実現可能になるという。

 実験には、過去に同社の研究者が1986年のノーベル賞に輝いた走査型トンネル顕微鏡が用いられる。これにより、1つのホルミウム原子に対し電流を与え、磁性の配向を変えて情報を記録することを試みた。

 結果、それぞれ1nmしか離れていない2つの原子に独立の情報を書き込むことに成功した。HDDなどでは、1bitの情報を記録するのに原子10万個が必要だが、この技術は1bitあたり原子1個と、まさに究極的な記録密度の高さを実現するものだ。

 しかし、実験の前提として空気中の分子などと干渉を起こさないこと、すなわち超真空状態が必要である上、磁性の状態を保存するために液体ヘリウムを用いた冷却が必要なこともあり、実用化には時間が掛かりそうだ。