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NECと産総研、宇宙での利用を想定した高放射線耐性の「NanoBridge」式FPGAを開発

「NanoBridge」技術の動作原理。右はNB-FPGAのチップ写真

 NECと国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、放射線耐性に優れ、宇宙でのLSI利用に向けた金属原子移動型スイッチ「NanoBridge」技術を搭載したNB-FPGAの開発を発表した。

 現在のFPGA(SRAM型)では、人工衛星など宇宙環境において放射線が影響して回路内で電荷が発生し、書き込まれた回路情報に誤作動が生じてしまう「シングルイベント現象」と言われる問題を抱えている。

 NanoBridgeは、電圧で銅原子を集積/切断させてスイッチングを行なう仕組みを採用しており、通電されていなくても0/1の状態を維持できるのが特徴であり、高い放射線耐性を有するとともに、従来のFPGAの10倍以上の電力効率を備えている。

 今回NECは国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、NB-FPGAの地上実験を行ない、過酷な放射線環境下にNB-FPGAを晒した結果、NB-FPGAのオン/オフが放射線照射前後で変わらないことを確認できたという。NECはSRAMに対し、エラー発生頻度を100分の1以下にできると予測しており、高放射線耐性と超低消費電力を両立するLSIを実現できるとしている。

 今回実験したNB-FPGAは、FPGAで一般的に使われる4入力LUT(Look-up Table)を使用しており、64×64セルのチップに8,000個のLUTを実装、スイッチを3端子構造にすることで、オフ状態の信頼性を向上させた。1つのNB-FPGAには最大5,100万個のスイッチが搭載され、信号の切り替えやLUTのメモリに使用されている。

 NECとJAXAは2018年度に打ち上げる「革新的衛星技術実証1号機」にNB-FPGAを搭載し、実用性と信頼性を検証する予定。