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NECらが、固体電解質中の原子移動を利用した金属スイッチ技術を開発
~3倍の電力効率とチップ面積の1/10の縮小を実現

2月16日発表



 NEC独立行政法人 物質・材料研究機構(NIMS)独立行政法人 科学技術振興機構(JST)は16日、固体電解質中での金属原子移動を利用した小型・低抵抗スイッチ「NanoBridge」の開発、および同スイッチを用いたプログラマブルロジックの基本回路の回路組み替え動作に成功したと発表した。

従来のプログラマブルロジックとCBICの比較

 現在、半導体チップでは、CBIC(Cell-Based IC)を用いたものが主流を占める。CBICは、多数の小規模ロジックセルで構成されるもので、ロジックセルの組み合わせ自由度が高く、並列処理度が高いため、ASIC(専用設計チップ)の製造に適している。

 一方、開発期間の短縮などの目的から、回路組み替えの可能なプログラマブルロジックの採用が近年増加している。プログラマブルロジックは、ロジックセルの間に接続スイッチを設けることで、配線が固定されたCBICと違い、セル間の結線を変更でき、チップ製造後も機能変更や修正ができる。

 しかしながら、プログラマブルロジックのスイッチとして用いられる半導体は電子密度が低く、必然的に大型かつ高抵抗となる。スイッチの使用数を減らすためには、CBICより100倍近くトランジスタの多い大規模なロジックセルを使う必要が生じ、結果としてロジックセルの組み合わせ自由度や、並列処理性能が低下し、CBICより回路の応用範囲が限られるという問題がある。

 今回3者が開発したNanoBridgeは、固体電解質(硫化銅)中での原子(イオン)移動を利用した金属スイッチ。電極(チタンと銅)に負電荷を印可すると、酸化・還元反応が起こり、電解質中に金属架橋が形成されON状態となる。正電荷を印可すると、逆の反応から金属架橋が消滅しOFF状態となる。

 NanoBridgeは、従来型接続スイッチがトランジスタ層と配線層を必要とするのに対し、配線層だけで形成可能なことから、面積は1/30で済むほか、接続抵抗も数十分の1まで低減した。

 これにより、CBIC同様に、多数の小規模ロジックを用いたプログラマブルロジック(プログラマブルCBIC)の形成が可能となった。プログラマブルCBICは、従来のプログラマブルロジックに比べ、回路利用効率が約10倍に向上し、チップ面積を1/10に縮小できるほか、電力効率も3倍に向上するという。

原子移動型金属スイッチの特徴 NanoBridgeの動作原理 NanoBridgeの電気的性質

 原子移動型金属スイッチとしては、ギャップ型と呼ばれる固体電解質表面での金属の析出を利用したものなどがあるほか、フラッシュメモリ用途を想定した小型・低抵抗のスイッチ技術の開発はほかにも行なわれているが、プログラマブルロジックへの応用はNanoBridgeが初という。

 今回の発表では、NanoBridgeを用いた4x4クロスバースイッチでの回路結線組み替え動作の成功も発表された。

 しかし、NECの支配人の福間雅夫氏によれば、現時点ではまだ、スイッチング電圧の引き上げや、繰り返し動作可能回数(1,000~10万回)の向上といった課題が残されており、実用化には数年以上かかる見込み。今後は、構造や材料自体の変更も含め、改善を図っていくという。

NEC支配人の福間雅夫氏 4x4クロスバースイッチの動作実証。左上に見えるのは回路の電子顕微鏡写真 従来型スイッチとNanoBridgeスイッチの比較

□NECのホームページ
(2月16日現在、この件に関する情報は掲載されていない)
http://www.nec.co.jp/
□独立行政法人 物質・材料研究機構のホームページ
(2月16日現在、この件に関する情報は掲載されていない)
http://www.nims.go.jp/jpn/
□独立行政法人 科学技術振興機構のホームページ
(2月16日現在、この件に関する情報は掲載されていない)
http://www.jst.go.jp/

(2004年2月16日)

[Reported by wakasugi@impress.co.jp]


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