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理研、フェムト秒ベッセルビームによるTSVで3次元集積回路を高集積化

位相板により最適化したフェムト秒ベッセルビームを用いて、厚さ100μmのSi基板に作製したTSVの走査型電子顕微鏡写真。左はSi基板表面、中央はSi基板裏面、右は断面。回折リング損傷のまったくない高品質・高アスペクト比のTSV(穴径7μm以下、アスペクト比15以下)の高密度2次元アレイが作製できている

 理化学研究所は、フェムト秒ベッセルビームを用いたシリコン貫通穴(TSV)手法で、次世代3次元シリコン大規模集積回路(SiLSI)の高集積化と高速度化に繋がる技術を開発したと発表した。

 今後の電子機器の小型化や高密度集積化の実現のためには、TSVによる半導体作製技術が重要と見なされており、高品質・高アスペクト比(半導体製造においてはエッチングなどで基板上に形成されたパターンの深さと幅の比を指す)のTSVが必要とされている。

 現行のTSVでは、一般的に反応性イオンエッチングの一種であるボッシュ法が用いられているが、エッチング速度が遅く、レジスト(保護膜)を用いた露光過程が必要といった問題を抱えている。

 また、TSV作製おいては現在穴径50μm、アスペクト比10が要求されているが、将来的には穴径10μm以下で、アスペクト比5以上が必要とされる。

 しかし、ガウスビームを使った従来のレーザー加工法では、焦点深度の制約によって穴径が小さくなるほど、深穴加工が難しくなり、高アスペクト比を維持できないという課題が残されている。

 そこで理研の国際共同研究チームは、レジストを用いずに高品質な微細加工を高速で行なえるフェムト秒レーザー(1フェムト秒は10のマイナス15乗秒)に着目。フェムト秒レーザーを回折のないベッセルビームにしてTSVの作製を試みたところ、ガウスビームでは直ちにビームが広がってしまうところ、ベッセルビームでは直径数μm程度の集光スポットが長い距離(数mm以上)に渡って集光径を保ったまま伝搬できたという。

 最終的にこのTSV作製装置に、BK7という光学ガラス材料の基板に2段階構造の位相板を取り付け、位相板によって最適化したフェムト秒ベッセルビームを用いて暑さ100μmのSi基板へTSV加工を施した結果、高品質で高アスペクト比のTSV(穴径7μm以下、アスペクト比15以下、これは将来的に要求される性能の3倍)の高密度2次元アレイを作製することに成功した。

 最適化したフェムト秒ベッセルビームはTSVの作製だけでなく、さまざまな基板の深穴加工や切断加工に応用できると考えられており、さらに細胞レベルでタンパク質などの分布・動体を捉えるバイオイメージングや、微少物体を補足・操作するレーザートラッピングによる多重粒子捕捉など、広範な分野への応用が期待できるとしている。

上段のaとcは、アキシコンレンズのみで生成した従来のベッセルビームの空間強度分布。下段のbとdは、位相板とアキシコンレンズで最適化したフェムト秒ベッセルビームの空間強度分布。従来のベッセルビームの回折リングエネルギー比が15.6%なのに対し、最適化したフェムト秒ベッセルビームでは0.6%に低減した