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日本HP、「2017年の製品に期待して欲しい」と岡社長自ら宣言

~3Dスキャナ付き一体型Sprout Proを春に投入

日本HP 代表取締役 社長執行役員の岡隆史氏

 株式会社日本HPは13日、東京本社で事業戦略説明会を開催し、日本HPの2017年の取り組みについて説明を行なった。説明会では、PC業界全体の関心を寄せるような、HPならではのユニークな製品群を2017年中に日本で投入することを強調し、期待できる話題作りを提供していくことを約束した。

製品自体の魅力こそがHPの根本

 発表会の冒頭では、同社 代表取締役 社長執行役員の岡隆史氏が挨拶。2015年8月にHewlett-Packardから分社化し、その際に会社のブランドコンセプトを「Keep Reinventing」(革新の継続)としたことについて、「革新をし続けなければならないという意識が社員の中に刷り込まれ、自ら革新を提案していかなければ、会社の方針に合わなくなるという意識をするようになった。良い議論を社内に持ち込んだ意味では成功した」と振り返る。しかし、「お客様にとって革新の何がメリットなのかは、実際の製品を持って示すしかない」とも言う。

 HPの輝かしい過去を振り返ると、今から約77年前に、オーディオ発振器を作りウォルト・ディズニー向けに出荷したことをはじめ、それからポータブルPCといった革新的な製品を次々と生み出してきた。その革新をさらに加速していき、他社との差別化を図っていかなければならない。「製品で戦っていくためには、製品自体に魅力を持たせなければならない。これがHPの根本となっている」と岡氏は説明する。

HPのイノベーションの歴史

 一方で、日本HPが日本国内でビジネスを展開するにあたっては「日本のお客様に対して信頼してもらい、世界で最先端の技術、製品、サービスを提供する。その際はアメリカのスペックやデザインをそのまま日本に持ってくるのではなく、日本のユーザーの要求に沿ったものに仕上げなければヒットしない」とする。そのため日本HPは日本独自の製品やサービスも展開してきた。

 「日本の市場が厳しい時は、海外のほかの国でビジネスをすればいいのがグローバル企業。しかし、我々は日本でしか市場展開できないという本社との約束がある。日本の方がビジネスの効率が良く、優秀であることをHP本社にアピールし、投資させなければならない。そのためのパートナーとの展開をはじめ、製造拠点を昭島から日野に移し、物流拠点も1カ所にまとめるなど、2016年中に施設面での効率化も図った。また、PCをハードウェアとしてではなく、クライアントの環境を分析し、購入、使用、破棄までをまとめて提供するソリューションも展開した。その結果、日本市場平均を上回る売上を実現した」と述べた。

日本HPのミッション
同社のPCセグメントは市場を上回る成長を果たした

 また、今後は長時間残業の問題や、どこでもPCで仕事をできるようにする社会の潮流から、さらにデバイスの数が増え、テクノロジー市場全体の勢いが増す。その中でHPが生き残っていくために、3つの事業を柱に据える戦略を採る。

 1つ目はPCやスマートフォンなどを中心とした「コア」事業。これはHPの主幹事業であるとともに、HPラボが開発した独自のセキュリティ機能を実装することで、BIOSをターゲットにしたハードウェアに対する攻撃を防御し、その優位性をユーザーに訴える。

 2つ目が「成長」事業である。例えば「HP Elite X3」のような、スマートフォンとしてもPCとしても使えるようなデバイス、コラボレーションに適したPC、印刷分野では、高品質少量印刷に適したソリューションの提供を行なっていくとする。

 3つ目が、これから市場が立ち上がる「将来」事業。例えば、3Dスキャナとプロジェクタを備えた一体型ワークステーション「Sprout Pro」や、高速な3Dプリンタのような製品を指す。Sprout Proに関しては、2017年の春に日本における投入を約束した。3Dプリンタに関しは、保守部品などを3Dプリンタで出力すれば、サポートが保守部品を抱えなくて済むようになるとし、それによるコスト削減の効果は莫大であるとアピールした。

 「いずれにしても、HPにしかないものを日本で展開する予定で、2017年の日本HPに期待して欲しい」とまとめた。

日本HPの2017年事業展開の3本の柱

分社後、イノベーションの2年目に突入

九嶋俊一氏

 続いてPC関連の事業展開について、同社 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部長 兼サービス・ソリューション事業本部長の九嶋俊一氏が説明を行なった。

 先ほど岡社長の言葉にもあったように、革新を続けることが会社の方針であるのだが、「我々の会社だけが革新しても意味がない。お客様にメリットを提供して初めて意味を成す」とし、「OFFICE OF THE FUTURE:未来のオフィスのためのデザイン」を掲げて製品展開を行なうとした。

日本HPのPCはオフィスの将来を見据えたデザイン
ビジネスを取り巻く環境

 近年、オフィスを取り巻く環境は大きく3つのトレンドがある。1つ目はWORKFORCE、つまり従業員で、2020年には従業員の50%がミレニアルズ(生まれた時からPCやスマートフォンが身の回りに存在し、難なく使える世代)になると言われている(これは世界的に見た場合で、日本は高齢化が進む問題があるが)。その彼らに求められるのは、より高性能でかつスタイリッシュなデザインの製品である。

 そのための革新は既にHPの中で始まっているという。例えば2006年のHPのモバイルノートは、厚さが34.5mmで、重量が1,590gもあった。これが5年後の2011年でも、厚さが32.8mm、重量が1,670gとさほど変わっていない。ところがHP分社後、とことんデザインやスタイリッシュさを追求した製品を展開することが可能になり、最新のFolio G1では12.4mmの厚さと970gの軽量性を実現した。

 2つ目のトレンドはWORKPLACE、つまり働く場所で、モバイルコンピューティングにより、従業員はどこでも働けるようになる。そうすると端末のセキュリティや管理が重要になる。

 そこでHPのPCには、「HP Sure Start」と呼ばれる機能が搭載されており、例えばウイルスなどによりBIOSが破壊されてしまっても自動的に修復する機能を備えている。また、生体認証とパスワードを組み合わせられる他要素認証機能を搭載した第3世代の「HP Client Security Suite」、スマートフォンとの距離情報による認証機能を備え、スマートフォンからPCの温度や状況が確認できる「HP WorkWise」、Windows 7から10への移行をサポートする機能などを搭載し、セキュリティ性や管理性を高めることで、働く場所の制限という問題を解消している。

 3つ目のトレンドはWORK STYLE、つまり働き方で、先ほど述べた働く場所の制限をなくしたことで、他人とのコラボレーションを、PCなどを利用した電話会議で行なわなければならない時間が増えることになる。そのためには、時間や手間のかからない簡単なコラボレーション方法が求められる。

 そこでHPは、「HP Elite Slice」と呼ばれる新型の小型デスクトップPCを投入。モジュールをスタック可能なこのSliceシリーズは、天板をBTO時にカスタマイズできるようになっており、オプションで、「Skype for Business」に特化したタッチボタンを搭載した天板を用意している。会議がスケジュールで予約されている場合、天板のボタン1つで、30秒程度で会議に接続し、利用できるようになるという。

 また、Intel Unite 3.0を利用すれば、ケーブルなしで複数人で画面の共有が可能になるほか、オプションのオーディオモジュールをスタックすることで、360度スピーカーとデュアルマイクにより、電話会議に最適な通話環境を実現できるとした。

 日本HPのオフィスには、この「OFFICE OF THE FUTURE」を体験してもらえるよう、「カスタマー ウエルカム センター」を近日中に同社オフィス内に開設する予定だ。

デバイス事業のイノベーションプラットフォームは、デザイン、セキュリティ、コラボレーションの3つ
同社が既に発表しているイノベーティブな製品群
HP分社後、デザインは一気に良くなった
電話会議をはじめとしたコラボレーションに好適なHP Elite Slice
セキュリティの問題
同社製PCのセキュリティの対策
スマートフォンからPCを管理できるHP WorkWise
社内にOFFICE OF THE FUTUREを体験できるエンドユーザー向けスペースを開設

実はあの製品もHPの技術を採用

小池亮介氏

 プリンタも分社化後、日本HPが受け持つ事業の1つである。とは言えHPのプリンタ事業は今やオフィスや家庭向けのインクジェットといったエンドユーザーが実際目にする製品よりも、大型のポスターを出力したり、ランダムな絵柄を大量に印刷したり、少量出力に適したソリューションに転換しつつある。同社執行役員 デジタルプレスビジネス事業本部長の小池亮介氏が、その事業を解説した。

 例えばHP Latexインクと呼ばれる特殊なインクは、溶剤系インクとは異なり臭気が少なく、なおかつ素材を溶かさないため適用できるメディアが広く、環境性に優れたインクとなっている。他社の製品では、密閉した空間の中では、一定以上の面積を印刷すると室内の空気基準「GREENGUARD」を満たせなくなってしまう場合があるが、HP Latexインクだと満たせる場合があり、壁一面のデコレーションといった用途にも使えるという。

 また、インクジェットノズルを多数並べ、紙送りの動作だけで印刷できる「PageWideテクノロジー」は、高速でかつ低価格に大判の紙への出力が可能。先日、海図を印刷して現場に配布する海上保安庁に「HP PageWide XL8000」が導入されたという。

 また、2016年12月31日~2017年1月1日の渋谷スクランブル交差点で行なわれたカウントダウンイベント「“YOU MAKE SHIBUYA” COUNTDOWN 2016-2017」で使われた特別ボトルのラベル生産には、「HP Indigoデジタル印刷機」が使われた。大きな絵柄を1枚作成しておくだけで、印刷機側が自動的に絵柄を拡大/縮小/切り取りを行ない、ランダムに印刷することで、異なるパッケージデザインを実現したという。同等の技術は海外でも使われているという。

 2017年は、ダンボール印刷市場に「コルゲートインクジェット輪転機」で参入し、小ロットかつ可変ニーズに対応していく。例えば現在、製品ダンボールの外側には、シリアル番号やバーコードなどがラベルで貼付されており、デザインも同一のものが使われているが、インクジェット輪転機を採用すれば、シリアルやバーコードをそのまま印刷でき、1個1個異なるデザインのダンボールも実現可能。新たなビジネス市場を創出していくとした。

今更印刷? と思われるかもしれないが、同社のグラフィックビジネスは急成長している
同社のグラフィックス製品のポートフォリオ
液体トナーや3Dプリンタなどもイノベーションである
インクジェットを採用した輪転機
液体トナーの製品
サントリー美術館での採用例
環境に配慮したLatexインク
溶剤系とは異なり、印刷面への侵食が少ない
溶剤系だと発泡スチロールを溶かしてしまうが、HP Latexはそのようなことはない
海上保安庁での導入例
コカ・コーラでの採用事例
インクジェット輪転機
ダンボール市場にも進出する
海外ではチョコレートのパッケージ印刷にも採用された