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阪大ら、光ファイバー通信での量子メモリの読み書きが世界初実現

今回の原子量子メモリ実験

 大阪大学大学院基礎工学研究科、NTT物性科学基礎研究所、NICT未来ICT研究所、東京大学大学院工学系研究科らによる研究グループは17日、光通信技術を利用した量子メモリへの書き込み/読み出しを世界で初めて成功させたと発表した。

 現在のコンピュータの通信技術において、Webブラウザのキャッシュなど、メモリの果たす役割は大きく、効率的な通信のためには欠くことができない。量子情報通信においても量子状態を蓄える量子メモリの役割は大きく、現在までさまざまな実験が行なわれてきた。

 しかし、量子メモリの読み書きに使われる光の波長は可視光付近(780nm)であり、光ファイバー通信の近赤外(1.5μm帯)とは大きく異なる。そのため、量子状態は光に乗せて遠くに運ぶしか方法がなく、可視光付近の光はファイバー中を進むにつれて急速に失われ、長距離通信が不可能である。近赤外では約15kmまで半分の光子が残っているのに対し、可視光付近では10km進むと1,000分の1の光子しか残らないため、量子メモリは実現していても、その利用ができない状況だった

 同研究グループは、量子状態を壊さない高性能な波長変換器を非線形光学効果である和・差周波発生を用いて開発するとともに、冷却Rb原子を利用した量子メモリを開発。量子状態の書き込みと読み出し(モニタリング)に用いる可視光付近の波長780nmの光子を、光ファイバーで用いられる近赤外光(1.52μm)へ変換し、高性能な超伝導単一光子検出器(SSPD)を用いて検出することで、冷却Rb原子中の1原子の励起を通信波長光子の検出により明確に確認することに成功した。

 現在までに考えられている長距離量子情報通信システムのアーキテクチャは、各中継地点に分散した量子メモリの量子状態を光通信を使って交換するもの。本研究により、光ファイバー通信技術を利用して、この量子メモリ間通信を構築する新しいステージに進み、グローバルな量子セキュアネットワークへの研究の加速が期待できるとしている。

これまでの原子量子メモリ実験