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Intel、2020年までに深層学習性能を今の100倍にする計画

~GoogleとのAI開発での協業も発表

 Intelは、米サンフランシスコ市内で、AI(人工知能)戦略に関する記者会見“Intel AI Day”を行ない、マシンラーニング、ディープラーニングなどの新しいコンピューティングモデルを活用したAIを実現する同社の半導体、ソフトウェアに関する発表を行なった。

IntelがIA向けのソリューションに本腰を入れる。今後製品を拡充

 記者会見の冒頭で挨拶に立ったIntel CEOのブライアン・クルザニッチ氏は、「現在数十億のスマートデバイスがインターネットに接続されており、今後も増えていく。AIはそうしたスマートコネクテッドデバイスにとって非常に重要な技術。IntelはそうしたAIに向けた、完全なソリューションを一貫で提供しており、今後それを拡大していく」と述べ、さまざまなレベルでAI向けの半導体やソフトウェアなどを提供しており、IoTのデバイス向けとなる半導体(Atomプロセッサなど)、5Gに向けた通信ソリューション、クラウド側でマシンラーニングやディープラーニングに利用される半導体(XeonやXeon Phiなど)のクライアント、通信、サーバーといったIoTのエコシステム全体に半導体を提供できることが強みだと強調した。

Intel CEO ブライアン・クルザニッチ氏
IntelのAIビジョンについて説明
AIはIoT機器、通信、クラウド全てが動いて初めて成り立つソリューション
AIはまだ発達段階

 AI向けの半導体と言えば、一般的にはディープラーニングの学習用の演算などに利用されているGPUなどのパラレルな汎用プロセッサがよく知られている。しかし、実際にはディープラーニングは、マシンラーニングの1手法であり、CPUを利用したマシンラーニングも同じぐらい重要な要素となっている。CPU、特にクラウドサーバーでは、事実上IA(Intel Architecture、いわゆるx86)の一択で、マシンラーニングという大きな括りで見れば、Intelはマシンラーニングの市場では強い存在感を持っている。

 クルザニッチ氏は「ディープラーニングはもちろん重要だが、スモールセットだ。AIはスケーラブルなもので、GPUだけが性能を決めているわけではない」と述べ、IAのAIにおける重要性を強調し、今後Intelがこれまでよりも強くAIにコミットメントしていくと強調した。クルザニッチ氏は、ここ1年でIntelは、Saffron Technology、Movidius、Nervana SystemsなどのAI関連の技術を持つ企業を買収し、AI関連のポートフォーリオを増やしてきたことを語った。

Intelが買収したAI関連の企業
クルザニッチ氏とNervana System CEO ナビーン・ラオ氏
AIをより普遍的なものにしていく

 その上で、Nervana System CEO ナビーン・ラオ氏をステージに呼び、IntelとNervanaの今後の戦略について説明した。この中でクルザニッチ氏はNervanaの資産とIntelの従来の資産とを統合し、今後はAI向けの半導体やソフトウェアなどのプラットフォームを“Intel Nervana platform”として展開していくと語った。

AI製品はIntel Nervana platformとして展開していく
IntelがAIに本腰を入れていく

 クルザニッチ氏は「重要なことは信頼性だ。Intelは信頼性の高いAIのプラットフォームを今後も提供していく」と述べ、今後IntelがAIを重要なビジネスの1つとして捉え、力を入れていくという方向性を強調した。

2020年までに今の100倍上回る深層学習を性能実現するソリューションを投入

 クルザニッチ氏に続いて登壇したのはIntel 上級副社長 兼 データセンター事業本部 事業本部長のダイアン・ブライアント氏。ブライアント氏は「2020年にはAIに必要とされるコンピューティングパワーは今よりも12倍に拡大すると予想されている」と述べ、AIに必要な演算能力は増え続ける一方で、それに対処する必要があるとした。

Intel 上級副社長 兼 データセンター事業本部 事業本部長のダイアン・ブライアント氏
AIに必要とされる処理能力は増大していく

 その上で、Intelの新しいAIに向けた戦略の1つ目として、Googleとの協業について発表した。Googleは、AlphaGoやDeepMindのようなAIを開発し、ディープラーニングのフレームワークでトップシェアのTensorFlowを提供するなど、AIの世界ではトップを走っている。ブライアント氏に呼ばれ登壇したGoogleのGoogleエンタープライズ担当 上席副社長 ダイアン・グリーン氏は「Intelとはこれまでサーバー開発などで協力してきたが、次世代の開発も一緒にやっていく。TensorFlowをIAに最適化していくほか、ディープラーニングの学習などに関しても最適化していく。またIoTのセキュリティ確保でも協業していきたい」と述べ、IntelとAIの開発環境の拡充などで協力していくと述べた。

GoogleのGoogleエンタープライズ担当 上席副社長 ダイアン・グリーン氏
Googleと協業してAI開発を進めて行く
産業界だけでなく、アカデミックとも協業していく

 ブライアント氏は「2016年の終わりの時点での予測では、94%のAIのサーバーがGPUなしのIAサーバーとなっている。今後もAI向けのIAソリューションをどんどん強化していきたい」と述べ、Intelが提供しているIA向けの半導体製品を今後も積極的に拡充していくとした。そうしたAI向けのIntelの製品として、ブライアント氏はXeon E5、Xeon Phi、Xeon+FPGA、さらには今回新たに発表されたディープラーニング向けのアクセラレータの4つを挙げた。

AIを実現する要素
Intel Nervanaの製品群

 Xeon E5などのXeonプロセッサは、現在データセンターで利用されているクラウドサーバーの大多数で採用されているCPUとなる。ブライアント氏は、そのXeon E5の次世代版として同社が計画している“Skylake-EP”について触れ、初期開発版の出荷を開始したことを明らかにした。AVX512などの新しい命令セット、浮動小数点演算機能の拡張などによって性能が向上しており、Apache Sparkを利用すると性能は18倍にもなるという。なお、製品版は2017年の半ばの出荷を想定していると説明した。

Intel Xeon E5には新しい製品Skylake-EPが用意されている

 Xeon Phiに関しては、今年(2016年)発表したKnights Landingについて述べ、「Knights Landingでは現時点では最大32ノードまで接続でき、学習性能は31倍にもなる。また、メモリに関してGPUは16GBまでしか利用できないが、Knights Landingでは最大400GBまで利用することができる」と述べ、GPUに比べてスケールアウトと呼ばれる複数のノードを繋げて並列に実行していくことでさらに高い性能を実現できると強調した。また、8月に行なわれたIDFで発表した、次世代製品のKnights Millに関しても説明し、倍精度、単精度に加えて、半精度の浮動小数点演算のサポートなどにより、現行のKights Landingに比べて4倍のディープラーニングの性能を実現すると強調した。

Xeon Phiの特徴、Knights Millのディープラーニング性能は4倍に

 さらに、ブライアント氏は同社が買収したNervanaが開発してきたディープラーニング用の単体アクセラレータチップとして「LAKE CREST」(開発コードネーム)を発表し、2017年の前半に投入することを明らかにした。Xeonプロセッサとそのディープラーニング用のアクセラレータチップを統合した「Knights Crest」(ナイツクレスト、開発コードネーム)の計画も明らかにした(投入時期は発表がなかった)。その上でブライアント氏は「Intelは、ディープラーニングにかかる時間を、現在最速のGPUと比較して100分の1にしたソリューションを提供する」と述べ、Intelが現在のところディープラーニング学習では最速だと思われているNVIDIAのGPUに対して挑戦状を叩き付けた。

ディープラーニングのアクセラレータとしてLAKE CRESTを投入、その後Xeon+アクセラレータとなるKnights Crestを投入する。2020年までにディープラーニングの学習時間をGPUに比べて100分の1にする製品を提供