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金沢大学、シリコンに代わる高性能を秘めた「反転層型ダイヤMOSFET」を動作実証

反転層チャネルダイヤモンドMOSFET(左上)とその中の一素子を光学顕微鏡で拡大した画像(右上)、赤い破線部の断面模式図(下)

 金沢大学、産業技術総合研究所、株式会社デンソーらは22日、共同研究により世界で初めてダイヤモンド半導体を用いた「反転層型チャネルMOSFET」を作成し、動作実証に成功したと発表した。

 現状の半導体はシリコン(Si)を用いたものが多くを占め、反転層チャネルMOSFETやIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)といったパワーデバイスが電子機器に広く利用されている。しかし、シリコン半導体は性能限界が近付いており、SiC(シリコンカーバイド)半導体やGaN(窒化ガリウム)半導体といった熱伝導率や絶縁破壊電界などに優れるワイドバンドギャップ半導体が注目されている。

 ダイヤモンドを用いた半導体はSiCやGaNよりも熱伝導率や絶縁破壊電界が高く、シリコン半導体比で前者が14倍、後者は100倍の性能を備えている。そのため、大きな電圧や電流が必要とされる用途で省エネルギー化に繋がる材料として期待されている。

 これまでダイヤモンド半導体は、製造の難しさから良好なMOS構造を形成が困難とされてきたが、マイクロ波プラズマ化学気相成長法によってメタンや水素を活性化させ、高品質なダイヤモンド層を堆積させることを可能にし、ウェットアニールによる酸化膜およびダイヤモンド半導体の高品質化によって、反転層型ダイヤモンドMOSFETを作成することに成功した。

 これにより、ダイヤモンド半導体を用いたパワーデバイスが自動車、新幹線、飛行機、ロボット、人工衛星、ロケット、層は伝システムなどに導入され、省エネ・低炭素社会への貢献が期待されるという。今後は大電流化と高耐圧化を図るために、MOS界面の移動速度向上、ドレイン領域に耐圧層を設けるといった改良を行なうとしている。

 本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)および金沢大学が独自に行なう戦略的研究推進プログラム(先魁プロジェクト)「革新的省エネルギーデバイスの創製」の一環として実施されている。

ゲート電圧を変化させた時のドレイン電圧に対するドレイン電流の変化