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島根富士通で初のタブレット組み立て教室

~31組の親子が参加し、Rubyプログラミングも学ぶ

 富士通および島根富士通は、2016年8月6日、島根県出雲市の島根富士通において、小中学生の親子を対象にした「第11回富士通パソコン組み立て教室」を開催した。

 島根富士通は、ノートPCやタブレットなどを生産。メインボード製造から組み立て、出荷試験までの一貫生産体制を敷いており、同社によると、「日本一のパソコン出荷台数を誇る生産拠点」としている。

 今回は初めてタブレットの組み立てに挑戦。さらに、プログラミング学習については、島根県で生まれたソフトウェア言語「Ruby」を使用。「簡単なゲームを作成することで、今後のICT社会に必要なソフトウェアに関する基礎を学ぶ機会も提供。小中学生のモノづくりと、プログラミングを通して、ICT技術に対する興味や関心の育成、地域への社会貢献を目的にしている」と位置付けている。

 島根富士通の宇佐美隆一社長は、「今年(2016年)前半に島根県の地場企業の交流会に出席した際に、ソフトウェア関連企業の方とお話する機会があり、その時に今年の組み立て教室では、プログラミング学習をやろうと閃いた。それに合わせて、教育現場への導入が期待されるタブレットの組み立てを行なおうと決めた。今回の経験を活かして、子供向けだけでなく、シニア向けやミドル層向けといったプログラミング教室を開くことも考えたい。今後、富士通グループとも連携して検討していくことになるだろう」などとした。

 今回、組み立てたのは「arrows Tab WQ2/X(WEB MART限定モデル)」。防水・防塵機能に加えて、振動にも強い10.1型プレミアムタブレットで、OSにはWindows 10 Home(64bit版)を搭載。CPUにはAtom x5-Z8500(4コア/4スレッド/1.44~2.24GHz)、メモリは4GB、ストレージは64GBフラッシュメモリ搭載となっている。

 スリムキーボード付が60,000円、スリムキーボードなしが53,000円の特別価格で参加でき、組み立てたタブレットは検査後に自宅に配送される。クレードルは無料で提供した。

 会場には31組の親子が参加。当初は20組の募集としていたが、申し込みが多かったことから、申込者全員が参加できるようにした。学年別内訳は、小学校5年生が9組、6年生が4組、中学校1年生が4組、2年生が6組、3年生が8組。島根県内からの参加が25組のほか、福岡、大阪、広島、岡山、兵庫、鳥取からの参加もあった。男子が25人、女子が6人となった。

 午後1時から開始した組立教室で、島根富士通の宇佐美隆一社長は、「今年から趣向を変えた。もともとはモノづくり体験を通じ、モノづくりを理解しもらうことを目的としてきたが、昨今では、クルマの中にもソフトウェアが入っているように、単純にハードウェアを組み立てるだけではモノづくりとは言えなくなってきた。そこで今回は、作ったPCで、プログラミングを体験してもらうことにした。しかし、時間が限られているため、体験そのものがさわりの部分だけになる。つまり、お寿司に例えれば、しゃりの上に、用意されているネタを乗せるといったようなもの。だが、プログラミングの学習に興味を持ったら、家で、その先を進めることができる。今日をきっかけにモノづくりに興味を持ってもらいたい。多くの人が、プログラミングに興味を持つことは、日本の国にとってもいいことだと言える」と挨拶した。

第11回富士通パソコン組み立て教室
組み立て教室を開催した島根県出雲市の島根富士通
挨拶する島根富士通の宇佐美隆一社長
会場には島根県のキャラクターである「しまねっこ」も登場
しまねっこも参加者をお出迎え
作業をサポートするスタッフ。約70人の社員が手伝った
しまねっこが参加者にエールを贈る。同時にゆるキャラグランプリへの投票のお願いも

43点の部品を使って組み立てたタブレット

 組立作業は、午後1時25分頃から始まった。島根富士通としては、タブレットの組み立て教室を開催するのは初めてとなり、1組に1人のスタッフがついて、参加者の組み立てをサポートした。通常の組立では172点の部品を使うが、今回の組み立て教室では43点の部品(そのうちネジが4種類29本)を使用。約1時間をかけて組み立てたが、細かいケーブルの接続や配線処理が多かったり、防水仕様となっているために、ネジの数が多く、防水シートを取り付ける作業が加わるなど、例年より難易度の高いものとなった。

 生産工程では1台あたり約15分で組み立てるが、組み立て教室では約60分をかけて組み立てた。

エプロン、手袋、アースバンドなどが用意されている
組み立て方法はテーブルに1台ずつ設置されたタブレットでも示した
マザーボードを始め各種部品を搭載しているMカバー
フレキケーブル
液晶部分
eMMCボードやシール、スイッチ類の部品
バッテリ
防水シート
クレードル。ひとりひとりの名前が入った
まずはネジ締めの練習から
いよいよ本番開始。最初にMカバー
スピーカーケーブルを取り付ける
透明テープで固定する
ワイヤレスLANケーブルの接続
SDSIMボードへのフレキケーブルの接続。細かい作業が続く
これでMカバーへの搭載が完了
続いて液晶部分と接続
ここは親子での共同作業となる
フレキケーブルを次々と接続。液晶ディスプレイの接続ケーブル、デジタイザケーブル、タッチパネルケーブルを接続し、テープで固定
液晶部分とMカバーを合わせる
生産ラインではキャップを後から取り付けるが、組立教室ではキャップを先に取り付けており、そのため、一度キャップを取り外す。それによってキャップ部分が噛まないようにする
キャップカバーを取り外してからパチッというまで押し込む。防水になっているため、はめるのが堅い
Mカバーはネジを19本使って固定。防水仕様のためにネジの数が多い
ネジは防水のパッキンが付いている
四隅はパッキンが入っているため通常のネジで締める
パワースイッチキーを装着
続いてボリュームキーを装着
最後にアプリキーを装着
この3つのキーをキーホールドと呼ぶ部品で上から固定する
eMMCボードの取り付け
バッテリを取り付ける
バッテリのケーブルを接続
防水シートを取り付ける
しっかりと貼り付ける。これで水の侵入を防ぐ
組み立ての様子を見る島根富士通の宇佐美社長
開発、設計を統括する富士通クライアントコンピューティングの仁川進執行役員も関心を寄せる
背面のAカバーを取り出す
なんと顔写真と名前が入ったもの。組み立て教室開催直前に撮った写真がすぐに印字されていた。これも島根富士通ならではの印字サービス
Aカバーを取り付ける
バチっというまではめ込む。防水仕様のため、やはり力が必要だ
完成したタブレットに、全員で電源を入れる
無事に全員のタブレットが起動した

ネジ締め競争で匠と勝負

 続いて、午後3時からは、工場見学と工場体験を行なった。

 A棟1階の基板実装ラインの見学では、アームロボットやゲンコツロボットが、基板にCPUを実装したり、基板を分割してトレイに並べる自動化装置を見学。また、「匠とネジ締め競争」では、3人の匠の中からネジ締めの競争をする相手を電子ルーレットで選択。匠が20本のネジを締める間に、10本のネジを締めることができたら勝利となり、賞品をもらうことができた。

 さらに、富士通が持つ新たな技術を体験できる場を用意。3次元データを立体的に表示する体験型ディスプレイ「zSpace」や、フラットなディスプレイに触ると感触が伝わってくるタブレット、マーカーをタブレットのカメラで映すと、そこにはない画像が表示される仮想現実技術などを実際に体験することができた。

工場内の見学の様子
アームロボットが基盤にCPUや電池などを搭載
ネジ締め競争の様子
匠は10本以上のねじを20秒で締めることができる。工場では、1人1万本のネジを締めている
3次元データを立体的に表示する体験型ディスプレイ「zSpace」
パズルをしながらディスプレイに触ると感触が伝わってくるタブレットを体験
マーカーを映すとそこにキャラクターが登場する仮想現実
GP4と呼ぶツールを活用して人と機械が協調して作業する製造ラインを事前検証する様子を紹介

Smalrubyを使用したプログラミング学習

 また、午後4時からは、「プログラミング学習」を実施。Rubyをベースに、小学生でもプログラミングできるようにした「Smalruby(スモウルビー)」を使って、ゲームの開発などを行なった。

 Rubyは、島根富士通がある島根県の県庁所在地・松江市に在住する、まつもとゆきひろ氏が開発したものだ。また、今回のプログラミング学習の講師を務めた高尾宏治氏は、Smalrubyの開発者であり、まつもと氏と同じく松江市に在住。NPO法人Rubyプログラミング少年団の代表でもある。「はじめのいっぽ」と題した1日Rubyプログラミング体験教科書を使用して、クルマが追いかけっこするゲームプログラムの体験のほか、命令ブロックを組み合わせて自らプログラミングを行なうことで、Smalrubyによるプログラミングを学んだ。

 高尾氏は、「算数などのこれまでの学校の授業では、答えが1つであることが多いが、プログラミング学習の特徴は、答えがいくつもあり、どれが正しいというものはないという点。先生の言う通りにやるのではなく、自由な発想でプログラミングして欲しい。結果として、子供たちが、いろいろなことを考える材料にもなる。そこにプログラミング学習の魅力がある。プログラミングの楽しさを伝えていく活動をしていきたい」などとした。

午後4時からはプログラム学習を行なった
Smalrubyの開発者である高尾宏治氏が講師を務めた
マニュアルとして使用したオリジナルの「はじめのいっぽ」
Smalrubyの画面1
Smalrubyの画面2
Smalrubyの左上のRubyのボタンを押すと、Rubyのプログラムを見ることができる
子供たちは自分たちで作ったタブレットを使用し、プログラミングを体験した

第1回参加者が島根富士通の社員に

 教室終了後のアンケートでは、PCの組み立てについては、全員が「よかった」と回答。プログラミング学習は12人が「もっとやりたい」と回答。高い関心が集まっていることが分かった。

 島根富士通の宇佐美社長は、「今回は、モノづくりの原点に戻るということを前提に企画した。アンケートの結果からも、子供たちに喜んでもらうことができたと考えている。今回の経験を活かして、また来年(2017年)もモノづくり体験をしてもらえる企画として開催したい」と述べた。

 今回の組み立て教室では、第1回目のパソコン組み立て教室に参加した経験を持つ島根富士通の社員が挨拶するというシーンもあり、同社の取り組みが、モノづくり人材の育成に繋がっていることも裏付けられた。

全員で参加者を見送った
参加者を見送る宇佐美社長