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プログラミングとPCの製造を学ぶ「富士通パソコン組み立て教室」が開催
2016年8月1日 06:00
富士通および富士通アイソテックは、2016年7月30日、福島県伊達市の富士通アイソテックで、「第13回富士通パソコン組み立て教室」を開催した。
今年(2016年)は新たに「プログラミング教室」を実施。「デスクトップパソコンを実際に組み立てる『ものづくり体験』と、組み立てたパソコンを使いプログラムを行なう『プログラミング教室』を行なうことで、今後のICT社会に必要なソフトウェアに関する基礎を学ぶ機会も提供する。ものづくりとICT技術への興味を持ってもらう、社会学習の場にする」と位置付けた。
小学4年生が4人、5年生が4人、6年生が4人、中学1年生が4人、2年生が5人、3年生が1人の20組22人が参加(兄弟、姉妹が1組として参加した例が2組あった)。男子14人、女子8人の参加比率となった。伊達市内からの参加が10組。宮城県や栃木県からの参加者もいた。小学生には1人に1人のスタッフがサポート。中学生には2人に1人のスタッフがついた。
富士通アイソテックの岩渕敦社長は、「ここ数年参加者が減っており、昨年(2015年)は申し込み数が9組まで減少した。PC全体の出荷数が減少していることに加えて、デスクトップPCが家庭内で使われるケースが減ってきたということ、さらに、我々の開催手法がマンネリ化してきたという反省もあった。一時は開催を中止することも検討したが、新たな取り組みができるのであれば開催したいと考えた。これまでは会議室や体育館を使って開催していたが、今回は生産ラインを使って組み立ててもらうことで、現場で疑似体験が可能になった。また、新たにプログラミング教室を実施することで、2020年から小中学校の授業に盛り込まれるプログラミングの学習を、先駆けて体験してもらえる。さらに、教育委員会と連携して、地元への告知活動を広げた。その結果、26組の応募があり、新たに伊達郡の国見町、桑折町からも参加があった。プログラミングに対する関心の高さを感じた。従業員には、地域貢献のための目玉イベントとして、準備を進めてもらった」と語る。
開催日は、土曜日であったが、生産ラインを稼働させており、6本あるPCの生産ラインのうち、2本の生産ラインを使って組み立て教室を実施。残り4本の生産ラインが、実際に稼働していていた。実際の生産を行なっている横で教室を開催したのは、他社のパソコン組み立て教室を含めても、初めての機会となった。
午後1時から開始した組み立て教室の開会式で挨拶した富士通アイソテックの岩渕敦社長は、「今日の組み立て教室をぜひ楽しんで帰ってもらいたい。今回は、実際の生産ラインで組み立てを行なってもらうように企画した。また、プログラミング教室は今後小中学校に導入されるものを先取りしたものであり、最先端の教育を体験できる。夏休みの良い思い出を、持って帰って欲しい」と語った。
実際の組立は、午後1時20分頃から始まった。
組み立てたPCは、23型液晶ディスプレイを搭載した一体型デスクトップPC「FMV ESPRIMO FHシリーズ」。富士通アイソテックで生産されるPCは、地名にちなんで「伊達モデル」と呼ばれるが、今回、組み立てた製品も伊達モデルとなる。
参加費用は無料。組み立てたのは、量産試作品を組み立て教室用に分解したものであり、希望者には組み立てたPCと同じPCを、特別価格で販売した。PCを購入する場合は、TVチューナー搭載の有無が選択でき、搭載モデルは93,000円、非搭載モデルは83,000円。参加者のうち、3人がPCを購入した。
今回は、生産ラインを使用したこともあり、参加者が作業する場所の間隔が広く、従来のように教室形式で、全員が同じペースで組み立てを行なうことができない環境。そのため、それぞれの参加者がスタッフと一緒になって、自分のペースで作業を行なう仕組みとしていた。これも同社としては初の取り組みになった。
では、組み立ての様子を写真で見てみよう。
組み立てが終わった参加者から、工場見学を行ない、実際に作っている様子を見学した。電動ドライバーなどを使って、手際よく作業している様子に驚いていた参加者の姿もあった。さらに、富士通アイソテックが開発した金属溶解3Dプリンタや、工場内で使用しているゲンコツロボットのデモンストレーションも見学した。
金属3Dプリンタは溶融金属積層方式を採用しており、粉末金属積層方式に比較して、装置価格やランニングコストとなる材料費を低減できる点が特徴だ。切削加工では、素材から加工する際に多くの部分が切粉として廃棄され、材料と加工時間の無駄が生じているが、この仕組みは金属ワイヤー先端からのアーク放電により金属ワイヤーを溶融し、これを積層することによって造形するため、材料費が安く、造形時間が短い。今後の普及が期待されるものだ。
実際の生産ラインの様子と、金属溶解3Dプリンタなどを写真で見てみる。
金属溶解3Dプリンタなどの見学
一方、午後3時からスタートしたプログラミング教室は、「小学生から始めるわくわくプログラミング2」(日経BP社刊)の著者である倉本大資氏が講師となり、MITメディアラボが開発したプログラミング言語学習環境「Scratch」を使って、プログラムを学んだ。
Scratchの利用者が全世界で約1,300万人に達していることなどを紹介。「うさんくさいプログラミングを勉強しているわけではない」などとジョークを飛ばしながら、スプライトと呼ばれるネコを回転させたり、大きさを変えたりする指示をプログラミング。完成した作品はUSBメモリに保存してそれぞれが持ち帰った。約1時間20分ほどの教室だったが、子供たちは強い関心を寄せながら、プログラミングの楽しさを学んでいた。
プログラミング教室の開催に合わせて、地元自治体の教育関係者も見学に訪れていた。
伊達市教育委員会教育長の湯田健一氏は、「これまでは情報モラルなどの教育が中心となり、PCを使う時間を制限するような指導が多かった。だが、今日のプログラミング教室において、子供たちが関心を持って取り組んでいる様子を見て、ICT教育に向けてのヒントを得た。教育委員会においては、2020年からのプログラミング授業の導入において大きな不安を抱えているのが事実。幸いにも伊達市には富士通アイソテックがある。協力を得て、新たな教育カリキュラムに向けた準備をしていきたい」とコメント。
伊達郡国見町教育委員会教育長の岡崎忠昭氏も、「教員が高齢化する一方で、若い教員も学生時代にプログラミングをやっていないケースがほとんどである。今日のプログラミング教室の様子を見て、硬い内容ではなく、楽しみながらできるということが分かった。教員にもこうした機会を体験させたい」と語り、今回のプログラミング教室の見学を通じて、授業に向けたヒントと今後の対応にも手応えを感じたようだ。
富士通アイソテックの岩渕社長は、「子どもたちへのプログラミング教室の実施だけでなく、教える教員を対象にした教室の実施など、何かしらの形で教育委員会に貢献していきたい」と語った。
例年に比べて、充実した内容となった今回のパソコン組み立て教室。地元の教育関係者に対しても、ヒントと手応えを与えるという副次効果も発揮されたイベントとなった。