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富士通アイソテックの生産ラインとリサイクルラインを見学
(2015/2/23 13:04)
富士通は、福島県伊達市の富士通アイソテックにおいて、デスクトップPCの2,000万台出荷達成記念式典を開催したのに合わせて、同工場におけるデスクトップPCの生産ラインの様子や、子会社であるエフアイティフロンティアのリサイクルラインの様子も公開した。
富士通アイソテックは、1994年12月から個人向けデスクトップPCの生産を開始。1999年からは企業向けデスクトップPCの生産を開始しており、2015年1月16日には、個人向け、企業向けを合わせたデスクトップPCの累計出荷台数が2,000万台に達した。
2003年からトヨタ生産方式による生産革新運動を開始しており、それをベースとしたFJPS(Fujitsu Production System)により、効率化による競争力維持と、品質向上を両立。生産革新運動開始直後の2004年に比べて、PCの製造手番は80%削減。生産性は3.8倍に向上するといった成果のほか、不良率は半減するといった成果が出ているという。
現在、富士通製の国内向けデスクトップPCは、個人向けおよび企業向けの全てが富士通アイソテックで生産されている。
デスクトップPCの生産が行なわれているのは、富士通アイソテックのE棟だ。E棟の2階フロアに、デスクトップPCの生産ラインを6本、PCサーバーの生産ラインを5本設置。元々は1階フロアにPCサーバー、2階がデスクトップPCの生産ラインを配置していたが、FJPSを通じた生産革新の取り組み成果の結果、1フロアでの生産体制の構築につながっている。
1フロア化の効果は、部材供給の効率化、生産の効率化でも意味がある。
例えば、富士通アイソテックでは、PCサーバーの生産ラインではデスクトップPCの生産を行なうことも可能で、需要変動に合わせてラインの増減が行なえるようになっているのが特徴だ。
昨年(2014年)前半は、Windows XPのサポート終了と、消費増税前の駆け込み需要が重なり、デスクトップPCの需要が増大。それに合わせて、PCサーバーの生産ラインで、デスクトップPCを生産するといったことも行なっている。これも1フロア化の成果の1つだ。
一方で、BCP(事業継続性)の観点から、ノートPCの生産を行なっている島根県出雲市の島根富士通との間で、双方で同じ製品が生産できる体制を確立している点も見逃せない。
実際、2011年3月の東日本大震災では、富士通アイソテックが被災。震災発生から12日後には島根富士通で、デスクトップPCの代替地生産を開始したという実績もある。
両工場では、その検証のために、双方でお互いの担当製品の生産をするといった取り組みを定期的に行なっており、その際には、富士通アイソテックでノートPCを生産することになる。
そのほか、カスタムメイドプラスサービスを提供しているのも富士通アイソテックの特徴の1つだ。
情報システム部門では、大量のPCに業務ソフトやドライバなどのセットアップを行なうことに時間を要するという課題があるが、これを事前に富士通アイソテックの生産ラインで設定およびインストールし、現場ではPCの設置だけを行なうことが可能になるというサービスである。
特定の作業者しか入れないシステム構築センター内に、それらの作業を行なうエリアを設置。BIOS設定、利用者個別の環境設定、ソフトウェアのインストール、ユーザー企業のロゴ印刷、ラベル作成などのほか、梱包を簡易化するリターナブル集合梱包も行なう。
これにより、ユーザー企業にとっては、迅速で、低コストでのPC導入が可能になるというわけだ。
また、環境にも配慮した工場である点も特徴だ。環境保全システムにより、省エネ管理を実践。環境リファレンスのモデル工場にもなっている。
デスクトップPCの工場の様子を見てみよう。
一方、富士通アイソテックの子会社であるエフアイティフロンティアが運営しているのが、富士通東日本リサイクルセンターである。
企業や家庭から排出された使用済みPCを始めとするICT機器の産業廃棄物処理を行なう拠点で、資源の再利用に向けて重要な役割を担っている。実際、資源再利用率は90%以上という高い値を実現している。
富士通では、業務用ICT製品のリサイクル拠点として8カ所、家庭用パソコンのリサイクル拠点として3カ所を持つが、富士通東日本リサイクルセンターは、東日本地区のリサイクルを担当。全体の7割を処理するという中核拠点だ。
富士通東日本リサイクルセンターは、富士通アイソテックの敷地内にあるが、独立した形で門扉とフェンスで仕切られたエリアに配置。警備システムによる24時間監視体制のほか、作業状況は全てモニタリング。HDDなどの記憶媒体を処理する部屋には、特定の登録作業者だけが入退出できるようなIDカードでの管理を行なっている。
ここまで徹底した管理を行なっているのには理由がある。
「適正な処理を行なうために、受け入れ数量を全て管理。また、データが漏洩しないように、HDDなどは決められた作業者だけが責任をもって、機能を破壊し、情報漏洩を防止している。廃棄したはずのPCが海外などに流出し、同時に情報漏洩してしまうといった問題もあるが、富士通という名のもとで、国内において、徹底した管理体制の下で処理が行なえるようになっている」(エフアイティフロンティア・加藤信男取締役)という。
家庭用廃棄PCについては、リサイクル状況をユーザー自身が確認できるトレーサビリティシステムのサービスも提供している。
業務で使用されたPC、サーバー、プリンタなどは、入庫時点で重量を計測するとともに、ロットナンバーで管理。その後、リサイクル工場内へと入庫する。
最大の特徴は入庫後に手作業によって、分解、分別作業が行なわれる点だ。
金属部品やケーブル類、プリント基板、ディスプレイ、ポリ袋、発泡緩衝材などを分解し、鉄、銅、プラスチック、アルミ、ガラス、フィルムなどに分別。プラスチックは破砕や溶解によってペレット化して、プラ材メーカーなどを通じてプラスチック原料として再利用。廃プラスチックは、製鉄所での高炉原料として利用される。プラスチックだけでも、約20種類に分類して処理されるという。また、鉄やステンレス、アルミなどは金属メーカーで再利用、電子部品などからは貴金属回収が行なわれる。ブラウン管などのガラス部は、ガラス原料として再利用される。
HDDに関しては、穴あけ破壊を行ない、提携したアルミ精錬業者を通じて、国内で溶かしてアルミや鉄に再生。さらに、要望によっては強力な磁気によってデータを破壊するといった作業も行なう。SSDやメモリの破壊装置も導入しているほか、磁気テープやCDなどは切断や粉砕で破壊するという。
「手分解により、資源再利用率を向上させていることに加え、HDDなどの記憶媒体は徹底した管理体制のもと、100%破壊処理を行ない、情報漏洩させない形で処理できることが特徴。富士通アイソテック全体として、製品の誕生から再生までを担う、循環型社会を形成する一翼を担っている」(加藤取締役)としている。