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コンシューマにも法人にも攻勢をかけるHTCのVR HMD「Vive」

~お台場VR Zoneでは「ボトムズ」体験アトラクションがオープン

Vive

 HTCがSteamと共同開発したVR HMD「Vive」がコンシューマにも法人ユーザーにも国内で一気に攻勢をかける。7日に行なわれた発表会はそんなことを印象づけるものだった。

 製品自体は2015年に発表され、日本でも既に4月から出荷が開始されており、それから3カ月が経過しての今回の正式発表は、異例とも言える。なぜ同社は改めて発表会を開催したのか? 発表会で壇上に立ったHTC本社北アジア統括代表取締役のジャック・トン氏は、7月7日を「特別な日」と呼んだが、それは店頭での体験と販売の体制が整ったからだ。

HTC本社北アジア統括代表取締役のジャック・トン氏

 日本では、株式会社ドスパラ、株式会社Project White TSUKUMO、株式会社ユニットコムが正式販売パートナーとなり、3社の36の店舗で取り扱いを開始する。店頭には在庫も置かれるため、注文から到着まで数カ月かかる競合のOculus Riftに対して大きな優位性を持つ。取り扱い店舗数は、順次増やす。

 また、株式会社デジカとの協業により、それらの店舗での実体験を予約するシステムも構築した。Vive取扱店には、体験コーナーも設けられており、予約を行なうと、その時間までに店舗側で準備を整えておくため、スムーズに体験できる。一部店舗では、緑色の壁で囲まれた特別な体験スペースも設置する。ここでユーザーがViveを体験すると、外部ディスプレイにゲーム内の画面とユーザー自身の姿が合成表示され、第三者からも体験の内容をより直感的に把握できるという具合だ。VRは体験して始めてその面白さが分かるため、これは非常に重要な施策と言える。

店頭販売開始時点の店舗
ショップごとの地域店舗数の内訳
一部のショップに展開されるグリーンバックの特別体験スペース
外部ディスプレイには、ゲーム内の映像とユーザーが合成されて表示される
通常の体験スペースはこのような感じになる

 Viveは、ヘッドマウントディスプレイとワイヤレスコントローラ、レーザートラッキングセンサーで構成される。このレーザートラッキングセンサーにより、最大で4.5m四方の空間の中でユーザーは自由に歩き回ることができ(ただし、HMDからはケーブルが伸びている)、mm単位でトラッキング可能という。HTCでは、Oculus RiftやPlayStation VRが上半身の動き程度しかトラッキングできないことに対する大きな優位点だと強調する。

 一般家庭で4.5mのクリアな空間をVive用に用意するのは大変だが、コンテンツの作りにも依存するものの、着席型のコンテンツにも対応可能だとする。

 3月の予約開始以降、直近まで税別価格は111,999円だったが、今回の発表に合わせ、99,815円に値下げされた。HTC NIPPON代表取締役社長の玉野浩氏によると、10万円を切ることでユーザーの購入意欲が大きく変わるため、値下げに踏み切ったという。

HTC NIPPON代表取締役社長の玉野浩氏
一部屋丸々使ったVR体験ができるのが優位点
ViveはHMD、コントローラ、トラッキングセンサーで構成。価格は税別99,815円(資料の99,800円は間違い)

 ただし、それでも周辺機器で10万円というのは個人には大きな出費だ。店頭での体験や、購入ができるようになったことで、ある程度普及に弾みがつくと思われるが、現時点では購入するのは一部のハイエンド層に限られるだろう。

 HTCでは、コンシューマだけでなく、法人向けの採用に向けても攻勢をかけている。発表会では、バンダイナムコ、コロプラネクスト、電通、大日本印刷、グリー、スクウェア・エニックスの代表者がゲストに招かれ、自らのVive採用例を紹介した。

 バンダイナムコが期間限定で運営しているお台場の「VR Zone Project i Can」は4月からViveを使ったVRアトラクションを提供しているが、7月15日から「装甲騎兵ボドムズ バトリング野郎」を題材にしたVRシミュレータが稼働することが発表された。詳細は、GAME Watchの記事を参照されたいが、ボトムズのコックピットに座り、その動きとも連動した迫力あるバトルが楽しめるとしている。

 電通では、池袋のサンシャイン60で「SKY CIRCUS」を展開。Viveを使ったVR展望台という新しいジャンルを開拓する。ユーザーは、未来の東京の名所巡りや、空中ブランコを体験できる。

VR Zone Project i Canのアトラクションに「装甲騎兵ボドムズ バトリング野郎」が追加
サンシャイン60には、「TOKYO弾丸フライト」というアトラクション

 このほかHTCでは、開発者向けのサポートプログラムも実施。また、VR開発者とベンチャーキャピタルをマッチングさせるためのファンディングサポートも行なっている。

 HTC本社VR新技術部門担当VPのレイモンド・パオ氏によると、すでにVive向けに5,000人以上の開発者が開発を行なっており、Steamストアには310以上の対応タイトルが公開されている。

 Viveを初めとしたVRが普及することで、現在はエンターテイメントを主体としたコンテンツも、今後は、複数のユーザーが同じVR空間で映画やスポーツなどを視聴したりする新たなソーシャル体験や、3次元を直感的に理解できる特徴を利用した新たな教育など、さまざまな発展が考えられると述べた。

HTC本社VR新技術部門担当VPのレイモンド・パオ氏