やじうまミニレビュー

「割り勘計算は任せろー(ポチポチ)」。今更だがデータバンクを買ってみた

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
BDC32-1A

 前々回、“チープカシオ”の中で比較的スタンダードな「A168WA-1」を紹介したのだが、チープカシオの面白さはスタンダードモデルだけに留まらない。電話帳や計算機能を搭載した「データバンク」シリーズも、今や3,000円程度で手に入るチープカシオの仲間だ。

 データバンクシリーズの歴史は1984年まで遡る。この時発売された「データバンク テレメモ10 CD-40」が、世界初の情報を保存できる腕時計であるとされている。資料が少ない上に、いかんせん筆者が1歳の時に発売されたものなので詳細は分からないのだが、名前から想像するに10件の電話番号を保存できたと思われる。

 最盛期はおそらく1980年代後半から2000年代ぐらいだろうか。歴代モデルの一覧はケータイWatchの記事に掲載されているが、これを見ると手書き認識や二層液晶を搭載するなど、このシリーズはとにかく尖ったモデルが多いことが分かる。今回ご紹介する「DBC32-1A」も、データバンクの仲間だ。購入価格は3,168円だった。

2つの世界を行き来できる時計機能

バッテリは10年持つ

 Apple Watchのようなスマート腕時計デバイスが続々と登場する中、今更DBC32-1Aの特徴はなんですか? と言われれば、時計としての電池の持ちの長さに尽きる。Apple Watchは持ってもせいぜい2日だろうが、DBC32-1Aは余裕の10年。つまり1,825倍長時間駆動だ。子供が産まれたと同時にDBC32-1Aを買ったとすれば、子供が小学校4年生に上がるまで電池は持つ計算だ。その頃Apple Watchの内蔵電池はきっと使い物になっていない。

 ただそれを除けばごく普通のデジタル時計。オートカレンダー付きで年数、日付、曜日を表示してくれるので、書類などを書く際に「今日は何月何日だっけ」ということを人にイチイチ聞かなくても、手元を見るだけで良い。さすがにApple Watchのような汎用性はない。

 ちなみに時計の時間調節は手前のテンキーパッドを使う。側面の左上の「ADJUST」ボタンを長押しして調節モードに入ったら、側面の左下の「MODE」ボタンで前の数字、右下の「AC,12/24H」ボタンで次の数字に移動し、テンキーで直接数字を入力する。この辺りは直感的だ。

 面白いのは「デュアルタイム」機能で、これはタイムゾーンにとらわれず、現在の時刻とは全く別の時刻をセットしておける(ただし時間と分だけで、日付や秒は調節できない)。デュアルタイムはモードで切り替えて見られるほか、時刻表示モード時に「÷キー(<REV/TIME)」を押している間だけ表示することもできる。

 基本的に海外出張時に現地の時間をセットしておくものだろうが、タイムゾーンの概念にとらわれない特徴を活かした活用法も可能だ。例えば恋愛シミュレーションゲーム「ラブプラス」において、現実時間と時間をずらしていた場合、ゲーム内の時間をDBC32-1Aのデュアルタイムとしてセットしておけば、簡単に“あちらの世界”の時間が確認できる。これで、リアルタイムモードで寧々さんとの大切なデートを約束をすっぽかすことはなくなる。

 このほか、5本までセットしておけるアラームと、ストップウォッチ機能も付いている。アラームは1番のみスヌーズ機能付きで、月日を指定したアラームが可能なのも特徴だ。一方ストップウォッチモードは、1つだけスプリットタイムが記録できる。説明はほぼ不要だろう。

時間に加え、年/月/日や曜日も表示する。曜日表示は3文字で、前々回取り上げたA168WA-1より分かりやすい
デュアルタイムはタイムゾーンの概念にとらわれずに自由に設定できる
アラーム機能
最大5件までセットできる
月日を指定したアラームも可能なので、将来的に1回だけ起きるイベントにも対処できる
ストップウォッチ機能

とっさに思い出せない番号に、電話帳機能

 時計モードの次のモードは電話帳だ。最大8つのアルファベットや記号、および15桁の数字を記録できる。日本国内では電話番号が11桁なので、ハイフン3つを入れても足りる。国際電話番号が付いたとしても問題なくカバーできるだろう。

 入力方法は、アルファベット入力が「÷キー(<REV/TIME)」および「+キー(TEL/FWD>)」で選んで入力し、MODEおよびAC,12/24Hボタンで左右移動。数字入力がテンキーを利用する。慣れればスムーズに入力できるし、最大25件なので迷ったとしても大した作業量ではないだろう。表示は上8桁が大きく、下7桁が小さい。このため続けて入力するよりも、スペースやハイフンを駆使して入力した方が見やすい。

 公衆電話から電話を掛ける時代ならまだしも、手元にスマートフォンがあるこの時代、わざわざデータバンクに番号を入れて参照するメリットは皆無に等しい。ところがスマートフォンの利便さ故に、自宅や会社の固定電話の電話番号をわざわざ覚える人もいなくなってしまった。かくいう筆者も自宅の固定電話の番号を覚えていない。しかしなんらかの申し込み手続きの時に、何かと必要になったりするものだ。

 そんな時データバンクに自宅などの固定電話番号を入れておけば、スマートフォンで「えーっと……」などと言いながらホームから電話帳アプリを起動して検索したりスクロールしたりしなくても、手元ですぐに参照できる。時計モード時でも「+キー(TEL/FWD>)」を押せば、最後に参照した電話番号を一発で表示できるからだ。

 ただデータバンクにはパスワードを掛ける機能がない。盗難にあったりすると、電話番号も漏れなく盗難されることになるので、くれぐれも注意されたい(まぁ、3,000円の時計を盗む人もいないと思うが)。

電話帳機能。8文字のアルファベットと電話番号を25件記録できる
数字の大きさが異なるため、このようにスペースやハイフンをうまく活用した方が見やすいだろう

割り勘計算にも最適? な電卓機能

 最後に紹介するのは、やはり本機の最大の特徴であるテンキーをフルに活用した電卓機能だ。と言っても基本的に説明不要、8桁の四則演算機能を備えたシンプルな電卓機能である。電卓起動中も左下に現在時刻を表示している辺りは、時計としてのこだわりが感じられる。

 それではつまらないので、ちょっとしたTipsを紹介しよう。大きな数字の掛け算などで8桁を超えてしまい最後に「E」と出た場合、オールクリア(AC)ボタンを押さない限り、ほかの操作を受け付けなくなる。本機のみならずほかの電卓も共通だと思うのだが、実はこれは桁が溢れたから内部でバッファオーバーフローしてエラーを出して操作を受け付けられなくなった、というわけではない。表示されている数字に小数点があると思うが、その小数点がより左側が億の桁、右側が1,000万の桁だ。これは液晶表示が8桁しかできない制限からくるもので、下数桁が削られて表示されているほか、それ以降計算しても小数点演算になるので意味を成さないため、いったん計算を中止させているだけである。計算の答えは出ているのだ。

 もう1つ本機に搭載されているユニークな機能は「定数計算」だ。分かりやすく言えば、1つの数値を使いまわして計算することで、キーの入力回数を抑える機能のことである。例えば数字の5を3回使い回して四則演算を行ないたいとしよう。

加算キー入力結果減算キー入力結果
初回9+55++9=1498-55--98=93
2回目12+512=1745-545=40
3回目44+544=4922-522=17
乗算キー入力結果除算キー入力結果
初回35×55××35=17595÷55÷÷95=19
2回目22×522=11040÷540=8
3回目91×591=45522÷522=4.4

 このように、定数の後に計算記号を2回入力することで、2回目以降は数字と等号(=:イコール)を入れるだけで計算できるため、特に桁数の多い数字では入力回数を減らせる。注意されたいのは減算と除算で、定数「を」引いたり割ったりするものではなく、定数「で」引いたり割ったりするものなので、入力順とは逆の計算結果になる。また、「定数を色んな数字で引いたり割ったりしたい」という計算には向かないということになる(もちろん、マイナス数にして足し算にしたり、割る数を小数点付きで掛け算に変換すれば一応可能だが……)。ちなみにこの機能はWindowsやOS X、iOSの標準電卓にもない機能である。

 もう1つ注目したいのは両替機能。電卓モード時にもう1回ACすると切り替えられる機能なのだが、ADJUSTボタンの長押しで固定のレートを設定できる。例えば、執筆時点でのドル/円レートは1ドル108円なので、「×108」を設定しておく。その後--例えば499ドルのビデオカードはいくらか--を計算したい場合、499と入れて=を押すだけで、すぐに約53,892円だと結果が出るようになる。逆に70,000円のビデオカードが米ドルでいくらかを知りたい場合は、レートに÷108を入力して計算すれば良い。

 外貨交換にはもちろん有効な機能なのだが、製品発売関連のニュースをよく書く筆者としては、「×1.08」をセットしておいた。これなら、税別表記が出た場合でも、すぐに税込み価格を計算できるようになる。

 現在、多くのAndroidスマートフォンではロック画面ですぐに電卓を起動するようカスタマイズできるし、iPhoneもロック画面でもコントロールセンターですぐに電卓を呼び出せるようになったため、外出先でわざわざデータバンクで計算するメリットは薄いかもしれない。しかし友達数人で集まった飲み会の割り勘計算で、「あ、割り勘計算なら俺やるわー」と積極的に挙手しつつ袖をめくり、おもむろにデータバンクで計算すれば、時計の話題で盛り上がること間違いなしだ(妄想)。

電卓機能
ごくごく普通の電卓である
通貨換算機能
例えば1ドル108円の場合、このように「×108」と登録しておくと、後は金額と=だけを押せば自動的に換算してくれる

あ、基本的なこと言い忘れた

 PC Watchらしく機能面ばかりフォーカスしてきたが、そもそも時計として使い勝手やデザインはどうかを説明し忘れるところだったので説明したい。

 まずデザインだが、テンキーが付いていることもあって唯一無二だと言える。初期の携帯電話をギュッと詰めたような感じで渋い。相変わらず「Multi Lingual」や「ILLUMINATOR」といった機能説明の印刷があり、チープカシオならではの“レトロフューチャー感”がある。高機能だからといって筐体がゴイツといったことはなく、時計としては常識的な“ビッグフェイス”の部類に入る。

 筐体はケースがプラスチック、バックがステンレス製で、バンドはポリウレタン製。高級感はないが、デジタル機器っぽさはかなりある。バンド調節用穴が開いている方のバンドの先はやや膨れ上がっており、バンド留めからの抜けを防止する。ライトはフロント式でアンバー色。視認性は高くないので、時間確認用だろう。腕が40度傾けられたことを検出し、自動でライトを点灯するモードも備える(これは電池節約のため、6時間で自動的にオフになる)。

 本体が軽く、カーブもしているため腕にフィットする。液晶の視野角は、上から見ると薄く、やや下から見た時が一番コントラスト比が高くて視認性が良い。テンキーのキートップ(?)はややカーブがかっており、各々が独立して三角形の突起をつけている。おそらく押しやすくするための工夫なのだが、キー自体が小さいため、結局爪を立てて力を入れてゆっくり押す必要がある。この辺りは小ささとのトレードオフだ。防水や耐衝撃については謳われていないので、取り扱いは注意したい。

 ちなみにこのモデル、日本国内向けに出荷/販売されているものではなく、海外逆輸入の製品である。Amazonで逆輸入品を取り扱ってくれるお店が普通にあるのはありがたい。付属する説明書は英語だが、カシオの説明書のダウンロードページで「2888」を検索すれば、日本語版もダウンロードできる。

 国内向けのデータバンクは現在、ステンレスバンドの「DB-360-1AJF」と、樹脂バンドの「DB-36-1AJF」の2モデルのみ。いずれもテンキーや計算機能を備えておらず、電話番号を30件登録できるだけだ。価格は2,000円からと安価だが、機能面ではBDC32-1Aの方がワンランク上である。今やすっかりスマートフォンにその地位を奪われたデータバンクシリーズであるが、ファッションや懐古、そしてデータバンクファン(いるかどうかは不明だが)のためにも、開発や販売を継続していただきたいものだ。

製品パッケージ
中にはスタンドごと収納されていた
逆輸入品のため、付属マニュアルは英語
ポリウレタン製のバンドに、プラスチック製のケース。チープ感はある
バンドの先は盛り上がっており、バンド留めからの抜けを防ぐ
「く」の字がたに曲げられており、腕にフィットする
ボタンは階段状だ。狙いやすいが、反応は鈍い
ライトはフロント式で、あまり明るくない
黒い服装とよく似合う
またカシオペアとのカシオ“ペア”で使ってみた。あ、でも後ろのデバイスがあるなら手前はいらないか(笑)

(劉 尭)