山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ

Windows 7とiPadのイイ関係



 ディスプレイの低価格化、家庭用TVやノートPCへのHDMI端子標準装備など、Windowsのマルチディスプレイ環境がより身近なものになってきている。今回は、複数のディスプレイをPCに接続したときの使い勝手について見ていくことにしよう。

●iPadをWindowsのディスプレイとして使う

 iPadアプリでうらやましく思っていたものの1つが「Air Display」だ。1,200円と、ちょっと高価だが、それだけの値打ちがあると思っていた。これは、iPadを無線LAN経由で2台目以降のディスプレイにするためのユーティリティだ。実用になるかどうかは別にして、iPhoneやiPod touchでも使えるという。TwitterのTLを表示させるくらいの用途なら実用になるかもしれない。iPadの画面サイズなら十分以上に役にたつはずだ。

 うらやましかったというのは、このソフトが登場以来、Macでしか使えなかったからだ。ところが、いつのまにか、まだベータながら、Windows用ユーティリティがリリースされ、PCでも使えるようになっていた。

 アップルのAppストアでAir Displayを購入してダウンロード、iPadで実行すると、開発元のWebサイトを示すインストラクションが表示される。そのサイトをPCのブラウザで開き、Windows用のをダウンロードして実行、促される通り、PCを再起動すれば準備は完了だ。

 ユーティリティは通知領域に常駐する。そのアイコンをクリックすると、Air Displayを実行中のデバイスとしてiPadにつけた名前が表示されるので、それを選択すると、iPadが2台目のディスプレイとして機能するようになる。

ディスプレイの位置関係はWindowsの標準設定ではなくユーティリティで設定する。iPadの位置をドラッグ操作で決めておく

 残念なのは、Aeroがオフになってしまう点だ。またせっかくのマルチタッチデバイスなのに、Windowsは知らん顔だ。ビデオの再生では、ウィンドウをiPad側に持って行ったところで動画は静止してしまう……などなど、いろいろと不満点はあるものの、テキストベースのアプリケーションなら問題はないし、ブラウザではFlashを含めて、問題なくコンテンツを再生できるようだ。もちろんYouTubeのようなサイトもOKだ。一般的な動画がうまく再生できないのは、ネットワークの帯域幅等の問題ではなく、別の理由によるものだと考えられる。

 改めて、iPad上でWindowsの表示を見ると、そのレンダリングがいかに汚いかがよくわかり、ちょっと失望してしまう。また、スクロールするときに、つい、iPadを使っている気になって画面をフリックしてしまうのだが、ここでもWindowsはただのドラッグとして認識し、画面の文字列等が選択されてしまう。それでも、700g程度のデバイスでこのサイズ、ワイヤレスで使えるセカンドディスプレイというのはうれしい存在だ。

 ちなみに、マルチディスプレイ環境といっても、Windows標準の仕組みを使っているわけではなく、デスクトップを右クリックして「画面の解像度」のディスプレイ表示の変更では追加のディスプレイとしては出現しない。メインに使っているディスプレイとの位置関係の設定は、ユーティリティ側で行なう必要がある。その代わりというわけではないが、iPadを回転させたときには、表示もそれに追随してくれる。

 当たり前の話だが、タッチ操作のみならず、キーボードやマウスでの操作も可能だ。ワイヤレスのマウスやキーボードを使えば、隣の部屋のPCの画面をリビングルームに延長して持ってくるような使い方だってできそうだが、Windowsでは、ダイアログボックスがメインのディスプレイにポップアップしたりすることもよくあるので、そのあたりの不便は覚悟しておいたほうがいい。ミラーモードなどが用意されていれば、より実用的に使えるだろう。今後のバージョンアップに期待したい。

Air Displayのディスプレイは、Windowsの標準的な設定画面には出現しない
常駐している通知領域のアイコンを右クリックするとショートカットメニューが表示される
iPadのロテートにも対応する。壁紙の関係でわかりにくいが、左側のディスプレイはiPadでポートレートだ。

●覚えておくと便利なショートカットキー

 最新のビデオカードでは、3つ以上のデジタル出力を持つものも少なくないし、ノートPCでもHDMIでセカンダリディスプレイへの出力ができる。Windows 7のマルチディスプレイ環境だが、デスクトップを右クリックし、ショートカットメニューから「画面の解像度」を開くと、ディスプレイに関する設定ができる。ここでは個々のディスプレイに対して、解像度、向き、そのディスプレイの振る舞いなどを決めておく。特に、ディスプレイの向きを設定できるようになったのはWindows 7からだ。

 マルチディスプレイ環境では、複数のディスプレイのうち、1台をメインのディスプレイに設定し、他のディスプレイはデスクトップの拡張か、複製に使う。「拡張」はデスクトップのあるメインディスプレイを延長するものだし、「複製」はメインディスプレイと同じ内容を表示する。したがって、解像度は低い方に依存する。

 マルチディスプレイ環境においても、ウィンドウの最大化は、そのウィンドウが存在するディスプレイに閉じた形で実行される。また、タスクバーはメインディスプレイ以外にも移動させることができる。ディスプレイをまたいでウィンドウを表示させたい場合は通常のドラッグ操作でウィンドウサイズを変更する必要がある。

 また、ディスプレイをまたいだウィンドウの移動は、通常の移動と同じように、タイトルバーをマウスでドラッグすればいい。Windows 7では、例えウィンドウが最大化されていたとしても、タイトルバーをドラッグしようとした途端に、ウィンドウが元のサイズに戻る。そのまま別のディスプレイに移動させる際に、この仕様は便利だ。

 さらに、Windowsキーを押しながら、方向キーを叩けば、最初の1回で、アクティブウィンドウが現在のデスクトップの端にデスクトップのちょうど半分を占有するサイズにリサイズされ、その状態でもう1度同じキー操作をすると隣のディスプレイに移動する。最初から隣のディスプレイにウィンドウを移動したいなら、Shift+Windows+方向キーのコンビネーションを使えばいい。

 例えば、家庭用のTVにノートPCをHDMIケーブルで繋いだ場合などは、手元の液晶ディスプレイでスライドショーの設定などを準備万端整えたところで、そのウィンドウを、TVの大画面に、キー操作で飛ばすといった使い方ができる。同様に、冒頭で紹介したAir Displayなどは、少人数でのプレゼンテーションなどで、iPadの画面を相手に向けておいて、手元からスライド画面を飛ばすようなイメージになる。

 なお、ディスプレイが2台のみの場合は、Windows+Pのショートカットを覚えておくと便利だ。これは、2台目のディスプレイをどう振る舞わせるかを決めるためのショートカットで、コンピュータのみ、複製、拡張、プロジェクターのみを、その場で選択することができる。本来は、ノートPCにプロジェクターを接続したときのためのもののようだが、TVに接続したような場合にも便利なはずだ。

Windows+Pのショートカットは2台目のディスプレイの接続時に使うと便利

●何かと便利なマルチディスプレイ環境

 マルチディスプレイ環境では、フォルダからフォルダへのファイルのコピー時にも、デスクトップ上でウィンドウサイズを細かく調整せずにコピー元、コピー先の様子が把握できるので、操作ミスも少なくなるはずだ。また、ブラウザやAdobe Readerなどで資料を参照しながら、ワープロソフトでレポートを書くといったときにも便利だ。さらに、サブのディスプレイとして、メールソフトやTwitterのタイムラインを表示させておくという使い方もできるだろう。パレットの多いアプリでは、操作パレットをセカンダリディスプレイに置くという使い方も重宝する。

 また、TVなどHDMIを使って接続した場合は、音声をTVに出力させた方がいいことも多い。メーカー製のPCでは、このあたりを考慮して、HDMIでの出力を検知すると、デフォルトの音声出力をHDMIに切り替えるものもあるようだが、そうならない場合は手動で音声の既定出力先を変更する必要がある。こちらは、通知領域のスピーカーアイコンを右クリックし、サウンドの再生タブで指定すればいい。

 ノートPCをネットワーク経由でディスプレイとして使うソリューションとして、個人的に「MAXIVISTA」というユーティリティを使っていたことがあった。WDDMとの相性の点でVista以降疎遠になっていたのだが、この原稿を書くにあたって開発元のサイトを参照してみたらWDDMにも対応した上、iPad用のユーティリティもできあがっていることを知った。今回は紹介できないが、改めて試してみた結果をお知らせするようにしたい。ただし、現時点で、Aero、タッチ操作には未対応とのことだ。