笠原一輝のユビキタス情報局

VIAが「Nano Dual Core」を2011年第1四半期に投入
〜その性能をベンチマークプログラムでチェック



VIA TechnologiesのNano Dual Core

 VIA TechnologiesのNanoプロセッサは、特に中国などの成長市場などで低価格デスクトップPCや低価格ノートPCのプロセッサとして、日本などの成熟市場ではMini-ITXマザーボードなどにオンボード搭載で低価格向けやSFF(Small Form Factor)向けのプロセッサとして採用されている。そのNanoに、いよいよデュアルコア製品が登場する。

 同社のプロセッサは、子会社であるCentaur Technologyが開発している。Nanoプロセッサのベースとなるコアとして、2008年にIsaiah(イザイア)/CNA(Nano 2000シリーズ)、続く2009年にCNB(Nano 3000シリーズ)を投入してきた。そして、そのCNBをベースにデュアルコア化したものが「CNC」で、CNCを採用する初の製品が「Nano Dual Core」である。

 Nano Dual CoreはTSMCの40nmプロセスルールを利用して製造され、2011年の第1四半期にOEMメーカーなどに向けて提供。早ければ2011年の前半中にもOEMメーカーなどから搭載製品が出荷される見通しであるとVIA Technologiesでは説明している。

●CNA、CNBとして進化してきたNanoプロセッサ、CNCでついにデュアルコアへ

 2008年に発表されたNanoプロセッサ 2000シリーズは、Isaiah/CNAコア(別記事参照)と呼ばれ、VIAのx86プロセッサとして初めてOut of Order(分岐予測などに基づき命令の順番を入れ替えて効率よく実行する方式のこと)に対応するとともに、浮動小数点演算性能が大きく改善された(詳しくは以前の記事を参照)。

 2009年には、CNBのコードネームで開発された改良版をNano 3000シリーズとして投入した(別記事参照)。Nano 3000シリーズでは、新たにSSE4への対応、AMD-V互換の仮想化機能への対応が追加された。

 今回VIAが明らかにしたのは、CNCのコードネームで開発されてきた「Nano Dual Core」と呼ばれる製品で、CNBをベースにダイレベルでデュアルコアを実現した製品となる。資料によれば以下のような特徴を持つ。

・CNB(VIA Nano 3000シリーズ)ベースのデュアルコア
・128KB(命令64KB+データ64KB)のL1キャッシュ(各コア)
・1MBのL2キャッシュ(各コア)
・x86命令互換、SSE4互換、AMD-V互換
・従来のNanoプロセッサ(CNA/CNB)とピン互換

 VIAはCPU内部の構造を公開していないが、スペックなどから想像するに、CNBコアを2つつなげた形のデュアルコアであると考えることができる(ただし、ネイティブのデュアルコア)。現時点では、製品ごとのクロック周波数やTDPなどの構成は公開されていないが、同社によれば、TDPはほぼ従来製品と同じ枠に収まる見通しだという。

●DirectX10.1に対応したGPU統合型チップセットVN1000との組み合わせで提供される

 今回筆者は、同社から1.8GHzで動作するNano Dual Coreのエンジニアリングサンプル(ES品、テスト用のサンプルのこと)を入手したので、早速ベンチマークを行なってみたいと思う。

 すでに述べたように、Nano Dual Coreの製品版はTSMCの40nmプロセスルールを利用して生産されるが、このESは、従来同社が利用していた富士通の65nmプロセスルールを利用して製造されており、実際の製品として出荷されるNano Dual Coreとは、ダイサイズや消費電力などは異なっている。

 入手したNano Dual CoreはBGAチップで、同じくエンジニアリングサンプルのマザーボード上に実装されている。「VT8591B」の型番がつけられたこのマザーボードは、チップセットとして「VN1000」が採用されている。VN1000は、VIA Chrome 520と呼ばれるS3のグラフィックスを統合したチップセット。VIA Chrome 520は、いわゆるDirectX 10.1(Direct3D 10.1)とOpenCL 1.0に対応し、MPEG-4 AVC/VC-1のハードウェアデコード機能を内蔵するなど、統合型チップセットとして必要な機能をすべて搭載していると言ってよい。GPUのストリームプロセッサ数は32基となっている。VN1000のメモリコントローラは、デュアルチャネルのDDR2/DDR3両対応で、VT8591BはDDR3-1066対応になっていた。

 サウスブリッジには「VT8261」が採用されている。VT8261は12ポートのUSB、4ポートのSATA2ポート(3Gbps)などというスペックになっている。

Nano Dual CoreのCPU-Zによる表示 Nano Dual Coreを搭載したテストマザーボードのVT8591B。CPUは1.8GHz駆動品。このサンプルは65nmプロセスルールで製造されている

●Atom D510を30〜60%程度上回る性能

 ベンチマークの比較対象として用意したマザーボードは、Atom D510(Pineview-D、デュアルコア、1.66GHz)を搭載したIntelの「D510MO」。メモリはDDR2-800のシングルチャネルまでの対応となるが、Atomマザーボードとしてはこれが標準的となる。テスト環境は以下の通りだ。

【表】テスト環境
  Nano Dual-Core 1.8GHz Atom D510(1.66GHz)
マザーボード VT8591B Intel D510MO
CPUコア/スレッド 2C/2T 2C/4T
メモリ DDR3-1066/2GB DDR2-800/2GB
グラフィックス VIA Chrome 520 Intel GMA3150
HDD WD10EACS
OS Windows 7 Ultimate 32bit(英語版)

 利用したベンチマークは、BAPCo SYSmark 2007 Preview 1.06、FuturemarkKの3DMark06、3DMark Vantage、PCMark05、MAXONのCineBench R11.5。また、アイドル時とCineBench R11.5実行時のピーク消費電力も計測した。

 Microsoft OfficeやAdobeの編集ツールなどを利用して、PCの反応速度などを計測して相対的な性能差を計測するBAPCoのSYSmark 2007 Previewでは、総合スコアでAtom D510の1.3倍近い数字を叩き出した。最新のCore i7などでは余裕で200を超えるスコアを叩き出すので、それと比ぶべくもないが、この結果からは、オフィスアプリケーションなどでは特に不満を感じることはないと思われる。詳細結果を見ていくと、マルチスレッド処理に対応し、コア数が結果に大きな影響を与えるVideoCreationなどでよい結果を残しており、マルチスレッドアプリケーションで効果が大きいことが伺える

【グラフ1】SYSmark2007 Preview 1.06 Rating
【グラフ2】SYSmark2007 Preview 1.06内訳

 DirectX 9(Direct3D 9)に対応したベンチマークプログラムである3DMark06では、総合スコアで10倍以上のスコアを叩き出している。ただし、CPUだけの結果であるCPU Scoreは35%アップに留まり、ほとんどはVN1000の内蔵GPUの恩恵によるものだ。

【グラフ3】3DMark06総合
【グラフ】3DMark06 CPU Score

 DirectX 10(Direct3D 10)に対応した3DMark Vantageのテストは、Atom D510のGPUであるGMA 3150がDirectX 10に対応していないため、こちらでは実行することができなかった。このため、あくまで参考結果ということになる。

【グラフ5】3DMark Vantage

 CPUの演算能力を演算するPCMark05/CPUでは、Atom D510に対し約60%増しの結果ということになった。このテストでは純粋にALUの演算性能を計測しているので、CPUの性能差が最もわかりやすいテストだと言える。

【グラフ6】PCMark05 CPU

 CineBench 11.5のCPUテストは、CPUを利用してレンダリングを行なうことで、CPUの処理性能を計測する。このテストでもAtomに対して約44%の差をつけた。

【グラフ7】CineBench 11.5 CPU

 消費電力のテストでは、システムレベル(つまり電源供給ユニット)での消費電力を計測している。このため、この消費電力にはチップセットや内蔵GPU、HDD、メモリなどの電力も含まれる。結論から言えば、現時点のエンジニアリングサンプルは、Atom D510に消費電力ではまったく敵わないといってよい。ピーク時の消費電力は倍以上になっており、アイドル時と高負荷時の差から、プロセッサだけで40W近く消費していると推測できる。

 ただし、すでに述べたように今回筆者が入手したNano Dual Coreは、本来の製造プロセスルールではない65nmプロセスルールで製造されたES版であり、製品版では40nmに微細化されて製造される。このため、製品版のCPUのTDPは、1.8GHzのモデルで25WになるとVIAでは説明している。

【グラフ8】消費電力(システムレベル)

 参考までに、Windows 7のエクスペリエンスインデックスの結果も掲載しておく。

Nano Dual Core 1.8GHzのWindows 7 Experience Index
Atom D510のWindows 7 Experience Index

●デュアルコア化で魅力が増すSFF向けプロセッサ

 以上のように、現時点では消費電力に関しての結論は製品版へ持ち越さないといけないものの、性能に関してはすでにデュアルコアのAtomを凌駕しており、今回テストしていないが、ULV版のCore 2 Duoに十分匹敵する性能を秘めていると言うことは可能だろう。

 価格やSKUなどは明らかになっていないが、VIA Technologies 副社長のリチャード・ブラウン氏によれば「デュアルコア製品は現在のシングルコア製品と同じようなTDP、SKU構成で、価格帯もほぼ同じになる。ターゲットになるのは現在Nanoが採用されている低価格ノートPCや低価格デスクトップPC、チャネル向けのマザーボードなどになる」とのことで、現在Nanoが採用されているような製品の置き換えになると考えていいだろう。

 日本では、Mini-ITXなどの小型マザーボードに搭載された製品をまず目にするということになるだろう。価格にもよるが、シングルコアと同程度のTDPで、Atomを超える性能を実現できるのであれば、SFF向けプロセッサとして、その魅力はますます高まるだろう。

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(2010年 11月 2日)

[Text by 笠原 一輝]