多和田新也のニューアイテム診断室

6コア最上位モデルを更新する「Phenom II X6 1100T Black Edition」



 AMDは12月7日、Phenom IIシリーズとして最上位モデルとなる「Phenom II X6 1100T Black Edition」を発表した。6コア製品投入から7カ月余りを経て、初の最上位モデル更新となる本製品のパフォーマンスをチェックしてみたい。

●リビジョンそのままのクロックアップ版

 Phenom II X6 1100T Black Edition(写真1、以下X6 1100T)はその製品名からも分かる通り、6コアCPUの新製品となる。主な仕様は表1の通りだ。定格クロックは3.3GHzと、Phenom II X6 1090T Black Edition(以下X6 1090T)から100MHzの向上。モデルナンバー末尾の「T」の文字が示す通りTurbo CORE対応で、有効時の最大クロックはX6 1090Tの3.6GHzから3.7GHzへ引き上げられている。

 TDPもX6 1090Tと同じく125W。また、CPU-Zの結果を見比べても分かる通り、X6 1090Tと同じリビジョン「E0」が用いられており、純粋に動作クロックだけを引き上げた最上位モデル更新となる。

 その意味では順当な進化と呼べる製品であり、パフォーマンス面でも素直な性能向上が期待できる。その性能をベンチマークで確認していく。

【表1】Phenom II X6 1100Tの主な仕様
  Phenom II X6 1100T
Black Edition
Phenom II X6 1090T
Black Edition
Phenom II X6 1075T Phenom II X6 1055T
OPN HDE00ZFBK6DGR HDT90ZFBK6DGR HDT75TFBK6DGR HDT55TWFK6DGR
動作クロック
(Turbo CORE時)
3.3GHz(3.7GHz) 3.2GHz(3.6GHz) 3.0GHz(3.5GHz) 2.8GHz(3.3GHz)
L1データキャッシュ 64KB×6
L2キャッシュ 512KB×6
L3キャッシュ 6MB
HT Linkクロック 2.0GHz
TDP(最大) 125W 95W

【写真1】Phenom II X6 1100T。OPNは「HDE00ZFBK6DGR」となる 【画面1】Phenom II X6 1100TにおけるCPU-Zの結果 【画面2】Phenom II X6 1090TにおけるCPU-Zの結果

●従来モデルからパフォーマンス向上を確認

 それではベンチマーク結果を紹介していく。テスト環境は表2の通りで、今回は従来モデルであるX6 1090Tのみを比較対象とし、その性能向上度合いを確認することにする。

 なお、CPU製品のベンチマークにおけるビデオカードであるが、1年ほどRadeon HD 5870を用いてきたが、今回よりGeForce GTX 580へ変更している。また、機材繰りの都合により、電源ユニットも本コラムでメインに用いているものと異なっている。

【表2】テスト環境
CPU Phenom II X6 1100T
Phenom II X6 1090T
チップセット AMD 785G+SB710
マザーボード ASUSTeK M4A785TD-V EVO
メモリ DDR3-1333(2GB×2/9-9-9-24)
グラフィックス機能
(ドライバ)
GeForce GTX 580
(GeForce Driver 263.09)
ストレージ Seagete Barracuda 7200.12 (ST3500418AS)
電源 CoolerMaster RealPowerPro 1000W
OS Windows 7 Ultimate x64

 まずはCPUおよびメモリ周りの性能から見ていきたい。テストはSandra 2011bのProcessor Benchmark(グラフ1)、PassMark Performance TestCPU Test(グラフ2)、Sandra 2011bのCache & Memory Benchmark(グラフ3)である。

 性能の伸び具合にはテストによって多少ばらつきがあり、PassMarkにおいてはX6 1090Tのほうが良い結果になっているものもあるが、おおむね1.01〜1.03倍程度の性能となっている。定格クロックでは約1.03倍の伸びであるのに対して、Turbo CORE有効時は1.027倍程度となる。そのため、Turbo COREの効き具合によってX6 1090T比では1.03倍の演算性能を安定して発揮することができなかったのではないかと見られる。

 キャッシュ性能は1.03〜1.04倍近く、定格クロックの伸び率に近い分かりやすい結果が出ている。

【グラフ1】Sandra 2011b (Processor Arithmetic/Multi-Media Benchmark)
【グラフ2】PassMark Performance Test 7 (CPU Test)
【グラフ3】Sandra 2011b(Cache & Memory Benchmark)

 続いて、実際のアプリケーションや3D関連のベンチマークテストを見ていきたい。テストはSYSmark 2007 Preview(グラフ4)、PCMark Vantage(グラフ5)、CineBehch R11.5(グラフ6)、POV-Ray(グラフ7)、HD動画のエンコード(グラフ8)、3DMark Vantage(グラフ9、10)、Far Cry 2(グラフ11)、Lost Planet 2 Benchmark(グラフ12)である。

 PCMark Vantageの一部や3D関連のベンチマークでX6 1100Tに優位性が出ていない結果も見られる。特にPCMark VantageのMusicテストは、詳細な結果を見るとWMVからWMAへのロスレス圧縮処理で性能が伸び悩んでおり、誤差が大きいテストとはいえ、クロック差を逆転できる程度の差しかないということは言える。

 ただし、ほとんどのテストではX6 1100Tが良好な結果を示している。CineBenchやPOV-RAYが分かりやすいが、シングルスレッドでもマルチスレッドでもより高いスコアをマークしており、定格クロックだけでなくTurbo CORE有効時のクロックも引き上げられたことに意味があることを感じさせる結果といえるだろう。

【グラフ4】SYSmark 2007 Preview
【グラフ5】PCMark Vantage Build 1.0.1
【グラフ6】CineBench R11.5
【グラフ7】POV-Ray v3.7 beta 39
【グラフ8】動画エンコード(HD動画)
【グラフ9】3DMark Vantage Build 1.0.2 (CPU Test)
【グラフ10】3DMark Vantage Build 1.0.2 (Graphics Test)
【グラフ11】Far Cry 2(Patch 1.03)
【グラフ12】Lost Planet 2 Benchmark

 最後に消費電力のテストである(グラフ13)。アイドル時の動作クロックはX6 1100T/1090Tともに800MHzであることから同等の消費電力に落ち着く。

 ロード時の消費電力は、これまでの本コラムにおける結果に比べ、CineBench R11.5に対するエンコード時の消費電力が高めであるが、デコード処理におけるGeForce GTX 580のアクセラレーションが働いたためと見られる(もちろんエンコード処理はCPUが行なっている)。結果は、同じプロセスで動作クロックが上がったこともあり10W程度の増加が見られる。熱設計の面では同じ両製品ではあるが、多少の電力増を覚悟する必要はありそうだ。

【グラフ13】消費電力
【お詫びと訂正】初出時に一部のグラフに於いて1100Tと1090Tの内容が逆転しておりました。お詫びして訂正させていただきます。
●1つの選択肢としての最上位モデル

 以上、駆け足ながらPhenom II X6 1100T Black Editionのベンチマーク結果を紹介した。一部にはX6 1090Tからの向上があまり見られないテストもあるが、多くのテストでスコアを伸ばしており、同じマイクロアーキテクチャ、同じプロセスルールでクロックが上がったことのメリットを感じることができる。

 店頭価格は24,980円が参考価格として提示されており、価格がこなれたX6 1090Tに比べると3,000〜4,000円ほど上の価格帯ということになりそうだ。よって製品選びは、この価格差と性能差に対するユーザーの価値観が大きくなるのではないだろうか。

 すでにX6 1090Tを使用している人にとって、この性能価格差であれば、アップグレードパスとして捉える人もいれば、X6 1090Tを使い続ける選択肢もあるだろう。また、新規に組む場合でも、価格が安いX6 1090Tを選ぶ手はある。

 本製品は、6コアCPUながら25,000円を切る普及価格帯の製品というPhenom II X6シリーズの大きな魅力は維持しているといえる。最上位モデル更新というよりも、X6シリーズに、価格/性能のバリエーションが増えたという点を歓迎したい。