多和田新也のニューアイテム診断室

PhenomコアAthlonの新製品
「Athlon X2 7850 Black Edition」



 AMDは4月28日、デュアルコアCPUの新製品「Athlon X2 7850 Black Edition」を発表した。2008年末にリリースされたAthlon X2 7000シリーズにおいて、最高動作クロックとなる2.8GHzで動作するモデルだ。Black Editionの名のとおり倍率ロックも解除されている。本稿ではこの製品のパフォーマンスを見ていく。

●Kumaコアを使った純粋な高クロックモデル

 Athlon X2 7850 Black Edition(以下、Black EditionをBEと表記)の主な仕様は表1にまとめたとおりである。昨年末に登場したAthlon X2 7750 BE同様、65nm SOIのPhenomのアーキテクチャを用いたデュアルコアであるKumaコアを用いたもの。もちろん、これはSocket AM2+パッケージの製品であり、このところ続いたSocket AM3製品ではない。

【表1】Athlon X2 7000シリーズの主な仕様


Athlon X2 7850 Black Edtion Athlon X2 7750 Black Edtion Athlon X2 7550 Athlon X2 7450
OPN AD785ZWCJ2BGH AD775ZWCJ2BGH AD7550WCJ2BGH AD7450WCJ2BGH
リビジョン Rev.B3 Rev.B3
動作クロック 2.8GHz 2.7GHz 2.5GHz 2.4GHz
L1データキャッシュ 64KB×2 64KB×2
L2キャッシュ 512KB×2 512KB×2
L3キャッシュ 2MB 2MB
HT Linkクロック 1.8GHz 1.8GHz
動作電圧(Single-Plane) 1.20〜1.25V 1.20〜1.25V
周辺温度(最大) 73℃ 73℃
TDP(最大) 95W 95W

 同じコアが使われていることから、キャッシュのスペックなどに変化はなく、リビジョンも同じB3が使われている。純粋なクロックアップ製品と思って間違いない。

 製品のOPNもAthlon X2 7750 BEのモデルナンバー部分が書き換わっているだけであり、仕様上の共通点の多さを実感できるだろう(写真1)。CPU-Zの結果ではピーク時の動作電圧は1.32V。アイドル時は動作クロックが1.4GHzで動作電圧が1.032Vとなっている(画面1、2)。

【写真1】Athlon X2 7850 Black Edition 【画面1】CPU-Zの結果。Rev.B3のKumaコアで、2.8GHz動作していることが分かる 【画面2】Cool'n'Quietにより、アイドル時には1.4GHz/1.032Vまで落ちている

●デュアルコア3製品で性能比較

【写真2】AMD 790FX+SB600を搭載する、MSI「K9A2 Platinum」

 それではベンチマーク結果の紹介に移る。テスト環境は表2に示したとおり。Athlon X2 7850/7750 BEを、ともにSocket AM2+マザーである「K9A2 Platinum」(写真2)へ搭載し比較した。この性能向上度合いを中心にチェックしていきたい。

【表2】テスト環境

CPU Athlon X2 7850 Black Edition
Athlon X2 7750 Black Edition
Core 2 Duo E7200
チップセット AMD 790FX+SB600 Intel P45+ICH10R
マザーボード MSI K9A2 Platinum ASUSTeK P5Q PRO
メモリ DDR2-800(1GB×2,5-5-5-18)
ビデオカード NVIDIA GeForce GTX 280(GeForce Release 182.50)
HDD Seagete Barracuda 7200.11(ST3500320AS)
OS Windows Vista Ultimate Service Pack 1

 併せて、Intel製CPUとの比較を目的にCore 2 Duo E7200を用意した。Athlon X2 7850 BEの価格帯はPentium Dual-Core E5400/5300あたりと同等になると見られるが、今回これらのCPUを手配できなかったため、手元にあった本CPUを使用した。Pentium Dual-Core E5400/5300に比べてクロックは低いが、FSB帯域幅とL2キャッシュで優位性のあるスペックとなるので、性能傾向は異なるが、参考程度にはなるだろう。

 では、順に結果を見ていくことにする。まずはCPUベンチマークである。テストはSandra 2009 SP2のProcessor Arithmetic/Processor Multi-Media Benchmark(グラフ1)、PCMark05のCPU Test(グラフ2〜3)だ。

【グラフ1】Sandra 2009 SP2(Processor Arithmetic/Processor Multi-Media Benchmark)
【グラフ2】PCMark05 Build 1.2.0(CPU Test−シングルタスク)
【グラフ3】PCMark05 Build 1.2.0(CPU Test−マルチタスク)

 Athlon X2 7750/7850 BEの動作クロックは、約3%の差があるわけだが、結果も3%ほどAthlon X2 7850 BEが良いスコアになった。まずは理屈どおりの演算性能向上が得られていることが分かる。

 Core 2 Duo E7200との比較では、多少の得手不得手はあるものの、PCMark05のCPUテストでは似たようなスコアに落ち着いており、同等程度を持っていることがうかがえる。

 メモリ性能をチェックするためのテストは、メモリアクセスの実効速度をチェックするSandra 2009 SP2のCache & Memory Benchmark(グラフ4)と、PCMark05のMemory Test(グラフ5)。メモリのレイテンシをチェックするSandra 2009 SP2のMemory Latency Benchmark(表3)、PCMark05のMemory Latency Test(グラフ6)である。

【グラフ4】Sandra 2009 SP2(Cache & Memory Benchmark)
【グラフ5】PCMark05 Build 1.2.0(Memory Test)

【表3】Sandra 2009 SP2 Memory Latency Benchmarkの結果詳細

Random Access Athlon X2 7850 BE Athlon X2 7750 BE Core 2 Duo E7200
1kB 3clocks/1ns 3clocks/1ns 3clocks/1ns
4kB 3clocks/1ns 3clocks/1ns 3clocks/1ns
16kB 3clocks/1ns 3clocks/1ns 3clocks/1ns
64kB 3clocks/1ns 3clocks/1ns 16clocks/6ns
256kB 18clocks/6ns 17clocks/6ns 18clocks/7ns
1MB 70clocks/25ns 70clocks/26ns 19clocks/7ns
4MB 317clocks/113ns 308clocks/114ns 157clocks/62ns
16MB 336clocks/120ns 326clocks/121ns 262clocks/103ns
64MB 355clocks/127ns 345clocks/128ns 286clocks/112ns
Linear Access Athlon X2 7850 BE Athlon X2 7750 BE Core 2 Duo E7200
1kB 3clocks/1ns 3clocks/1ns 3clocks/1ns
4kB 3clocks/1ns 3clocks/1ns 3clocks/1ns
16kB 3clocks/1ns 3clocks/1ns 3clocks/1ns
64kB 3clocks/1ns 3clocks/1ns 14clocks/5ns
256kB 13clocks/5ns 13clocks/5ns 14clocks/5ns
1MB 28clocks/10ns 27clocks/10ns 14clocks/6ns
4MB 59clocks/21ns 57clocks/21ns 36clocks/14ns
16MB 59clocks/21ns 57clocks/21ns 37clocks/14ns
64MB 59clocks/21ns 57clocks/21ns 37clocks/14ns

【グラフ6】PCMark05 Build 1.2.0(Memory Latancy Test)

 キャッシュ速度に関しては過去に実施したテストに似た傾向である。すなわち、同じセグメントのAthlon X2(Phenomコア)とCore 2で比較すると、L1キャッシュ同士ではCore 2が高速で、L2キャッシュ同士ではAthlonが高速、AthlonのL3キャッシュへのアクセスが始まると、Core 2のL2キャッシュの速度メリットが表れる格好となる。

 実メモリへのアクセス速度では、Athlon勢が良好な結果だ。ただ、書き込み性能でCore 2環境(Intel P45)の優位性が出ており、レイテンシもCore 2環境のほうが良好な結果となっているあたりが影響している可能性はありそうだ。

 ここからは実際のアプリケーションを用いたベンチマークテストの結果を見ていきたい。テストは、テストはSYSmark 2007 Preview(グラフ7)、PCMark Vantage(グラフ8)、CineBench R10(グラフ9)、動画エンコードテスト(グラフ10)である。PCMark Vantageのゲーム関連テストでCore 2 Duo E7200が確実にハングアップするという現象が発生したため、一部のテストを割愛している。

【グラフ7】SYSmark 2007 Preview(Ver. 1.05)
【グラフ8】PCMark Vantage Build 1.0.0.0
【グラフ9】CineBench R10
【グラフ10】動画エンコード

 結果を見ると、Athlon X2 7750 BEに対して安定した性能向上を確認できる。同一コアのクロック上位モデルなので当然ではあるのだが、3%という大きいとは言えないクロック差ながらも、確実な性能向上が得られるのは喜ばしいことだ。

 一方でCore 2 Duo E7200とはテストによって性能の入れ替わりが激しい。面白いところでは、SYSmark2007のVideo CreationとPCMark VantageのTV and Moviesはどちらも動画操作が中心のテストになるが、前者はAthlon、後者はCore 2がわずかに良い結果を見せる。また、同じくSYSmark2007のProductivityとPCMark VantageのProductivityも似たようにオフィスアプリケーションによるデータ処理のテストとなるが、前者はCore 2、後者はAthlonが良好な結果となる。さらには、動画エンコードにおいてもコーデックによって入れ替わる。それほどに両製品の性能は拮抗状態にあるといえる。

 続いては3D関連ベンチマークの結果である。テストは、3DMark 06/VantageのCPU Test(グラフ11)、3DMark VantageのGraphics Test(グラフ12)、3DMark06のSM2.0 TestとHDR/SM3.0 Test(グラフ13)、Crysis(グラフ14)、LOST PLANET COLONIES(グラフ15)だ。

【グラフ11】3DMark06 Build 1.1.0 / 3DMark Vantage Build 1.0.1(CPU Test)
【グラフ12】3DMark Vantage Build 1.0.1(Graphics Test)
【グラフ13】3DMark06 Build 1.0.1(SM2.0 Test,HDR/SM3.0 Test)
【グラフ14】Crysis(Patch 1.2.1)
【グラフ15】LOST PLANET COLONIES(DX10,Patch v1.0.2.0)

 CrysisなどでAthlon X2 7850 BEが良好な結果を見せるシーンがあるものの、大局的にはCore 2環境のほうが優れた結果を見せるテストが多い。ここはCore 2 Duo E7200のほうが向いていると判断していいだろう。

 最後に消費電力の測定である(グラフ16)。ここでは少々面白い結果が出ており、アイドル時、ピーク時ともに、Athlon X2 7750 BEよりもAthlon X2 7850 BEのほうが低い消費電力となった。同一リビジョンの同一コアで、クロック増加があるぶん、Athlon X2 7850 BEのほうが消費電力が増すのが自然な流れなのだが、ここでは逆の結果となった。もちろん個体差もあると思うが、それにしてもわりと大きな差が付いており、興味深い結果になっている。

 一方でCore 2 Duo E7200との消費電力差はかなり大きく開いており、この点ではAthlon勢にとっては不利な格好となっている。

【グラフ16】消費電力

●順当な性能向上を歓迎したい製品

 Athlon X2 7850 BEは旧製品からのクロックアップモデルということで、目立って特別な部分はない製品なのだが、それでもAthlon X2 7750 BEから確実な性能アップになっている点は評価すべきだろう。Core 2 Duo E7200との比較では3Dゲーム周りと消費電力で不利もあるが、かなり近い結果をもった製品同士と判断できる結果になった。

 価格は8,800円程度とされており、現状のAthlon X2 7750 BEより少し高価な価格とはなる。しかし、1万円未満のデュアルコア製品のなかでも上位の性能を持つ上、倍率ロックフリーモデルゆえのオーバークロックの楽しみというプラスアルファの魅力がある。低価格帯製品の価値引き上げのために、こうした進化を歓迎したい。

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