瀬文茶のヒートシンクグラフィック

PHANTEKS「PH-TC14PE_RD」
~新興ブランドの赤くて高価なサイドフロー型CPUクーラー



 新興CPUクーラーブランドであるPHANTEKSのハイエンドサイドフロー型CPUクーラー「PH-TC14PE_RD」を紹介する。今回の購入金額は12,900円だった。

●5つのカラーバリエーションを展開するPH-TC14PEのレッドモデル

 PHANTEKS PH-TC14PE_RDは、2011年に自作PC向けCPUクーラー市場に参入した新興ブランドPHANTEKSが、第1弾製品として2011年9月にリリースした「PH-TC14PE」のカラーバリエーションモデルである。PH-TC14PEが白色のカラーリングを施されているのに対し、PH-TC14PE_RDは放熱フィンと最上段の装飾プレートがワインレッドに塗装されている。

 PH-TC14PE_RDのヒートシンクは、2ブロックの放熱ブロックを備えたミッドシップレイアウト採用のサイドフロー型ヒートシンクだ。ベースユニットがCPUから受け取った熱は、5本の8mm径ヒートパイプによって放熱部へと運ばれ、放熱ブロックを構成する172枚86組(1ブロックあたり86枚43組)のアルミニウム製放熱フィンによって放熱される。カラーリングを除けば、取り立てて特徴的な要素が無いように見えるPH-TC14PE_RDのヒートシンクだが、放熱フィンとヒートパイプの接続方法に、放熱フィンに開けた穴にヒートパイプを通すというオーソドックスな方法ではなく、2枚の放熱フィンでヒートパイプを挟み込むという、採用例の少ない手法を採っている点はなかなか興味深い。

 標準ファンには、PHANTEKSブランドの140mm径ファン「PH-F140」が付属している。このファンは通常1,300rpm(±10%)固定のPWM制御非対応ファンであり、電源コネクタも3ピンタイプのものが採用されているのだが、PH-TC14PE_RDにはPWM制御を有効化するケーブルが同梱されており、これに接続することで回転数を700~1,200rpm(±10%)の範囲でPWM制御が可能となる。なお、PH-TC14PE_RDに付属するPH-F140は、赤いブレードを備えたモデルだが、他のカラーバリエーションモデルには、それぞれのヒートシンクと同じ色のブレードを備えたPH-F140が同梱されている。

 ヒートシンクへのファン固定には金属製クリップを使用するのだが、120mm角ファンの穴位置と互換性のある140mm径ファン用のクリップであるため、リブ無しタイプの120mm角25mm厚ファンへの交換も可能だ。また、PH-TC14PE_RDには3基のファンを固定できる分のクリップが同梱されているため、ファンを追加購入すれば3連ファン構成で運用することも可能である。

PH-TC14PE_RD製品パッケージ
PH-TC14PE_RD本体
付属品一覧
標準ファン「PH-F140」
左手前:PH-TC14PE_RD、右奥:PH-TC14PE_BK
フィンブロックの側面。中心部にヒートパイプが配置されており、両側からフィンで挟み込まれている。
メモリとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE)
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE)

 5色ものカラーバリエーションモデルを展開するという珍しい戦略で市場に参入した新興ブランドのPHANTEKSだが、その第1弾製品として登場したPH-TC14PEは単なる色物としてではなく、空冷CPUクーラーとしては最高峰の冷却性能を持つと言われるほどパフォーマンス面で注目を集める製品である。確かにヒートシンクの造りは堅実で、大変丁寧に仕上げられている印象を受ける。設計についても、最近ハイエンドクラスのCPUクーラーで流行中のミッドシップレイアウトのサイドフローを採用しており、見るからに冷却性能の高さを感じさせられるヒートシンクである。

 大型のヒートシンクであるため、周辺パーツとのクリアランスにはやや難があり、ASUS MAXIMUS V GENEとの組み合わせでは、拡張スロットの上空にファンクリップが被さったほか、140mm径ファンとメモリのクリアランスがかなり狭くなっていることが確認できた。ファンクリップを絶縁テープで養生したり、ファンをずらして取り付ければ回避できなくもない程度の問題だが、導入に当たっては注意が必要だろう。


●冷却性能テスト結果

 それでは冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、付属ファンをフル回転(約1,300rpm)させた際と、PWM制御を有効化する専用アダプタを利用し、PWM制御を20%に設定(約650rpm)した際の温度をそれぞれ取得した。

テスト結果

 テストの結果、3.4GHz動作時はリテールクーラーの85℃に対し、フル回転時は55℃(-30℃)、20%制御時には59℃(-26℃)をそれぞれ記録し、リテールクーラーから大幅に低いCPU温度を実現している。また、オーバークロック動作時のCPU温度については、4.4GHz動作時はフル回転で64℃、20%制御でも71℃。最もCPUの発熱が大きい4.6GHz動作時でも、フル回転時74℃、20%制御時81℃という結果だった。いずれの条件においても3.4GHz動作時にリテールクーラーが記録した85℃を下回っていること、そして、デュアルファンとはいえ20%制御時のファン回転数が僅か650rpm程度であることを考慮すれば、PH-TC14PE_RDが非常に優れた冷却性能を持っていることが伺える。

 搭載ファンが大口径の140mm径ファンであるため、フル回転時の1,300rpm動作時の風切り音はそれなりに大きい。静音性を多少犠牲にしてでも冷却性能を優先するというスタンスであれば、許容できなくもない程度の騒音ではあるが、通常の運用であれば、同梱のPWM制御有効化アダプタを使ってファンの回転数を絞ると良いだろう。今回のテストで温度を測定した20%制御時の動作音は非常に静かで、耳を近づけてようやく軸音が聞こえる程度の動作音だった。それほどの静音動作でありながら、前述の冷却性能を実現できるのだから大したものである。

●素晴らしいパフォーマンスを持った空冷最高級ヒートシンク

 PHANTEKSのCPUクーラーは国内にあまり出回っておらず、今回紹介したPH-TC14PE_RDも入手が困難なのが現状だ。また、価格も12,900円と空冷CPUクーラーとしては非常に高い価格である。今を逃せばいつ手に入るかわからないという状況を考慮しても、なかなか手を出しにくい価格であることは確かだろう。ただ、筆者としては、PH-TC14PE_RDが示したパフォーマンスや完成度の高さを考えれば納得できる価格であると考える。ハイエンドCPUクーラーに魅力を感じるのであれば、購入しても後悔しない製品の1つだろう。

 ちなみに、PHANTEKSはPH-TC14PEに続く第2弾製品として、トップフロー型CPUクーラー「PH-TC14CS」をリリースしている。PH-TC14PEの国内未発売カラーバリエーションであるブルー、オレンジとともに、PH-TC14CSが国内で販売されることに期待したい。

PHANTEKS「PH-TC14PE_RD」製品スペック
メーカーPHANTEKS
フロータイプサイドフロー型
ヒートパイプ8mm径×5本
放熱フィン86枚(43組)×2ブロック + 装飾プレート×2
サイズ140×159×171mm (幅×奥行き×高さ)
重量1,100/1,250g (シングルファン/デュアルファン)
付属ファン140mm径ファン×2(かっこ内はPWM有効化アダプタ使用時)
電源:3ピン
回転数:1,300rpm±10%(700~1,200rpm±10%)
風量:88.6CFM(45.1~78.1CFM)
ノイズ:19.6dBA(13.4~19dBA)
サイズ:140×140×25mm
対応ソケットIntel:LGA 775/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1