■瀬文茶のヒートシンクグラフィック■
今回は、2012年7月12日に国内で発売されたばかりの新製品ながら、現在流通している在庫限りで国内向けの販売は終了となった、Prolimatech製サイドフロー型CPUクーラー「Lynx」を紹介する。購入金額は3,480円だった。
●極薄の放熱部が特徴的なローエンドサイドフロー2009年にCPUクーラーメーカーとして自作PC市場に参入したProlimatechは、第1弾製品として投入した「Megahalems」が当時のCPUクーラーとしては最上級の冷却性能を持つ製品であったことにより、一躍ハイエンドブランドとしての地位を確立した新興ブランドである。そのProlimatechが、コンパクトなエントリー向けCPUクーラーというコンセプトで作り上げたヒートシンクが今回紹介する「Lynx」である。
Lynxのヒートシンクは、放熱部の厚みが約29mmという大変スリムな設計がなされている。この薄型の放熱部は、直線状に配置された3本の6mm径ヒートパイプを両側からフィンで挟み込む形で形成するという、珍しい手法で形成されているのも特徴的である。全体的な外観としては、本体にニッケルメッキが施されていることで、ローエンドCPUクーラーにありがちな安っぽさが軽減されているものの、平板のベースプレートでヒートパイプを潰すように接続しているベースユニットなど、細部に関しては価格なりの作りとなっている。
Lynxには120mm角25mm厚のファンが1基同梱されている。この120mm角ファンは、PWM制御により回転数を800~1,600rpmの範囲で制御可能となっており、ヒートシンクには専用のファンクリップを用いて取り付ける。Lynxのファンクリップは、ファンの固定穴に引っ掛ける合わせるものではなく、ファンのフレームに引っ掛けるという珍しいタイプを採用している。このファンクリップは取り付け位置の融通が利かせやすいという利点がある反面、上下方向にファンが動いてしまったり、ファンの形状や位置によっては羽根と干渉してしまう可能性が考えられる。Lynxには標準で2基のファンを取り付けられるだけのクリップが同梱されているが、市販のファンを利用する場合はやや注意が必要だろう。
Prolimatech Lynx 製品パッケージ |
Prolimatech Lynx 本体 |
付属品一覧 |
120mm角25mm厚の標準ファン |
Lynxのファンクリップ。ファンの形状によってはブレードとの干渉問題が生じる場合がある。 |
メモリスロットとのクリアランス(MAXIMUS V GENE使用時) |
拡張スロットとのクリアランス(MAXIMUS V GENE使用時) |
120mm角ファン対応のサイドフロー型CPUクーラーとして、かなりコンパクトに設計されているLynxは、大型サイドフロー型CPUクーラーに多い、メモリスロットや拡張スロットとの干渉問題が起こりにくいヒートシンクである。上掲の写真のように、メモリスロット、拡張スロットとのクリアランスは十分に確保されており、高さ(159.5mm)をクリアできる環境であれば、物理的な干渉問題が発生する可能性はかなり低いだろう。
●冷却性能テスト結果
それでは冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、付属ファンをフル回転(約1,680rpm)させた際の温度と、PWM制御を20%に設定(約800rpm)した際の温度をそれぞれ取得した。
テスト結果 |
テストの結果、3.4GHz動作時については、ファンフル回転のCPU付属クーラーが85℃だったのに対し、Lynxの付属ファンフル回転時は67℃、20%制御時は77℃を記録し、CPU付属クーラーより8~18℃低い温度となった。ハイエンドCPUクーラーに比べれば控えめな結果ではあるが、CPU付属クーラーよりも静音動作する20%制御時でも8℃差をつけている点については、それなりに評価できる数字だろう。オーバークロック時の結果については、4.4GHz動作時にファンをフル回転動作させた際は84℃に踏みとどまったものの、20%制御時には94℃を超えたためテストを中止している。また、4.6GHz動作時については、標準ファンでは94℃未満に抑えることができなかったため、テストを中止した。
ファンの動作音については、今回テストを行なった20%制御時は約800rpmで動作しているだけあって、特に動作音は気にならないレベルだったが、フル回転時の約1,680rpm動作は回転数なりの風切り音が発生している。静音運用するのであれば、マザーボード側でPWM制御を設定する必要がありそうだ。
●互換性の高さが魅力のヒートシンク。冷却性能はやや物足りない今回Lynxを使用してみた印象として、CPUクーラーをマザーボードに固定するリテンションが固いなど、少々気になる点はあったものの、比較的扱いやすいCPUクーラーに仕上がっているように感じた。物理干渉の起こりにくいコンパクトなヒートシンクは、CPUクーラーを選ぶ際に大きな魅力となるだろう。
環境を選ばない互換性の高さが魅力となるLynxだが、冷却性能については少々物足りない感は否めない。もちろん、CPU付属クーラーより高性能であることは確かだが、オーバークロック動作で高負荷を掛けるような用途を想定しているのであれば、コストパフォーマンスに優れた製品が多数ラインナップされている3,000円台中盤の価格帯において、ベターな選択肢にはなり得ない。CPU付属クーラーからアップグレードするにあたって、ケース内スペースが限られている場合や、静音化を主な目的としている場合などに選びたい製品である。
Prolimatech「Lynx」製品スペック | ||
メーカー | Prolimatech | |
フロータイプ | サイドフロー型 | |
ヒートパイプ | 6mm径×3本 | |
放熱フィン | 80枚 | |
サイズ | 125×55×159.5mm(幅×奥行き×高さ) | |
重量 | 500g (ファン搭載時) | |
付属ファン | 120mm角25mm厚ファン ×1時) 電源:4pin 回転数:800~1,600rpm±10% 風量:72.67CFM(最大) ノイズ:29.1dBA(最大) サイズ:120×120×25mm | |
対応ソケット | Intel:LGA 1155/1156/2011 AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1 |