瀬文茶のヒートシンクグラフィック

ENERMAX「ETD-T60-VD」
~ENERMAXブランドのトップフローCPUクーラー



 2011年10月に発売された、ENERMAXブランドのトップフロー型CPUクーラー「ETD-T60-VD」を紹介する。今回の購入金額は6,980円だった。

●ENERMAXブランドのCPUクーラー第二弾

 国内において、電源メーカーとしての知名度が高いENERMAXは、CPUクーラーについて2011年に第一弾製品を投入したばかりの新規参入メーカーである。CPUクーラーブランドとしてのENERMAXは、共通の形状のヒートシンクをベースに、カラーリングや付属ファンを変更したバリエーションモデルをラインナップするという、他のCPUクーラーメーカーとは異なる製品展開をしている。今回紹介するETD-T60-VDは、同ブランドのCPUクーラー第二弾として登場した、トップフロー型CPUクーラーのバリエーションの1つである。

 TDP 200W超対応を謳う本製品は、6本の6mm径ヒートパイプと55枚の放熱フィン、アルミ製ベース面採用のベースユニットを備える、トップフロー型レイアウトを採用。ヒートパイプと放熱フィン、ベースユニットは、それぞれろう付けされており、ヒートシンク全体には光沢感のあるメッキが施されている。オーソドックスなトップフロー型レイアウトを採用しつつ、組立もメッキ処理も美しいETD-T60-VDは、なかなか見栄えの良いヒートシンクである。

 標準搭載のファンは、24個のLEDと11の発光パターン(消灯を含む)を持つ、ENERMAXオリジナルファン「T.B.VEGAS DUO」のPWMモデル。このファンはPWM制御により回転数を800rpm~1,800rpmの広範囲で制御でき、ファンに接続されたスイッチによって発光パターンの切り替えが可能だ。ファンとLEDへの給電は、1本の4ピンファンコネクタから行なわれるが、ファン側の制御が電圧制御ではなくPWM制御のため、マザーボード側が対応していれば、LEDの輝度を維持したままファンの回転数を制御できる。

 ファンの固定には、専用の樹脂製ブラケット「Easy detachable fancy cover」を用いる。ENERMAXによれば、このブラケットには搭載ファンのイルミネーションを際立たせる効果と、ファンの脱着を容易にすることでメンテナンス性を向上させる狙いがあるとしている。また、25mm厚の120mm角ファンであれば、市販のケースファンを搭載することも可能だ。

ETD-T60-VDパッケージ
ETD-T60-VD本体
ETD-T60-VD、付属品一覧
標準ファンの「T.B.VEGAS DUO」。発光パターンは電源をオフにしても記憶されるため、起動ごとに発光パターンを切り替える必要はない
ファン固定用の「Easy detachable fancy cover」

 ETD-T60-VDのヒートシンクは、高さを抑えた設計がなされており、ヒートシンクの全高はファンを搭載した状態で115mmである。これにより、大型サイドフローCPUクーラーが搭載できない横幅の狭いPCケースや、ケース側面パネルにケースファンを搭載するPCケースへの組み込みに対応可能だ。

 一方、この設計により、メモリとのクリアランスについては厳しいものとなっている。検証に利用したASUSのIntel Z68 Expressマザーボード「MAXIMUS IV GENE-Z/GEN3」では、取り付け方向を問わず、最もCPUソケットに近いメモリスロットがヒートシンクに覆われる形となった。ヒートシンクが被る位置にあるメモリスロットでは、全高が40mm以上のメモリは干渉する恐れがある。全てのスロットにメモリを搭載する場合、組み合わせるメモリの全高に注意が必要である。

 そのほか、ETD-T60-VDで特徴的な要素としては、CPUクーラーを固定するリテンションに、同社が特許を持つ「Auto-Adjustable-Pressure」を採用している点が挙げられる。このリテンションは、各ソケットに対して最高の接触力(18~28KgW)を実現するものとされている。この技術の詳細については公開されていないものの、各ソケットに対して適切な圧力で取り付け、熱伝導率を高めるという考え方は興味深い。


●冷却性能テスト結果

 それでは冷却性能テストの結果を紹介する。テスト機材については、マザーボードの調達と条件出しが完了したので、今回からCore i7-2600KベースのLGA 1155環境に戻している。なお、マザーボードの変更により過去データとの比較が不可能となったことを機に、今回から負荷テストをLinX 0.6.4(Linpack 10.3.7.012)に切り替えている。

 検証結果を見てみると、3.4GHz設定時にはリテールクーラーの85℃に対し、ファン回転数を最小まで絞った約830rpm動作時で14℃低い71℃、ファンコントロールを開放した1,890rpm動作時では25℃低い60℃と、良好な結果を記録している。一方、4.4GHz動作時の温度は、830rpm動作時に83℃、1,890rpm動作時は72℃となった。80℃を超える830rpm動作時の温度は高いが、1,890動作時には10℃以上低い温度を記録しているところを見ると、この程度のオーバークロックをこなすだけのヒートシンク性能は持っているようだ。

 動作音については、フル回転時の1,890rpm動作時は風切り音も大きく、ケースに収めてもその音が気になりそう動作音を発するが、回転数を830rpmまで絞れば、若干軸音が気になるものの、十分静かなレベルまで動作音を落とせる。最近のマザーボードの多くがPWM制御に対応していることを考えると、高冷却動作と静音動作をユーザー側で制御できる広範囲PWMファンの採用は、ユーザーにとって大きなメリットとなりそうだ。

●冷却性能は及第点、光り物としての魅力は大

 TDP 200W超対応を掲げる6,980円のCPUクーラーとしては、もう少し高いCPU冷却性能を期待したくなるところではあるが、周辺冷却とのバランスを期待されるトップフロー型CPUクーラーであることを考えれば、今回の冷却性能テストの結果は及第点と言ったところだろう。ヒートシンクとしては、大型のサイドフロー型CPUクーラーや背の高いトップフロー型CPUクーラーが使えないケースにおいて、定格動作での静音化や、軽いオーバークロックを狙う場合に好適な選択肢となりそうだ。

 見た目も考慮すれば、高輝度で発光パターンも豊富なT.B.VEGAS DUOの存在は魅力的である。近年増えつつあるアクリル窓付きサイドパネル採用ケースに組み込めば、ETD-T60-VDの持つ光り物としての魅力が際立つだろう。CPUクーラーの性能が向上する一方で、CPUは高性能化と低発熱化が進んでいる今、以前紹介したZALMAN「CNPS12X」のように、見た目を基準に選んでみるのもまた面白い。


ENERMAX「ETD-T60-VD」製品スペック
メーカーENERMAX
フロータイプトップフロー型
ヒートパイプ6mm径×6本
放熱フィン55枚
サイズ131×151×115mm(幅×奥行き×高さ)
重量540g
付属ファンENERMAX「T.B.VEGAS DUO PWM」
(120mm角25mm厚ファン)
電源:4pin(PWM制御対応)
回転数:800rpm ~ 1,800rpm
風量:33.26~75.98CFM
ノイズ:16~26dBA
対応ソケットIntel:LGA 775/1155/1156/1366
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1