瀬文茶のヒートシンクグラフィック

NZXT「HAVIK 140」



 日本ではPCケースなどで知られるNZXTが、同ブランド初のCPUクーラーとして発売した「HAVIK 140」を紹介する。今回の購入金額は7,480円だった。

●過去のハイエンドクーラーを踏襲する堅実な作り

 オランダ語で「オオタカ」を意味するHAVIKを冠するこの製品は、140mm径の大口径ファンを2基を搭載し、TDP 250W対応を謳う大型CPUクーラーである。発売当初は、対応予定となっていたLGA 2011への対応も完了し、現在はIntelのLGA 775/1155/1156/1366/2011および、AMDのSocket AM2系/AM3系ソケットと、Socket FM1をサポートする。

 まずは、ヒートシンクの構成を確認していこう。HAVIK 140では、ニッケルメッキが施された銅製ベースがCPUから受け取った熱が、ベース部両端から伸びる6本の6mm径ヒートパイプによって、同形状のアルミ製放熱フィン46枚からなる放熱部へと輸送される。冷却ファンは放熱部をサンドイッチする形で2基搭載されている。サイドフロー型CPUクーラーとしてはオーソドックスなレイアウトである。

 HAVIK 140が標準搭載する2基の冷却ファンは、120mm角互換の140mm径大口径ファンだ。波打つような形状の刃が特徴のこのファンはPWM制御には対応せず、1,200rpmの固定回転で90.3CFMの風量を実現する。動作音は25dBA。ファンは専用のゴム製クリップで放熱部に固定する。このゴム製クリップは標準ファンのほか、リブの無いタイプのフレームを備える120mm角ファン、または140mm径ファン(120mm角互換品)であれば取り付け可能だ。

HAVIK 140パッケージ
HAVIK 140本体
標準搭載の140mm径の大口径ファン
専用クリップでファンを固定したところ
付属品一覧
別途添付されていたLGA 2011取り付け部品

 HAVIK 140のデザインは取り立てて目新しさを感じるものではない。強いて特徴を挙げるとすれば、ベースと放熱部の間でヒートパイプを大きく曲げることで、ヒートパイプを分散配置していること程度である。加工痕のハッキリ残るベース面や、ろう付けした際のはんだが溢れている箇所が散見されるなど、仕上げのクオリティはいまひとつな印象を受ける。

 見慣れたデザインにまずまずの仕上げと、ありふれたサイドフロー型CPUクーラーのように見えるHAVIK 140だが、ヒートパイプと放熱フィンのろう付けや、ヒートパイプに合わせて溝を彫って挟み込んだベースユニットなど、抑えるべきポイントはしっかり抑えている。奇をてらったデザインのような派手さはないが、旧来のハイエンドCPUクーラーの設計を踏襲した堅実な設計であるとも言えるだろう。


● 老舗CPUクーラーメーカーに対抗し得る高い冷却性能

 検証は前回Noctua「NH-D14 SE2011」と同じ条件で行なった。HAVIK 140の標準ファンはPWM制御に対応せず、抵抗ケーブル等も同梱されていないため、ファンスピードをマザーボードのユーティリティソフト「ASUS Fan Xpert」で回転数を50%(約800rpm)に電圧制御した際の結果を合わせてグラフ化している。

 なお、実際にCPUクーラーをPCに組み込んだ場合、CPUの温度はクーラーの取り付け方向やケース内のエアフローなどさまざまな要素に左右される。この検証ではクーラーそのものの性能を測るため、敢えてそれらの要素を排除している点をご了承いただきたい。

 さて、検証の結果だが、3.4GHz動作時の結果はファン制御なしで53℃、ファンの回転数を制限した場合でも55℃と、リテールクーラーに25~27℃の差をつける結果となった。4.4GHz動作時の結果でも63℃~65℃と、NH-D14 SE2011を上回る結果を記録している。NH-D14 SE2011とは搭載ファンが異なるため、この結果を持ってNH-D14 SE2011を凌ぐヒートシンクであると言える訳ではないが、全体としてHAVIK 140が優秀な冷却性能を持つ製品であることは間違いないだろう。

 動作時の騒音については、140mm径という大口径ファンだけあって、制御を行なわない1,200rpm動作時だと風切り音が耳障りな動作音を発している。ファン制御を行なった800rpm動作時の動作音はほとんど気にならないレベルだった。ヒートシンクが低回転でも充分な冷却が可能なポテンシャルを持っているだけに、最近のマザーボードの多くがサポートしているPWM制御に標準ファンが対応していないのが残念なところである。

 その他、冷却性能や騒音以外の点では、ファンとメモリのクリアランスが非常に厳しい点が気になった。ゴムクリップを上にずらすなどしてある程度の干渉回避は可能なものの、少し高さのあるヒートシンクを備えたメモリを利用する場合、メモリスロット側のファンを120mm角ファンに交換するなどの対策が必要となりそうだ。

 見た目の上での加工精度や、ファンとメモリのクリアランスなど、気になる点もあるHAVIK 140だが、新規参入メーカーの第1弾製品としては出来すぎともいえるパフォーマンスには驚かされた。近年、ケースや電源ユニットを中心にブランド展開を行なうメーカーがCPUクーラー市場へ参入する例は珍しくないが、いきなり老舗CPUクーラーメーカーに対抗し得る製品を投入し、既に第2弾製品として、120mm角ファン搭載の「HAVIK 120」を発表しているNZXTの今後の製品展開に注目したい。


NZXT「HAVIK 140」製品スペック
メーカーNZXT
フロータイプサイドフロー型
ヒートパイプ6mm径×6本
放熱フィン46枚(アルミニウム製)
サイズ60×135mm×160mm(幅×奥行き×高さ、ヒートシンクのみ)
120×140×166mm(同、ファン2基搭載時)
重量760g(ヒートシンクのみ)
1035g(ファン搭載時)
付属ファンΦ140mmファン ×2
電源:3pin
回転数:1,200rpm
風量:90.3CFM
ノイズ:25dBA
対応ソケットIntel:LGA 775/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1