瀬文茶のヒートシンクグラフィック

NOFAN「CR-95C」
~TDP 95W対応の超巨大ファンレス用ヒートシンク



 NOFANより2012年2月に発売されたファンレス用ヒートシンク「CR-95C」を紹介する。今回の購入金額は9,980円だった。

●ファンレス特化の超巨大ヒートシンク

 NOFAN CR-95Cは、最大でTDP 95Wに対応するヒートシンクだ。冷却性能を重視するハイエンドCPUクーラーがTDP 200W以上への対応を謳う製品が珍しくない現在、TDP 95Wという数字は一見もの足りなく感じるが、これがファンレス動作時の最大TDPであるということを考えると話は別だろう。

 CR-95Cは巨大な円筒状の放熱ユニットを備えたヒートシンクで、その直径は180mmに達する。その大きさもさることながら、一般的なヒートシンクが備える放熱フィンの代わりに、アイスパイプと呼ばれるアルミニウム製の小径ヒートパイプを円環状に配置したヒートシンク構造も特徴的である。

 CR-95CがCPUから受け取った熱は、ベースから6mm径ヒートパイプ4本により一旦円筒状の放熱ユニットの底部へと輸送され、そこに接続されたアイスパイプによって放熱が行なわれる。一般的なCPUクーラーが放熱ユニット全体への熱輸送をヒートパイプが担うのに対し、CR-95Cでは、アルミ製放熱フィンに比べ400倍高速な熱輸送を実現するというアイスパイプが、放熱部全体への熱拡散と放熱を同時に担うというわけである。

CR-95C製品パッケージ
CR-95Cヒートシンク本体
付属品一覧
メモリとのクリアランス(ASUS MAXIMUS IV GENE-Z/GEN3搭載時)
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS IV GENE-Z/GEN3搭載時)

 NOFANはCR-95C発売以前に、CR-100Aの名でその原形となったファンレスヒートシンクを発売している。日本では同ブランドのケースおよび電源とセットで販売されたこのヒートシンクは、直径222mm、高さ132mm、TDP 100W対応という超弩級ヒートシンクだった。CR-95Cでは、CR-100Aの直径を抑える代わりに、放熱ユニットを上方向に伸ばすことで放熱面積を稼いでいる。これにより、対応TDPは5W低下したものの、CR-100Aが抱えていた物理的な干渉問題が多少改善されている。

 とは言え、直径180mmのCR-95Cも十二分に巨大なヒートシンクであることに変わりなく、物理的な干渉が発生しやすいヒートシンクである。今回試したMAXIMUS IV GENE-Z/GEN3では、最上段の拡張スロットが使用不可となったほか、ヒートシンクがメモリスロットにも被さるため、高さ40mm程度のメモリは取り付けられない。CPUソケットのレイアウトによっては、ケース天板との干渉にも注意が必要である。


●冷却性能テスト結果

 さて、それでは冷却性能テストの結果を紹介する。今回はファンレスヒートシンクなので、これまでの検証方法に従ってテストを行なうと、一切エアフローの無い環境でのテストになってしまう。そこで、今回は拡張スロットの9段目相当する位置に、Silver Stone「SST-AP121」を2基搭載したProlimatech「FMK-01」を配置し、これによる吹き付け方向のエアフローを利用した場合のデータも合わせて取得した。

 なお、テスト環境のセットアップ中に、CR-95Cの付属バックプレートと、マザーボードのチップコンデンサが干渉するという問題が発生した。対応を検討した結果、マザーボード表面にスタッドを立て、それを使ってヒートシンクを固定するというCR-95Cのリテンション構造から、前回紹介したSilver Arrow SB-Eのバックプレートが利用可能だったため、今回はこれを流用してテストを行なっている。

 CR-95Cは、3.4GHz動作時に完全無風状態で、CPU付属クーラーより1℃高い86℃、離れた位置に配置したファンユニットからのエアフローがある状況では、一気に21℃低い65℃を記録した。テストのためTurbo Boostを切っているものの、TDP 95WのCPUがフルロード時に発する発熱を、完全に無風の状況でも放熱できるのは大したものである。

 一方、4.4GHz動作時は、エアフローの有無に関わらず、CPU温度が90℃を突破したため、機材を保護する目的でテストを打ち切った。3.4GHz動作時にエアフローありで記録した温度からは、エアフローのサポートがあれば4.4GHz動作もこなせそうに思ったのだが、放熱ユニット以外の受熱や熱輸送にボトルネックがあるように感じる結果となった。

【グラフ】テスト結果

●完全に無風でもCore i7-2600Kを冷却可能なヒートシンク

 「TDP○○Wでのファンレス動作をサポート」と謳うヒートシンクであっても、ケースのエアフローがあることを前提としている製品が多い中で、Core i7-2600Kがフルロード時に発する発熱を放熱し切ったCR-95Cは、完全ファンレスPCの可能性を広げる存在と言える。

 実際にCR-95Cを使って完全ファンレスPCを目指すのであれば、ケースや周辺パーツとの物理的な干渉問題をクリアする必要があることに加え、チップセットやVRM回路など、マザーボード上の発熱が大きいパーツや、HDDなどの冷却も考慮しなければならず、冷却性能面以外の課題は多い。このヒートシンクを使いこなすには、CPUクーラーを中心にパーツ構成を考える必要があるだろう。

【表】CR-95Cの仕様

NOFAN「CR-95C」製品スペック
メーカーNOFAN
フロータイプファンレス
ヒートパイプ6mm径×4本
放熱フィンアイスパイプ×1(43,200mm)
サイズ180×148mm(直径×高さ)
重量730g
付属ファンなし
対応ソケットIntel:LGA 775/1155/1156
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1