西川和久の不定期コラム
ASUS「TransBook T100HA」
~5万円を大きく切った10.1型Cherry Trail搭載2-in-1
(2015/9/26 06:00)
ASUSは9月16日、Cherry Trailを搭載したIPS式10.1型2-in-1を発表、9月19日から順次販売を開始した。内容の割りに想定価格が約45,000円と抑えられており、記事を見かけた時、「おっ!」と思った1台だ。編集部から実機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。
リーズナブルな価格の2-in-1
Surface 3を筆頭にCherry Trailを搭載した2-in-1が何機種か出ているが、多くは価格が70,000円以上と(パネルの解像度、メモリ容量、ペン対応の有無はあるものの)そこそこ高価だ。8型のBay Trail搭載機は20,000円前後とこなれた価格に落ち着いているだけに、余計そう思ってしまうのは筆者だけではないだろう。
Cherry Trailになりパワーアップしたとは言え、AtomはAtom。Coreプロセッサはもちろん、CeleronやPentiumにもパワー的には及ばない。
そのような中、やっとこれならと思えるCherry Trail搭載2-in-1が登場した。それが今回紹介するASUS「TransBook T100HA」だ。キーワードは、Intel Atom x5-Z8500、価格45,800円前後(税別)、USB 3.1(Type-C)、10.1型IPS式――ただし解像度は1,280×800ドットとなる。主な仕様は以下の通り。
ASUS「TransBook T100HA」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Intel Atom x5-Z8500(4コア4スレッド、1.44~2.24GHz、キャッシュ2MB、SDP 2W) |
メモリ | 2GB(LPDDR3-1600) |
ストレージ | eMMC 64GB |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics |
ディスプレイ | 10.1型IPS式1,280×800ドット(光沢あり)、10点タッチ対応 |
ネットワーク | IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス(本体) | 192万画素前面/500万画素背面カメラ、USB 3.1(Type-C) Gen 1、Micro USB、Micro HDMI(最大3,840×2,160ドット)、microSDカードスロット、音声入出力、システムコネクタ、ステレオスピーカー(1.5W+1.5W) |
センサー(本体) | 電子コンパス、加速度センサー、ジャイロスコープ、磁気センサー |
インターフェイス(キーボード) | USB 2.0、システムコネクタ |
サイズ/重量(本体) | 265×175×8.45mm(幅×奥行き×高さ)/約580g |
サイズ/重量(キーボード込み) | 265×175×19.45mm(同)/約1.08kg |
バッテリ駆動時間(本体) | 約11.3時間 |
価格 | 45,800円前後(税別) |
プロセッサはIntel Atom x5-Z8500。4コア4スレッドでクロックは1.44GHzから最大2.24GHz。キャッシュ2MBでSDPは2W。Cherry Trailにはx5系とx7系の2種類があり、現時点で前者はx5-Z8300とx5-Z8500。後者はx7-Z8700と3つのSKUがラインナップされている。
主な違いは順にクロックのレンジが上がり、グラフィックスの実行ユニット数が12か16か。今回搭載しているのはちょうど真ん中という扱いになるだろうか。
メモリはLPDDR3-1600の2GB、ストレージはeMMCで64GB搭載している。OSは64bit版のWindows 10 Home。メモリが2GBだと32bit版の方がいろいろ有利なのだが。
グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel HD Graphics。外部出力用として、Micro HDMIを装備し、この時の最大解像度は3,840×2,160ドットだ。
インターフェイスは本体側に、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0、192万画素前面/500万画素背面カメラ、USB 3.1(Type-C)、Micro USB、microSDカードスロット、音声入出力、システムコネクタ、ステレオスピーカー(1.5W+1.5W)。キーボード側に、システムコネクタとUSB 2.0。センサーは本体側に、電子コンパス、加速度センサー、ジャイロスコープ、磁気センサーを搭載している。
USB 3.1(Type-C)はまだ対応機器が少ないものの、これから主流になるであろうインターフェイスなので標準搭載なのはポイントが高い。ただしGen 1なので転送速度は5Gbpsとなる。
サイズは本体が、265×175×8.45mm(同)、重量約580g。キーボード込みで、265×175×19.45mm(同)、重量約1.08kg。合体時でほぼ1kgと軽量級だ。バッテリ駆動時間は本体のみで約11.3時間、キーボード込みで約11時間となっている。
価格は45,800円前後(税別)。先に書いたように、これなら8型のBay Trail搭載タブレットと比較しても十分納得できる範囲だろう。
そしてディスプレイは光沢アリの10.1型IPS式で10点タッチ対応。ただし、解像度は1,280×800ドットと、HD解像度(1,366×768ドット)よりさらに1ランク低い。価格も含め、ほかの部分が満足できる仕様なだけに、この点をどう思うかで評価が分かれそうだ。
カラーバリエーションはメタルグレー/シルクホワイト/アクアブルー/ルージュレッドと4種類用意されている。ルージュレッドのみ後日だったが、この記事が掲載されるころには全ての色が販売開始となっている。
今回届いたのはシルクホワイト。パネルのフチ以外は全てパールホワイトっぽい明るい白で、キーボードも真っ白。汚れが目立ちそうだが、どこに置いても非常に映える。多くの部分がプラスティック製なので、特別高級感はないものの十分許容できる範囲だ。
本体だけのタブレット時は、薄く600gを切っているので片手でスッと持ち上がる。逆にキーボードと合体時はもともと小さい分、約1kgは感覚的にズッシリくる。これは見た目で「こんな感じか」と思うポイントより上か下かで印象が異なるので面白い。
前面は、パネル中央上に192万画素カメラ。Windowsボタンはパネル下や周囲も含めない。背面は中央上に500万画素カメラ、下左右にステレオスピーカー。上側面に電源ボタン。下側面にシステムコネクタ。左側面にUSB 3.1(Type-C)、右側面にmicroSDカードスロット、Micro HDMI、充電兼のMicro USB、音声入出力を配置。キーボードは右側面にUSB 2.0がある。USB式のACアダプタはサイズ約50×40×25mm(同)、重量63gと、小型軽量級だ。
ディスプレイは光沢ありの10.1型IPS式。解像度は1,280×800ドットと低めで、文字のジャギーは分かってしまうが、デスクトップ環境ではちょうどいいバランスだ。明るさ、コントラスト、視野角も良好。発色は気持ち色温度が高め(青い)かも知れない。付属のSplendid Utilityで調整可能なので好みに合わせばいいだろう。10点タッチはスムーズだ。
キーボードは87キーの日本語キーボードでアイソレーションタイプ。全体的に少し玩具っぽく、たわみがあり、キーも軽い。キーピッチは実測で約18mm。重さとのバランスもあるだろうが、もう少しガッチリしたのが欲しいところ。タッチパッドはボタンがない1枚プレート型。合体時にはシステムコネクタでホールドされ、完全にノートPCとなる。ただパネルを扉の写真以上傾けることができず、(個人差もあるだろうが)膝の上で使う時などは少し角度が不足する。
背面カメラは500万画素でオートフォーカス対応だが、いわゆるWindowsタブレットのカメラ画質と操作性だ。個人的にはスマートフォンで撮影したい。
振動やノイズは皆無。発熱は背面中央の上部周辺がほんのり熱を持つ程度だ。サウンドは1.5W+1.5Wと仕様上はパワーがあるものの、背面にあるため、音が後ろに抜け、正面からだと完全にパワー不足。また低音が全く出ていない。この点は本機に限らず背面にスピーカーがあるタブレット全般に言える問題だ。何か一工夫欲しいところ。
主にグラフィックス性能が向上
OSは64bit版のWindows 10 Home。タブレットモード時のスタート画面は標準の構成に加え、Office Mobileと若干のアプリと控えめだ。デスクトップに関しても壁紙の変さらにごみ箱のみとシンプルに構成されている。2-in-1なのでキーボードの着脱でタブレットモードが自動的にON/OFFする。体感速度は、物凄く速いわけではないものの、ストレスを感じないレベルだ。
メモリが2GBなので、アプリをあれもこれも、ブラウザでタブを盛り沢山開いて、というような運用には向かないが、ライトな用途であれば特に問題ないだろう。
ストレージは64GBのeMMC「Samsung CFND3R」を搭載。C:ドライブのみの1パーティションで約57.48GBが割り当てられ、空きは41.7GB。また、BitLockerで暗号化されている。
Wi-FiモジュールはBroadcom製が使われ、デバイスマネージャにはTPM 2.0やいくつかのセンサーも見える。
プリインストールのソフトウェアは、ストアアプリは、ASUS GIFTBOX、TripAdvisor Hotels Flights Restaurantsなどと、UWPアプリのOffice Mobile。
デスクトップアプリは、ASUS Live Update/On-Screen Display/Virtual Camera/Splendid Utility/WinFlashと言った同社お馴染みのユーティリティ系と、AudioWizard、Evernote、Dropbox 25GB、i-フィルター6.0など。ストレージが64GBということもあり、割と少なめだ。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchの結果を見たい。CrystalMark(4コア4スレッドで条件的には問題ない)のスコアも掲載した。
winsat formalの結果は、総合 4.8。プロセッサ 6.7、メモリ 5.5、グラフィックス 4.8、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 7.15。なお、メモリに関しては3GBに満たない時は強制的に5.5となる。Bandwidthは10469.82139MB/secだった。
前モデルに相当する「TransBook T100Chi」(Atom Z3775、1.46~2.39GHz)では、総合4.2。プロセッサ6.8、メモリ5.5、グラフィックス4.4、ゲーム用グラフィックス4.2、プライマリハードディスク7.15だったので(OSは32bit版のWindows 8.1 with Bing)、主にグラフィックス性能が向上しているのが分かる。メモリに関してはどちらも搭載容量からリミッターがかかっているが「TransBook T100Chi」はLPDDR3-1066なので、Bandwidthは10,000MB/secに満たないと思われる。
PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)1579。CrystalMarkは、ALU 29179、FPU 23394、MEM 22809、HDD 16132、GDI 4878、D2D 3245、OGL 3324。参考までにGoogle Octane 2.0は7,605(Edge)。
BBenchは、キーボードを付けた状態で電源オプションをバランスに、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリ残り5%で40,843/11.3時間、残り2%で58,488秒/16.2時間となった。
少し驚いたのは、残り4%から2%までの驚異的な粘りだ。この間だけで約4.7時間も動いている。残り5%でも仕様上の約11.3時間そのものなので、このクラスとしてはバッテリの持ちはよいと言っていいだろう。ただバックライト最小はほぼ見えないので、実際はもう少し短くなる。
そのほか、参考としてCrystalMarkの測定結果を掲載する。
以上のようにASUS「TransBook T100HA」は、10.1型IPS式のパネルにCherry Trailを搭載した2-in-1だ。USB 3.1(Type-C)があるのもポイントが高く、価格も約45,000円とリーズナブル。カラーバリエーションも4種類と豊富だ。
キーボードが少し玩具っぽく、画面解像度が1,280×800ドットなのは残念だが、総合的にはうまくまとまっている。安価なWindows 10搭載2-in-1を探しているユーザーにお勧めできる1台と言えよう。