西川和久の不定期コラム

日本エイサー「Aspire P3」

~バッテリ駆動6時間、11.6型のキーボード着脱式Ultrabook

 日本エイサーは6月18日、「Aspire R7」、「Aspire P3」、「Iconia W3」、「Iconia A1-810」と、3つのWindows 8搭載機と、1つのAndroid搭載機を発表した。全てタッチ対応で各種さまざまな特徴を持っている。今回はその中からAspire P3が編集部から送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

タブレットにもUltrabookにもなるコンバーチブル

 同社の製品情報を見ると、製品構成として、Ultra-thin/ノートブック/タブレット/ネットブックと4カテゴリに別れている。以前ご紹介した「ICONIA W700D」は、オプションでBluetoothキーボードカバーに対応しているところまで同じなのだが、これはタブレット扱い。11.6型液晶やルックスはほぼ同じで、Core i5/メモリ4GB/SSD 128GB/フルHD液晶の構成となる。

 対して「Aspire P3」は、Ultra-thin扱いだ。同じカテゴリの製品として「Aspire S7」、「Aspire S5」、「Aspire S3」、「Aspire V5」、「Aspire M」が並んでいる。これらはどれも薄型ノートPC。「Aspire P3」に関しては、基本的にはBluetoothキーボードカバーが付属するタブレットなのだが、合体した状態でUltrabookの条件を満たしているので、こちらのカテゴリになったのだろう。主な仕様は以下の通り。

日本エイサー「Aspire P3」の仕様
プロセッサCore i3-3229Y(2コア/4スレッド、1.4GHz、キャッシュ3MB、TDP 13W)
メモリ2GB(最大/スロット無し)
チップセットIntel HM77 Express
SSD128GB
OSWindows 8(64bit)
ディスプレイIPS式11.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット、10点タッチ対応
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000、Micro HDMI出力
ネットワークIEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0+HS
その他USB 3.0×1、マイクロフォン、音声入出力、フロントHD/リア500万画素カメラ、カバー/スタンド一体型のBluetoothキーボード付属
センサー照度センサー、ジャイロスコープ、加速度センサー、電子コンパス
サイズ/重量295×191×9.15~11.9mm(幅×奥行き×高さ)/約790g(本体のみ)
バッテリ駆動時間最大6時間(4セル/5,280mAh)
店頭予想価格85,000円前後

 プロセッサはCore i3-3229Y。2コア4スレッドでクロック1.4GHz。キャッシュ3MB、TDP 13Wの省エネタイプだ。この時期の製品としてHaswellでないのは残念なところ。チップセットはIntel HM77 Expressが使われている。メモリは2GB固定だ。ストレージは128GBのSSDを搭載。メモリが2GBなので、OSは32bit版でもよさそうだが、64bit版のWindows 8となっている。

 液晶パネルは、10点タッチ対応IPS式の11.6型で解像度は1,366×768ドット。外部出力用としてMicro HDMIを装備する。グラフィックは、プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000。

 ネットワークは、有線LANは無く、無線LANのみでIEEE 802.11a/b/g/n。Bluetooth 4.0+HSにも対応している。その他のインターフェイスは、USB 3.0×1、マイクロフォン、音声入出力、フロントHD/リア500万画素カメラ。センサーは照度センサー、ジャイロスコープ、加速度センサー、電子コンパスを搭載している。

 サイズは本体のみで295×191×9.15~11.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量790g。4セル/5,280mAhのバッテリを内蔵し、最大6時間駆動可能だ。店頭予想価格は85,000円前後。

前面。中央上にHDカメラ、下にWindowsボタン。筐体の質感も良い。液晶パネルは発色も良く、IPS式で広い視野角
背面。左上に500万画素カメラ。アルミボディでなかなかクール
左側面。Micro HDMI、USB 3.0、電源入力
右側面。音声入出力、電源ボタン、音量±ボタン
上部。左右に放熱用のスリット。「ICONIA W700D」にあった回転ロックスイッチは無い
下部。左右にステレオスピーカー
重量は実測で787g
付属品。ACアダプタは約90×60×20mm(同)、重量209g。コネクタはミッキータイプ。Bluetoothキーボード充電用のUSBケーブルが付属する
iPadとの比較。高さはほぼ同じだが、16:9の11.6型なので幅がずいぶん広くなる

 筐体はアルミ素材が使われ全体的な質感は良い。前面中央上にHDカメラ、下にWindowsボタン。背面に500万画素カメラ。左側面にMicro HDMI、USB 3.0、電源入力。右側面に音声入出力、電源ボタン、音量±ボタン。下側面にステレオスピーカーを配置している。ACアダプタのサイズは約90×60×20mm(同)、重量209g。「ICONIA W700D」にあった上部側面の回転ロックスイッチはなくなっている。

 IPS式11.6型の液晶パネルは写真からも分かるように、発色も良く、視野角が広い。最大輝度は十分明るく、また最小輝度でも操作可能なレベルだ。10点対応のタッチもスムーズに反応する。

 前面HD/背面500万画素カメラは、少し試したところ、画質は写真用ではなく、あくまでも動画用と考えた方が良さそうだ。

 試用した範囲で振動やノイズ、発熱に関しては全く気にならなかった。サウンドは抜けが良く、最大出力時、少し歪むもののかなり大きい音量となる。加えてDolby Home Theater v4を搭載するので、好みのトーンにコントロール可能だ。音楽や動画を十分楽しめる。

カバー/スタンド一体型のBluetoothキーボード。以前ご紹介した「ICONIA W700D」とキーボード部分は同じだが、ケースの部分がソフトケースからアルミ製に変わり、ずいぶん質感が良くなった
重量は実測で560g
スタンドを立てたところ。この角度に固定されるので、設置場所によっては見にくいかも知れない
斜め後ろ。中央部が折れ曲がりスタンド替りになっている
閉じたところ。レザー調のマットな黒が使われ、持った時の感触も良い
総重量は実測で1,347g

 冒頭に書いたように、以前ご紹介した「ICONIA W700D」はタブレット扱いだが、「Aspire P3」はBluetoothキーボードカバーが付属するため、タブレットではなく、Ultra-thinシリーズの1モデルとして扱われている。ただ付属しているBluetoothキーボードカバーはほぼ同じ。ポインティングデバイスに相当するものは無い。

 大きく異なるのは、ケースの質感で、今回はソフトケースではなく、アルミ素材を使用したハードケースを採用。これによりずいぶん見た目が良くなった。キーボード部は、写真を見る限り同じものが使われていると思われる。キーピッチは主要キー間で約19mm。重量は合わせて1,347g。11.6型のノートPCと考えると平均的だろう。

 構造上、液晶パネルの角度は、写真の位置で固定となり変更できない。また元々スピーカーが下側面に付いているが、この角度によって、若干下に隙間ができ、キーボード部に音が反射して、前に出てくるようになっている。

バランスが取れたコンバーチブル

 OSは64bit版のWindows 8。メモリが2GBなので大掛かりなアプリは厳しそうだが、軽めの用途であれば、Atom(Clover Tail)搭載機よりは、パワーがある分、快適に操作可能だ。

 初期起動時のスタート画面は、2画面+3アプリ。Acerアプリ以降がプリインストール済みのアプリとなる。デスクトップは壁紙だけがカスタマイズされた状態だ。またタッチ操作を考慮してか、項目のサイズが100%/小ではなく、125%/中に設定されている。

 SSDは、東芝「THNSNH128GMCT」を搭載。C:ドライブのみの1パーティションで、約118GB割当てられ、空きは97.2GB。Wi-FiはQualcomm製だ。

スタート画面1。Windows 8標準
スタート画面2。Acerアプリ以降がプリインストール
スタート画面3。加えて3アプリ
起動時のデスクトップ。壁紙がカスタマイズされている以外は標準のまま
デバイスマネージャ/主要なデバイス。SSDは、東芝「THNSNH128GMCT」。Wi-FiはQualcomm製
SSDのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで、約118GB割当てられている

 プリインストール済みのWindowsストアアプリは、「Acer Crystal Eye」、「Acer Explorer」、「Cut The Rope」、「Evernote」、「Fresh Paint」、「Hulu」、「Music Maker Jam」、「newsXpresso」、「Shark Dash」、「Skitch」、「Skype」、「Social Jogger」、「TuneIn Radio」。「ICONIA W700D」とほとんど同じで、Windowsストアアプリのメジャーどころを多く搭載している。

アプリ画面1
アプリ画面2
Acer Crystal Eye
Acer Explorer
Music Maker Jam
Shark Dash

 デスクトップアプリは、「Acer Instant Update ユーティリティ」、「Acer Power Management」、「AcerCloud」、「Docs」、「clear.fi Media」、「clear.fi Photo」、「Live Update」、「Dolby」、「Nero BackItUp」、「マカフィー インターネットセキュリティスィート」、「Norton Online Backup」など。

 Acer Power Managementは、一般的なパワーマネジメント機能ではなく、バッテリ残量に影響するアプリやUSBデバイスをオン/オフする仕掛けだ。また、clear.fi Mediaは前もそうだったが、nasneにはアクセスできるものの、普通のMP4も含め再生できなかった。

Acer Power Management
AcerCloud
clear.fi Media
clear.fi Photo
Nero BackItUp
Dolby Home Theater v4

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 7とBBenchの結果を見たい。参考までにCrystalMarkの結果も掲載した(今回の条件的には特に問題は無い)。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.6。プロセッサ 5.5、メモリ 5.5、グラフィックス 4.6、ゲーム用グラフィックス 6.1、プライマリハードディスク 8.1。PCMark 7は3329 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 22275、FPU 20761、MEM 21387、HDD 42080、GDI 7897、D2D 1064、OGL 3088。全体的にバランスが良く、ストレージが高速なので、実際操作すると快適だ。また電源オン/オフも含め、復帰/スタンバイが速い。

 BBenchは、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残2%で23,648秒/6.6時間。仕様上の6時間を越えた。通常の5%でも6.3時間だ。スリープからの復帰も速いので、うまく使えば丸1日は無理にしても、実作業時間はカバーできるかも知れない。

Windows エクスペリエンス インデックス(Windows 8から最大9.9へ変更)。総合 4.6。プロセッサ 5.5、メモリ 5.5、グラフィックス 4.6、ゲーム用グラフィックス 6.1、プライマリハードディスク 8.1
PCMark 7。3329 PCMarks
BBench。バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残2%で23,648秒/6.6時間
CrystalMark。ALU 22275、FPU 20761、MEM 21387、HDD 42080、GDI 7897、D2D 1064、OGL 3088

 以上のようにAcer「Aspire P3」は、IPS式11.6型のタッチ対応液晶パネルを搭載した、タブレットにもUltrabookにもなるコンバーチブルなPCだ。バッテリ駆動で6時間動き、Bluetoothキーボードカバーも含め全体的にうまくまとめられている。

 メモリ2GBと言うのは惜しいところだが、Atom(Clover Tail)を搭載したタブレットではパワー的に不安があるユーザーにお勧めしたい1台だ。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/