西川和久の不定期コラム
日本エイサー「ICONIA W700D」
~カバー/スタンドになるBluetoothキーボード付属のWindows 8タブレット
(2013/3/12 00:00)
日本エイサーは2月20日、タブレットシリーズ「ICONIA」の最上位モデルとなるWindows 8タブレット「ICONIA W700D」を発表、22日より発売した。「ICONIA W700」の上位モデルに相当し、プロセッサとSSDをパワーアップし、カバー/スタンド一体型のBluetoothキーボードが付属する。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。
Core i5を搭載した10点マルチタッチ対応タブレット
サイトによると、同社のタブレットは「ICONIA W7」、「ICONIA W5」、「ICONIA A Series」の3機種が用意されている。「ICONIA W5」は10.1型の液晶パネルを搭載したWindows 8機、「ICONIA A Series」は、10.1型の液晶パネルを搭載したAndroid機。そして「ICONIA W7」は、11.6型の液晶パネルを搭載したWindows 8機となる。
「ICONIA W7」は2モデルあり、1つはCore i3/SSD 64GBにクレードルを加えた構成の「ICONIA W700」。もう1つは今回ご紹介する「ICONIA W700D」だ。W700と比較してW700Dは、プロセッサがCore i3からCore i5へ、SSDが64GBから128GBへ、そしてクレードルではなく、カバー/スタンド一体型のBluetoothキーボードが付属する点に変わったことである。主な仕様は以下の通り。
Acer「ICONIA W700D」の仕様 | |
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プロセッサ | Intel Core i5-3337U(2コア/4スレッド、1.8GHz/TB:2.7GHz、キャッシュ3MB、TDP 17W) |
メモリ | 4GB(最大/スロット無し) |
チップセット | Intel HM77 Express |
SSD | 128GB |
OS | Windows 8(64bit) |
ディスプレイ | IPS式11.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,920×1,080ドット、10点タッチ対応 |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000、Micro HDMI出力、Micro HDMI→VGA変換アダプタ付属 |
ネットワーク | IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0+HS |
その他 | USB 3.0×1、マイク、音声入出力、前面HD/背面500万画素カメラ、カバー/スタンド一体型のBluetoothキーボード付属 |
センサー | 照度センサー、ジャイロスコープ、加速度センサー、電子コンパス |
サイズ/重量 | 295×191×9.15~11.9mm(幅×奥行き×高さ)/約950g(本体のみ) |
バッテリ駆動時間 | 最大約9時間(3セル) |
店頭予想価格 | 9万円前後 |
プロセッサは、Intel Core i5-3337U。2コア4スレッドで、クロックは1.8GHz。Turbo Boost時2.7GHzまで上昇する。キャッシュは3MBで、TDPは17WのULV版となる。チップセットは、Intel HM77 Express。メモリは4GB固定で増設はできない。OSは64bit版のWindows 8を搭載する。ストレージは128GBのSSDだ。
グラフィックスは、プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000。Micro HDMI出力を搭載し、Micro HDMI→VGA変換アダプタも付属する。
液晶パネルは、10点タッチ対応のIPS式11.6型(光沢)で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHDとなる。これまで試用したWindows 8機は全て5点タッチだったこともあり、その差が気になるところ。
ネットワークは、無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n、有線LANは無い。Bluetooth 4.0+HSにも対応し、付属のカバー/スタンド一体型キーボードなどで利用可能だ。なおこのキーボードはUSB充電式。USBケーブルも付属する。
その他のインターフェイスは、USB 3.0×1、マイク、音声入出力、前面HD/背面500万画素カメラ。センサーは、照度センサー、ジャイロスコープ、加速度センサー、電子コンパスと、一通り揃っている。ただSDカードリーダがなく、外部メディアを直接読み書きできないのは残念なところか。
サイズは295×191×9.15~11.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約950g(本体のみ)。さすがに10.1型タイプと比較すると一回り大きい。バッテリは3セルタイプを内蔵し、最大駆動時間は約9時間。店頭予想価格は9万円前後でケースタイプとは言え、キーボードも付属していることもあり、同クラスのUltrabookと大差無い。
タブレット単体としてみた場合、11.6型と言うこともあり、見慣れたiPadや10.1型のAndroidタブレットより、大きく重く感じる。iPadと比較している写真を掲載したので、サイズ感が分かるだろうか。ただし、Core i5-3337U搭載機としては、1kgを切り、厚み約10mm(9.15~11.9mm)と言うのは、良い意味でインパクトがある。
液晶パネルとそのフチ以外はアルミニウム素材で覆われスタイリッシュなデザインだ。上に画面回転ロックスイッチ、左にMicro HDMI、USB 3.0、電源入力、右に電源ボタン、音量調整、音声入出力、下に丸い凹みがスピーカー用のホール。各ボタンやスイッチ、コネクタの位置も悪くない。掲載した写真からは分かりにくいが、下側側面左右にある、スピーカーの音が出てくるホール(丸い穴が左右に3つ)の奥は赤色になっており、なかなかカッコいい。ACアダプタは約90×65×20mm/重量213gと、比較的コンパクトだ。
10点タッチの液晶パネルは、IPS式なので視野角が広く、また明るい。輝度を最小にしても室内なら十分見ることができる。発色やコントラストも良好だ。タッチが5点か10点かの違いは、試した範囲では差が感じられなかった。
前面と背面にあるカメラは、少し試したところ、ビデオ用途が主で、写真の画質に関してはあまり良くない。
振動や発熱、ノイズに関しては皆無。サウンドは、DOLBY HOME THEATER V4をオンにした状態だと出力も十分。クオリティも高い。オフにすると全体的に痩せてしまいつまらない音となる。ただし、ONで最大音量だとソースによっては若干歪む。
液晶パネルが大きいので、全体的に大柄になってしまうものの、クオリティ自体は非常に高く、気になる点の無いタブレットだ。
付属のカバー/スタンド一体型のBluetoothキーボードは、写真からも分かるように、片面がキーボード、片面がタブレットが収まるスペースになっている。キーボード左上に電源スイッチ、その側面に充電用のUSBポートがある。外側は革張りでマットな手触り。
キーボードは、薄くするためストロークはかなり浅いタイプが使われている。とは言え、たわみなども無く、この浅いストロークが気にならなければ(もしくは慣れれば)快適に操作可能だ。キーピッチは主要キー間で約19mm。ただ欲を言えば、タッチパッドなど何かポインティングデバイスも欲しいところだ。
タブレットを装着する機構は、機械的では無く、単にソフトケースへ本体を収める仕掛になっている。ただ付け外しが結構しにくく、見た目もあまり良くないのは残念な部分か。本体側の質感が良いだけに逆にチープさが目立ってしまう格好だ。単独で600gあり、合体すると約1.5kg。結構な重量となる。
キーボード側にある凹みへタブレットを固定するため、例えばテーブル上の移動は、キーボード側を引きずらないと(もしくは持ち上げないと)、この凹みからタブレットが外れてしまい扱いにくい。
BBenchで約9時間作動しiPadなどと同等のタブレット感覚で使用可能
OSは64bit版のWindows 8。スタート画面は、2画面+αと、フルHD機としては若干多めだ。初期起動時のデスクトップは、Acer Backup Manager、AcerRing、Help and Support、Norton Online Backup、マカフィー インターネットセキュリティ スイートのショートカット、そしてタスクバーにAcer Power Button、clear.fi Media/clear.fi Photoなどが置かれている。
SSDはTOSHIBA「THNSNS128GMCP」を搭載し、C:ドライブのみの1パーティション。約118GBが割当てられ、空きは96.8GB。Wi-FiモジュールはQualcomm製だ。
プリインストール済みのWindowsストアアプリは、Acer Crystal Eye、Acer Explorer、Cut The Rope、Evernote、Fresh Paint、Microsoft Minesweeper、newsXpresso、Shark Dash、Skitch、Skype、Social Jogger、Taptiles、TuneIn Radio。多くはWindowsストアでメジャーなものだ。
Acer Crystal Eye、Acer Explorerが同社独自のアプリとなるが、前者はカメラの拡張版、後者はプリインストールアプリの解説となっている。
デスクトップアプリは、Acer Backup Manager、Acer Instant Update ユーティリティ、Acer Power Button、Acer Power Management、AcerCloud、AcerCloud Docs、AcerRing、clear.fi Media、clear.fi Photo、Live Update、Dolby、Norton Online Backup、マカフィー インターネットセキュリティなど。主に同社のユーティリティ系だ。
Acer Power Buttonはタスクバー上にありWindows 8初心者でも迷わず電源ボタンを操作できる仕掛け。Acer Power Managementは一見電源管理の拡張版に見えるものの、内容的には電源を消費するアプリや周辺機のモニタツールとなる。
AcerCloudは、AppleのiCloudのように写真/音楽/動画/書類などを同じAcer IDを持つPCやスマートフォン、タブレットなどでデータ共有できるクラウドサービス。clear.fi Media/clear.fi Photoは、ローカルネットワークやAcerCloudを使ったコンテンツ共有。clear.fi PhotoのPicStreamはiCloudのフォトストリームと同じような機能を持つ。
AcerRingタッチを考慮したダイアルのような全画面UIで、ドキュメント/お気に入りのアプリ/デバイス制御/ビデオ/写真などの表示・再生などが行なえる。
できればAcerRingダイアル、clear.fi Media/clear.fi PhotoはWindowsストアアプリ化して欲しいところ。
なお画面キャプチャでは、clear.fi Mediaでnasneは見えており、各フォルダにアクセスできるものの、地デジの録画及び、一般的なH.264も含め再生できなかった。
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 7とBBenchの結果を見たい。参考までにCrystalMarkの結果も掲載した(今回の条件的には特に問題は無い)。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.4。プロセッサ 6.9、メモリ 5.9、グラフィックス 5.4、ゲーム用グラフィックス 6.2、プライマリハードディスク 8.1。PCMark 7は4553 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 39696、FPU 33757、MEM 34258、HDD 43646、GDI 13691、D2D 1720、OGL 4581。Intel Core i5-3337UとSSD搭載機としては平均的な値だ。若干HDDが高速だろうか。
BBenchは、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/ONでの結果だ。バッテリの残5%で32,045秒/8.9時間。スペック上最大9時間なので、ほぼ定格通りだといえる。スタンバイへの移行/復帰も速く、Core i5搭載機でこれだけ長時間作動すれば、iPadやAndroidタブレットのような感覚で操作が可能になりそうな雰囲気だ。
以上のようにAcer「ICONIA W700D」は、10点タッチ対応11.6型IPSフルHD液晶パネルを搭載、Core i5そしてSSDの容量は128GBと、かなり実用的なWindows 8タブレットだ。バッテリ駆動時間が8時間を超え、屋外はもちん、iPadなどと同じタブレット感覚で使用できる。
付属しているカバー/スタンド一体型のBluetoothキーボードは、質感や使い勝手が若干気になるものの、文字入力主体の作業時は効果抜群だ。
内容を考えると価格も手頃。Windows 8が動くタブレットを検討しているユーザーの候補になりうる1台と言えよう。