■西川和久の不定期コラム■
「EIZO FlexScan T2351W-L」
株式会社ナナオは、10月15日にマルチタッチに対応した23型液晶ディスプレイ「FlexScan T2351W-L」を発売する。マルチタッチ対応、PaperモードやGameモードなどの表示モードを持ち、チルト角最大65度など、なかなか個性的な液晶ディスプレイだ。発売に先立ち量産試作機が届いたので、早速試してみた。
●LaidBack Standでチルト角が最大65度
「EIZO FlexScan T2351W-L」のベースとなるモデルは「FlexScan EV2334W」。23型VA方式のフルHD/1,980×1,080ドットの液晶ディスプレイだ。コントラスト比は3000:1、反応速度は7ms(中間色)/25ms(黒→白→黒)、視野角は水平178度/垂直178度。動画をクリアに表示できるオーバードライブ搭載、滑らかな階調表示を実現する10bitガンマ補正、そして、同社のカラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」にも対応している。特徴としては、動画表示時に解像感を強調する技術「Power Resolution」機能を持っていることだろう。
そしてこのT2351W-Lは「LaidBack Stand」と「マルチタッチ」を新たに追加。前者はチルト角を15度~65度まで10度ずつ6段階に設定できる。特に65度まで倒すと、今までの液晶ディスプレイのイメージからかなり違った雰囲気だ。マルチタッチに関しては説明の必要は無いだろう。主な仕様は以下の通り。
【表】EIZO FlexScan T2351W-Lの仕様タイプ | VA(オーバードライブ回路搭載)/グレアパネル |
推奨最大解像度 | 1,920×1,080ドット |
スクリーンサイズ | 509.76×286.74mm |
ドットピッチ | 0.2655×0.2655mm |
応答速度 | 7ms(中間色)、25ms(黒→白→黒) |
視野角 | 水平178度/垂直178度 |
輝度 | 265cd/m2 |
コントラスト比 | 3,000:1 |
色調整 | 輝度、黒レベル、コントラスト、色温度(14段階:4,000K~10,000Kまで500K単位、9,300K)、ガンマ調整、色の濃さ、色合い、ゲイン、Power Resolution、オーバードライブ、リセット |
タッチパネル | 赤外線光学イメージング方式(USBシリアル転送) |
表面硬度 | 6Mohs |
対応OS | Windows 7(32/64bit)/Vista(32/64bit) |
入力信号/端子 | ミニD-Sub15ピン、DVI-D×1、HDMI×1、ステレオミニジャック(入力)×1、ヘッドフォン端子×1、USB 2.0:up×1 |
チルト | 15度/25度/35度/45度/55度/65度 |
スピーカー | 350mW(モノラル) |
サイズ/重量(幅×奥行き×高さ) | 557×204.5~375.5×194~367mm/7.64kg(スタンド含) |
価格 | 69,800円(直販価格) |
ベースになったEV2334Wと比較して基本性能が異なる部分として輝度があげられる。300cd/m2:265cd/m2と、若干暗くなっている。後述する強化ガラスの影響だろうか。
色調整は、輝度/黒レベル/コントラスト/色温度(14段階:4,000K~10,000Kまで500K単位、9,300K)/ガンマ調整/色の濃さ/色合い/ゲイン/Power Resolution/オーバードライブなどに対応。ユーザー設定として2つプリセット可能だ。
タッチパネルは赤外線光学イメージング方式。PCとの接続はUSBケーブルを使う。タッチパネルの場合、その表面の材質などが気になるが、表面硬度6Mohsの強化ガラスを使っているので耐久性に優れているため安心だ。Mohs(モース硬度)は1~10ランクあり、6は正長石と同等の硬さと言うことらしい。ちなみに最大の10はこれ以上硬いものがないダイヤモンド。対応OSは、32/64bit版Windows 7と32/64bit版Windows Vista。但しUSBに関してはタッチパネルコントロール用で、USB Hubの機能は無い。
入力は、ミニD-Sub15ピン、DVI-D×1、HDMI×1の計3系統だ。音声用として、ステレオミニジャック×1、ヘッドフォン端子×1もある。スピーカーは内蔵しているが、モノラルなのが残念な部分か。
カラーバリエーションは、ブラック/T2351W-LBKとグレイブラック/T2351W-LGBの二種類。今回届いたのはグレイブラックモデルだ。直販価格で69,800円。EV2334Wは49,800円なので、タッチパネルなど+αの部分で2万円アップとなる。
第一印象は、一般的なスタンドがない分、23型でもコンパクトな雰囲気。スタンド込みで7.64kgなので、持ち上げても特別重いと言う感じでは無い。全体的な質感はチープな部分も皆無でなかなかグッドだ。ただパネルのフチ、下の部分が直接机に付くため、低めの机に設置しないとパネルの角度と視線の角度が合わなくなる。スイッチ類は左下にまとめられ押しやすい上に分かりやすい。
本機の特徴であるLaidBack Standは、裏側上にある赤い部分を引っ張るとロックが外れ好きな角度に調整できる。15度の位置なら普通のディスプレイであるが、65度まで倒すと、まるで大型のタブレットPCだ。またVESAマウントにも対応している。
発色は主にプリセットのsRGBでチェックしたが、さすがに同社らしく、派手過ぎず地味過ぎず、落ち着いたニュートラルな映りだ。文字中心でも画像中心でもどちらにも対応できる。
1つ興味深い機能として「Gameモード」と「Paperモード」が挙げられる。Gameモードは、自動的に「Power Resolution」(EIZO独自のチューニングで画像の解像感を強調)と「Power Gamma」(ゲームやアニメ映像に適した専用ガンマモード)が起動し、ゲームに適したメリハリのある映像となる。Paperモードは、紙の見え方に近い色味とコントラストに調整する。
実際にそれぞれの表示を掲載したが、ご覧のように方やハイコントラストでシャープネス強め、方やコントラスト浅めで優しい感じと、その映りは真逆の特徴を持つ。特にPaperモードは、LaidBack Standでかなり角度を付けると、文字中心のWebサイトやOffice系データ、電子書籍などを見る時に良さそうだ。
Gameモード。シャープネスやコントラストが強調される | Paperモード。Gameモードとは逆に、目に優しい表示だ | EcoView Index。省電力の度合いを分かりやすいゲージで表示 |
パネル下一番左側にある「Auto EcoViewセンサー」を使い、周囲の明るさを検知してディスプレイを最適な明るさにする自動調光機能Auto EcoViewは、部屋の明るさにあわせて輝度を調整する必要もなく便利。加えて「EcoView Index」は一目で省電力の度合いが分かり、常にEcoを意識しながら操作できる。
中央のモノラルスピーカーは、ステレオミニジャック(入力)からか、HDMIの音を出力できる。モノラル加え出力が350mWと小さめなので、音重視なら外部にスピーカーを設置したい。
●マルチタッチ対応マルチタッチ機能を有効にするには、USBケーブルをPCへ接続、「EIZO LCD Utility Disk Setup」を使って、タッチパネルドライバと(必要であれば)キャリブレーションユーティリティをインストールする。対応OSは冒頭に書いた様に、32/64bit版のWindows 7またはVistaだ。
筆者の場合、Windows 7のマルチタッチは、「ThinkPad X201 Tablet」、「Eee PC T91MT」など、パネルサイズの小さいものでしか試したことが無く、今回はじめて23型とかなり大きいパネルで操作したところ、指の大きさとパネルの面積の割合が調度良いのか、ノートPCでは少し使い辛かった操作も割とスムーズに行えた。タッチペンでは無く、指でタッチする場合、このサイズならではのメリットと言えよう。
テストに使用したマシンは、AspireRevo ASR3610-A44(Atom 330/2GB/ION)と割と非力だが、ご覧のように比較的滑らかに動いている。
ただグレアパネルへ指でタッチすると、指紋跡はかなり目立つ。こればかりは付属のクリーニングクロスなどを使いまめに掃除するしかなさそうだ。
EIZO LCD Utility Disk Setup | タッチスクリーン調整ユーティリティ | 現在のフリック設定 |
【動画】Windows 7でマルチタッチを試す |
以上のように「EIZO FlexScan T2351W-L」は、23型液晶フルHDディスプレイとして、しっかり基本を抑えた上で、最大65度チルトできるLaidBack Stand、GameモードやPaperモード、そしてマルチタッチ対応と、一般的なディスプレイには見られない特徴を持つ。システムや用途的に「こんなディスプレイが欲しかった!」と言う人も割と多いのではないだろうか。