■西川和久の不定期コラム■
「HP ZR22wプロフェッショナル液晶モニタ」
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、4月に同社のワークステーションとセット向けとなるS-IPSパネル搭載液晶ディスプレイ「HP ZR22wプロフェッショナル液晶モニタ」と「HP ZR24wプロフェッショナル液晶モニタ」の単体発売を開始した。広い視野角が特徴的なIPS液晶パネルで安価なモニタは数が少なく、気になっている人も多いのではないだろうか。21.5型の「ZR22w」が届いたので、使用レポートをお届けする。
●HP ZR22wの特徴これまで同社のワークステーション用液晶ディスプレイは、22型ワイド「HP LP2275wプロフェッショナル液晶モニタ」(S-PVA)、24型ワイド「HP LP2475wプロフェッショナル液晶モニタ」(S-IPS)、30型ワイド「HP LP3065 ワイドTFTフラットパネルモニタ」(S-IPS)、24型ワイドでハードウェアキャリブレーション対応の「HP DreamColor LP2480zx プロフェッショナル液晶モニタ」(IPS)の4機種があり、価格は44,100円~241,500円と幅広かった。今回、ここに安価な2機種が追加となった。
最大の特徴は21.5型ワイドのS-IPSパネルを搭載し、36,750円(直販価格)を実現していることだろう。昨今、液晶ディスプレイの低価格化には驚くものがあるが、IPSパネルで3万円台と言うのはちょっとビックリの価格だ。
さらにS-IPSタイプとしては珍しく、国際エネルギースタープログラム(バージョン5.0)に対応した省エネルギーモデルでもある。リサイクル合成樹脂を25%使用し、85%の電源効率を実現している。
スペックを抜粋すると以下の通りとなる。
パネル | S-IPS(UH-IPS)、アクティブマトリックスTFT液晶(非光沢) |
有効表示サイズ | 21.5型(54.61cm)/フルHD(1,920×1,080ドット) |
スクリーンサイズ | 475×298mm |
ドットピッチ | 0.2475mm |
応答速度 | 8ms(中間色)/16ms(黒白黒) |
表示色数 | NTSC比 82%(CIE 1976)、sRGBカバー率 96%(CIE 1931)/90%(CIE 1976) |
視野角 | 上下/左右とも178度 |
輝度 | 250cd/平方m |
コントラスト比 | 1,000:1、ダイナミックコントラスト比3,000:1 |
入力信号/端子 | DVI-D(HDCP)×1、DisplayPort×1、ミニD-Sub15ピン×1 |
サイズ/重量 | 507×230×367~457mm(幅×奥行き×高さ)/7.24kg(スタンド含) |
直販価格 | 36,750円 |
デザインは、全体が非光沢ブラック、サイド部分にアルミを使用し、全体的にクールなイメージ。縁の部分も約15mmと狭い。多くの机や用途にマッチしそうだ。スタンドの高さは90mmの調整が可能だ。またピボット回転にも対応している。全体的にガタつきもなく、安定しており、ガッチリ机に置くことができる。
解像度はフルHDの1,920×1,080ドット、そしてパネルは非光沢。十分な解像度で、パネル面が光らず落ち着いて作業できる。発色は原色系が地味目であるが、価格を考えるとなかなかのクオリティと言えよう。IPSパネルの特徴である視野角は、上下/左右とも178度とかなり広い。通常、1人で正面に座り使う時はここまで広い視野角は必要ないものの、ピボット回転時は結構端と端とで角度がつくし、例えば会議中、皆で見るケースなども考えられるので、視野角は広い方が良い。
ディスプレイインターフェイスは、DVI-D(HDCP)、ミニD-Sub15ピンに加えDisplayPortにも対応している。ただ、最近どちらかと言えば、HDMIの方が一般的になっており、用途によっては使い辛い面もありそうだ。USBは、アップストリーム×1、ダウンストリーム×4(側面×2、背面×2)を搭載。周辺器の接続に役に立つ。但し、スピーカーは内蔵していない。
画面の右下にある5つのスイッチは、左から順に[OSD]、[-]、[+/Source]、[OK/Auto]、[電源]となっている。軽いタッチで操作でき、押す度にパネルがグラグラ揺れるようなことは無い。分かり易い内容なので、マニュアルを見なくても操作可能だ。
ZR22wは、ピボット回転だけでなく、パネル本体の角度ももちろん、スタンドを軸としたパネルの左右回転も出来る。それぞれの角度は「コネクタ部2」の写真にある位置が最大となる。たまたま筆者が持っている液晶ディスプレイは全て左右の回転ができないものばかりなので、設置場所によっては重宝しそうだ。
カラープリセットは、「5000K」、「6500K(sRGB)」、「9300K」、「Custom」の4パターン。ハードウェアキャリブレーションには対応していないものの、ソフトウェアキャリブレーションとCustomである程度追い込むことは可能だろう。
以上のことから分かるように、機能的には非常にオーソドックスなもので、誰でも簡単に扱える内容となっている。既にこのパネルサイズの液晶モニタは2万円を切っているものもあるが、少し上乗せするだけでIPSパネルに手が届くのが最大の特徴と言える。PC本体と違って、ディスプレイはなかなか買い換えないため、少し背伸びするのもありだろう。
なお冒頭でも触れたが、同スペックでパネルが24型ワイドの「HP ZR24w プロフェッショナル液晶モニタ」が57,750円(直販価格)。そして、同じく24型ワイドS-IPSパネルで、DisplayPortに加えHDMIにも対応し、NTSC比102%とAdobe RGB 99.7%のカバー率などの特徴を持つ「HP LP2475wプロフェッショナル液晶モニタ」が69,300円(同)と、もう少し上位のモデルもあるので(どちらも1,920×1,200ドット)、興味のある人は見て欲しい。
●IPSパネルの魅力液晶パネルは大きく分けて、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Virtical Alignment)方式、IPS(In-Place-Switching)方式と、3種類がある。基本的にPCで静止画を扱う限りTN<VA<IPSの順で高性能で、その分価格も高くなる。
但し動画も含めた総合性能では、良質なVAパネルが安価なIPSパネルの性能を上回ることもある。あくまでも構造上の話で、必ずこれに当てはまるわけではない。
本来なら同クラスの各パネルを用意し比較したいところであるが、該当する液晶ディスプレイを持ち合わせてないため、単純にZR22wの角度を変えデジカメで撮って視野角の広さをチェックしてみた。厳密に撮影したわけでは無いが、雰囲気は伝わると思われる。
ThinkPadとのツーショット。ThinkPad X201iのウルトラベースの出力はDisplayPort | 正面からの発色 | 斜め約45度からの発色。色温度や露出などの条件は合わせているので相対的には比較可能 |
PC側は、ThinkPad X201iのウルトラベースにあるDisplayPortからの出力を利用している。写真は正面から撮ったものと、右約45度から撮った写真を掲載した。もともと視野角が上下/左右178度もあるので、たった45度程度では意味は無いかも知れないが、実際、一般的な安価な液晶パネルを45度から見て欲しい。正面から見た映りと随分違うはずだ。しかしS-IPSパネルを使ったZR22wは、全く変化してないことが分かる。さすがと言ったところだろう。
●新しくなったケーブルマネジメント多くの液晶ディスプレイは、ケーブルを一旦上に向け、スタンドの後ろ(または中)を通す様なケーブルの引き回しをする構造になっていることが多い。電源ケーブルと1系統程度ならあまり気にならないが、複数の信号ケーブルをこの方式で収納すると、なかなかうまく中に入らなかったり、面倒な場合がある。その替わり、ディスプレイの下にはケーブルが一切見えずに非常にスッキリする。
対してZR22wはちょっと変わった設計になっている。写真をご覧頂きたいが、スタンドの下に穴があり、そこへケーブルを通す仕掛けだ。手順は「小さいパネルを外し」、「後ろからケーブルを通して配線」、「最後に外したパネルでケーブルをまとめて止める」と、このようになる。
パネルを外し裏からケーブルを通す | パネルを付ける | 裏側 |
この方式の利点としては、比較的多くのケーブルを簡単に短時間にまとめられることだろう。加えてコネクタに余計な力がかからず、接触不良などが発生し難くそうだ(上げる時は結構強引に引っ張っている)。ただ、DVIケーブルや電源ケーブルなど、コネクタのサイズが大きいものを先に通さないと配線が難しい。またピボット回転すると、回転分ケーブルが引っ張られるので長さに余裕が必要だ。
欠点は本体の下にケーブルが見えること。スタンドの裏を通す方法と比較すると一長一短であるが、これはこれで面白い仕掛けだ。
HPダイレクトでの直販価格は36,750円とS-IPSディスプレイとしては非常に安く、DisplayPort/DVI-D/D-Sub 15ピンの3入力も備えている。HDMI入力やスピーカーを内蔵していないので、コンテンツ再生用としては扱い辛いかも知れないが、非光沢と言うこともあり、作業用としては文句無し。安価なS-IPSディスプレイを探しているユーザーにはお勧めの逸品と言えよう。