西川和久の不定期コラム

日本エイサー「Aspire One D250/751」を試す



 数年前まで国内ではあまり知られていなかったメーカーが最近日本市場を賑わしている。もちろんきっかけはネットブックの台頭だ。どこの量販店へ行っても、国内メーカーより幅広いラインナップを揃え、所狭しと並んでいる。もう既に筆者でさえ型番とスペックが一致しなくなるほどの機種が出荷中だ。その代表格とも言える日本エイサーの製品が一気に編集部から3台届いた。2つはタイプの異なったネットブック、もう1つはホームサーバーだ。今回はこれらの製品を一気にご紹介したい。




●Aspire One D250

 筆者は初代Aspire oneを一時期所有していたことがある。初期のネットブックとしては、Eee PCと二分する人気を誇っていただけに、その最新型にはかなりの期待感! 「Aspire One D250」は、従来からある液晶パネル10.1型/1,024×600ドットを搭載したモデルの改良&パワーアップ版だ。CPUにはFSBが667MHzになったAtom N280プロセッサ(1.66GHz/cache 512KB/FSB 667MHz)。もちろんN270同様、Hyper-threadingはON。N270のFSB高速版N280を採用しているところから分かるように、チップセットはIntel 945GSE、グラフィックスはGMA 950となっている。

 それ以外の仕様は、メモリ1GB、HDD 160GB、IEEE 802.11b/g、Ethernet、Bluetooth 2.0+EDR、30万画素のWebカメラ、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、All-in-Oneカードリーダー、USB 2.0×3、サウンド入出力などを搭載し、258.5×184×25.4mm(幅×奥行き×高さ)の重量約1.07kg。高さ25.4mmからも分かるように少しスリムで全体的なデザインもなかなかGoodだ。

 CPUやチップセットなどはほぼ同じなので、全体的なパフォーマンスにはあまり変化無いのだが、初期のAspire OneとD250とを比較するとその印象はまるで別物。質感や操作性全てにおいて良くなった。また、Bluetoothを内蔵しているのも嬉しいところ。タッチパッドも滑りが良く、オペレーションしやすい。

スッキリしたクールなデザインでなかなかいい実は後述する751ではシールを剥がしパネルを開けたのだが、D250ではパネルは外していない。左がHDD、中央がメモリ、右側に無線LANユニットが入っている
ネットワーク、アナログRGB出力、USB 2.0×1、オーディオ入出力。左上のパネルとキーボードの間に見えるボタンはBluetoothのON/OFFスイッチロックポート、電源入力、USB 2.0×2、メディアリーダ。結構薄いのが分かるキー幅は約17mmを確保。またキートップとキートップの間が空いているので、入力時に隣のキートップに触れることは無い

 キーボードはたわむ部分も無くがっりちしていて筆者好み、キー幅が約17mm確保され入力に支障は無い。パームレストに手を置いてもHDDの振動もほとんど感じず快適だ。またグラフィックエンジンであるGMA 950の性能自体は変わらないのだが、CPUが若干高速になった分、画面描画が向上しておりキレが良くなった。

 これについては「たった0.06GHzの変化なので解らないのでは?」と思われるかもしれないが、実は届いた当初、スペックを知らずに開封、動かしたところ「あれ!? Atom + Intel 945GSE/GMA 950の割には少し速いな!」と思い、品番で調べたところCPUがN280と分かったのだ。このN280は冒頭で述べたようにFSBが少し速くなっているので、ビデオメモリをメインメモリとシェアするGMA 950での作動にも影響があるのだろう。実際ベンチマークでそれなりの差が出ている。N280を搭載したネットブックは今回初めて使っているが、確実に体感速度でも気が付く範囲でスピードアップしていると思われる。

 更に初期モデルでは簡単にHDDやメモリへアクセス出来なかったのだが、D250ではメーカー保障外となるものの、ドライバー1本でアクセスできるようになった。メモリ増設やSSD化も容易である。

デバイスドライバ/主要なデバイスHDBench(N270/Eee PC 901-X)HDBench(N280)

●Aspire One 751

 Aspire One D250が予想以上に良かったので、新シリーズの「Aspire One 751」にもおのずと期待が高まった。最大の特徴は「11.6型ワイド 1,366×768ドット」の液晶パネルを搭載していることだ。ネットブックも出始めの頃は「7型で800×480ドット」など、液晶パネルのサイズと解像度が一般的なノートPCと比較してかなり低かった。そして次世代は9型や10型の1,024×600ドットもしくは1,024×576ドット。幅こそXGA並みになったものの、XGAの縦768ドットにはまだ足らない。こうなる理由は、コストや物理的にはもちろん可能であるが、IntelそしてMicrosoftのネットブックの定義から制限されているためだ。ただ最近になってこの解像度とパネルサイズの制限が緩和されたのか、Aspire One 751も含め、1,024×600ドットを上回るものが出荷され始めた。

 CPUはAtom Z520(1.33GHz/cache 512KB/FSB 533MHz)。Hyper-threadingに対応し、TDPはたった2Wだ。チップセットはIntel SCH US15Wが使われている。このAtom ZシリーズのCPUは、同じAtomプロセッサでも230/330/N270/N280とは異なる製品で、TDP値からの分かるようにもともとはノートPCより更に小さいデバイスへの用途で開発されていた。従ってチップセットもAtomプロセッサ用として定番のIntel 945GSEを使わず、MCHとICHをワンチップにまとめTDPの低いUS15Wがコンビとなる。このトータルの低TDP化の効果で3セルバッテリでの駆動時間は約4時間。6セルなら倍の約8時間を可能にしている。

 それ以外の仕様は、メモリ1GB、HDD 160GB、IEEE 802.11b/g、Ethernet、Bluetooth 2.0+EDR、30万画素のWebカメラ、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、All-in-Oneカードリーダー、USB 2.0×3、サウンド入出力などを搭載し、284×198×25.4mm(同)の重量約1.35kg。パネルサイズが大きい分、ボディーも一般的なネットブックと比較して大きい。ただ、高さ25.4mmからも分かるように少しスリムで全体的なデザインも初期のネットブックとは違い、随分クールで高級感が漂うようになってきた。

 サイズが大きくなった分、より改善されている部分が「キーボードのキー幅」だ。最近のネットブックでは特に入力しやすさをアピールしているものが多く、10型の液晶パネル搭載機でもキー幅は17mm程度が確保されている。フルキーボードとまでは行かないものの、17mmあれば余程手が大きくない限り、普通に入力が可能だ。対してAspire One 751は「約19mm」。ほぼフルキーボードと変わらないものとなっている。また同社のHPには「キーをフローティング構造にした新感覚のキータッチ設計により、長時間のタイピングもスムーズで快適」と書かれており、キーボードへの拘りが感じられる。

10型の液晶パネルを搭載した一般的なネットブックより、どちらかと言えば普通のノートPCのサイズとなり貫禄があるシールを剥がさないと(保障対象外となる)ネジにアクセスできない。左上がHDD、右上がメモリ、中央下が無線LANユニット。初期モデルと異なりメンテナンス性は良いネットワーク、電源入力、USB 2.0×2、オーディオ入出力。電源入力の位置がD250の逆側になっている
アナログRGB出力、ロックポート、USB 2.0×1、メディアリーダー。D250同様、薄いことが分かるキー幅は約19mm。ただ、キートップとキートップの隙間が狭い上に、キートップ自体に凹凸が無く、個人的には打ち難かったAspire One D250とのサイズ比較。こうして重ねるとそれなりにサイズが違うことが分かる。どちらもデザインは良い

 さて実際の使用感は、個人の趣味趣向もあると思うが、残念ながら筆者的にはあまりよくない。まずパームレストの部分に手を置くとHDDの振動が伝わってくる(特に左側)。これまでHDD内蔵タイプのネットブックは数多く触ってきたが、これだけ振動を感じたのははじめてだ。次にキーボードがどうにも合わない。確かにキーピッチは広く、フルキーボードとサイズ的には変わらないのだが、全体的にかなりたわむ。筆者は昔からのThinkPadユーザーなので、まずキーボード自体がたわんだり、ぶれたり、フニャフニャするのはどうにも好きになれない。またキートップも平面だ。これだけキートップ自体のサイズが大きくなると、凹凸が無いと指で叩いた時に違和感を覚える。

 そして最後は描画速度。Intel US15W/GMA 500と分かった時点で結果は見えていたものの、ウィンド枠をズルズル引きずる描画は筆者的には我慢できない。ベンチマーク結果や体感的にはIntel 945GSE/GMA 950の半分程度のパフォーマンスだ。もちろん解像度が上がっているので一覧性と言う意味ではこれまでのネットブックには無い快適な環境なのだが、全ての効果をOFFにした状態でもこのキレの悪さはかなり気になる。

 ただし、GMA 500をWindows XPで使う時の制限事項で「動画コーデックのH.264/VC1/MPEG-4/MPEG-2/WMV9に対応する動画支援機能がドライバが無く使えない」と言う欠点があるものの、これについては付属の「PowerDVD 9」で対応している。画面キャプチャを参照して欲しいが、H.264/HDコンテンツがCPU使用率たった35%前後で再生できた。これはちょっと驚きで、普通なら紙芝居程度にしか再生されない。この点についてはGMA 950よりGMA 500の方が圧倒的に上である。

デバイスドライバ/主要なデバイスHDBenchの結果PowerDVD 9でHD/H.264を再生中

 以上のように、Aspire One 751はD250とは別の流れのラインナップだ。パネルが大きく、高解像度、キーピッチも広く、6セルバッテリを使えば約8時間駆動、H.264のHDコンテンツが再生可能など、非常に魅力的な部分がある反面、Windowsの描画速度、キーボードの質感、HDDの振動とマイナスポイントもあるのが残念な部分だ。この点に付いては個人差もあるため、ぜひ量販店で実際に触って確認して頂きたいと思う。

 さて、Aspire One D250と751の新型2機種、どちらが好みかと言えば、GMA 500の動画支援機能は魅力的であるが、ネットブックに求めるものが、ネット及び写真やテキスト処理が中心の筆者的としては前者となる。是非同じ10.1型の液晶パネルで1,366×768ドットのモデルが欲しいところだ。

●Aspire easyStore H340-S2

 Aspire easyStore H340-S2は、これまでの2機種とは違いホームサーバーだ。搭載しているOSはWindows Home Server(WHS) Power Pack 1。アーキテクチャ的にはAtom 230プロセッサとIntel 945GCEなので、ネットトップなどと同じである。ただネットトップと大きく違うのは「ホット・スワッピング」に対応したSATAドライブが4つあること。標準でのドライブ構成は、モデルによって異なり、「H340-S1」は1TBワンドライブ、3ドライブ空き、「H340-S2」は1TB×3で計3TB、1ドライブ空きとなっている。基本的にWHSなので、クライアントはWindows。ファイルの共有などはもちろん、システムを含む丸ごとバックアップ、そしてDLNAサーバー機能を備えている。WHS自体は以前記事を掲載しているのでそちらを参考にして欲しい。

 大きさは200×220×212mm(同)。重量は約5.1kg(HDD×1の場合)なので、HDDが3つあるH340-S2は、届いた時、柄が小さい割りにズッシリ重かった。電源ユニットは内蔵タイプ。音は3つもHDDを搭載している割には静かだ。これなら自宅で使用しても問題にならない範囲だろう。

HDDが計4つ入るので、そう考えると全体のサイズはコンパクトにまとまっている方だネットワーク、USB 2.0×2に加え、eSATAのポートがある
ホット・スワップに対応するHDDは取り外しが非常に簡単。H340-S2の場合は、一番下のドライブにシステムが入っているファンは電源ユニットに小さいのが1つと、この反対側に大きいのが1つ付いている。内部はあまり余裕が無さそうだ


 以上、駆け足であるが、日本エイサーの現行製品3機種をご紹介した。最新版のネットブックはどちらも第2世代とも呼べるもので、作りも含め非常に完成度が高くなっている。筆者的にはこれらに加えて、IONプラットフォームを採用した「AspireRevo」にも興味がある。これに付いてはまた別の機会にご紹介したい。いずれにしても同社の動向は今後益々目が離せなくなりそうだ。