西川和久の不定期コラム
日本HP「ZBook Studio G3 Mobile Workstation」
~Skylake世代のXeonとQuadro M1000M Special Editionを搭載したモバイルワークステーション
2016年2月16日 06:00
株式会社日本HPは1月29日、Skylake世代のCPUとQuadro M1000Mを搭載したモバイルワークステーションを3タイプ発表した。今回はその中から薄型・軽量タイプが送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。
Skylake世代のXeonとスペシャルなQuadro搭載
1月29日に発表されたのは、「HP ZBook Studio G3 Mobile Workstation」、「HP ZBook 15 G3 Mobile Workstation」、「HP ZBook 17 G3 Mobile Workstation」の3タイプ。パネルサイズは15.6/15.6/17.3型で、同じ15.6型は後者がHDD搭載可能となっている。
今回ご紹介するのはHP ZBook Studio G3 Mobile Workstationだ。3モデルが用意され、プロセッサが、Core i7-6700HQ/Xeon E3-1505M v5/Xeon E3-1545M v5となる。また最後のモデルのみディスプレイが4K、ほかはフルHDだ。
手元に届いたのは真ん中の「E3-1505M v5モデル」。主な仕様は以下の通り。
日本HP「ZBook Studio G3 Mobile Workstation/E3-1505M v5」の仕様 | |
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プロセッサ | Xeon E3-1505M v5(4コア/8スレッド、クロック 2.8GHz/3.7GHz、キャッシュ8MB、TDP 45W) |
チップセット | Intel CM236 |
メモリ | 16GB×1(2スロット/最大32GB)、2133MHz ECC DDR4-SDRAM |
ストレージ | 256GB M.2 SSD(NVMe対応) |
OS | Windows 10 Pro(64bit) |
ディスプレイ | IPS式15.6型(非光沢)、1,920×1,080ドット、タッチ非対応 |
グラフィックス | Quadro M1000M Special Edition(4GB)、HDMI出力 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | USB 3.0×3、USB 3.1/Thunderbolt 3(USB Type-C)×2、SDカードリーダ(UHS-II対応)、音声入出力、指紋認証センサー |
バッテリ駆動時間 | 最大約9.5時間(4セルリチウムイオン) |
サイズ/重量 | 375×255×18mm(幅×奥行き×高さ)/約2kg |
直販価格 | 25万円から(税別) |
プロセッサはSkylake世代のXeon E3-1505M v5。4コア8スレッドでクロックは2.8GHz/3.7GHz。キャッシュは8MBでTDPは45W。vProにも対応してる。チップセットは、Intel CM236。メモリスロットが2つあり、16GB×1/2133MHz ECC DDR4-SDRAMが搭載され、最大32GBまで対応可能だ。ストレージは256GB M.2 SSD/NVMe。プロセッサと共に高速作動が期待できる。
OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載。これまでワークステーションはアプリケーションの作動検証などがあるため、Windows 7のケースがほとんどだったが、やっとWindows 10へ世代替わりしそうだ。もちろんダウングレード権を使って64bit版のWindows 7 Professionalにすることも可能。
グラフィックスはQuadro M1000M Special Edition(4GB)。Skylake向けの15.6型プラットフォームとしてはミドルレンジで、コア数512、メモリはGDDR5で通常2GBを搭載している。しかしこのZBook Studio G3 Mobile Workstationには全モデル4GBを搭載したスペシャル版を採用。こう言った仕様はなかなか珍しい。外部出力用としてHDMIを備えている。
ディスプレイは、非光沢15.6型IPS式のフルHD/1,920×1,080ドット。タッチには対応してない。ほかの部分がハイスペックなだけに、もう一ランク上の解像度が欲しい場合には、4K対応の「E3-1545M v5モデル」がある。
ネットワークは、Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0。インターフェイスは、USB 3.0×3、USB 3.1/Thunderbolt 3(USB Type-C)×2、SDカードリーダ(UHS-II対応)、音声入出力。
3モデルある中、なぜかこのモデルに限りWebカメラが無い。USB 3.0は内1つがPoweredに対応。また、Thunderbolt 3(USB Type-C)が2つあるのは、例えば、ディスプレイとストレージなど個別に接続できので便利だ。
バッテリ駆動時間は4セルリチウムイオンで最大約9.5時間。サイズは、375×255×18mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2kg。同じコンセプトのモバイルワークステーション「ZBook 14 G2」は21mmの厚みだったが、更に薄型へ改良されている。ただし裏のカバーがツールレスではなくネジ止めに変更された(裏パネルを外すことは可能)。
税別直販価格は25万円からとなっており、この価格はCore i7-6700HQ搭載モデルだ。2月下旬販売開始予定であり、現在ほかのモデルの価格は不明だ。XeonでECCタイプのメモリなど、かなり高額になりそうな感じがする。
オプションとして、Thunderbolt 3用に、USB 3.0×4、DisplayPort×2、USB 3.1/Thunderbolt 3(Type-C)、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethrenet、音声入出力を備えたドッキングステーションも用意されている。こちらは4月中旬発売予定。
筐体にはアルミニウム製でCNC削り出しを採用。質感などのクオリティは最高だ。その分、持った時にはズッシリ重みを感じるが、もともと約2kgあるので仕方ないところ。逆に内容を考慮すると軽いとも言える。
前面は、パネル中央上にWebカメラらしい部分があるが、先に書いた通り、なぜかこのモデルだけ無く塞がれている。正面左側面に各種ステータスLED。裏は後ろ側が放熱用にかなり荒いメッシュになっているのが分かる。バッテリは内蔵で着脱できない。
左側面にロックポート、Gigabit Ethernet、USB 3.0×2、SDカードスロット。USB 3.0は手前がPowered USBだ。右側面は、電源入力、USB 3.1/Thunderbolt 3(USB Type-C)×2、HDMI、USB 3.0、音声入出力を配置。付属するACアダプタのサイズは実測で約152×65×22mm(同)/重量344g、19.5V/7.7A出力。新設計のもので、150W出力ながら従来の約565gより軽くなっている。細かいところだがポイントが高い。
ディスプレイは非光沢のIPS式フルHD/1,920×1,080ドット。高級モデルらしく、発色は派手でも地味でもなく、ニュートラル。明るさやコントラスト、視野角も十分。タッチ対応ではないが、用途的に問題ないだろう。
キーボードは、オフ/中/大と3段階のバックライトを装備した、アイソレーションタイプ。キーピッチは約19mmで感触も非常に良い。15.6型のフットプリントなので余裕がある分、歪な並びやキーピッチが狭くなる部分もなく、またたわまずと快適に入力可能だ。Intelのロゴの上に指紋認証センサーがある。タッチパッドは物理的なボタンが無い1枚プレートタイプだ。パームレストと共に十分な面積が確保され扱いやすい。滑りは良好で、少しストロークがあり、軽過ぎず、重過ぎず手に馴染む。
ノイズや振動はないものの、発熱はベンチマークテスト時にそれなりにあった。裏の後方(特に左側)、メッシュが荒くなっている部分は、一般的なノートPCでは経験したことのない熱さだった。また筐体もアルミニウム製で積極的に熱を逃がしているため、暖かくなる。
サウンドはBang & Olufsen。用途的にワークステーションなので、拘る必要も無さそうだが、この手のノートPCとしてはもったいない程のハイクオリティ。低音から高音までバランス良く、出力も十分だ。
全体的にコストを惜しまず、コンセプト通りに仕上げた雰囲気があり、そう言った意味で、存在感抜群のマシンだ。
文句なしの高性能
OSは64bit版のWindows 10 Pro。初期起動時のスタート画面(タブレットモード)とデスクトップは標準のまま。壁紙も変わっていない。Xeon、16GB、NVMe対応のM.2 SSD……と、一般的なデスクトップPCすらも軽く凌駕するパフォーマンスで快適に作動する。
ストレージは、NVMe対応の256GB M.2 SSD「SAMSUNG MZVPV256」を搭載。Cドライブのみの1パーティションで約238GB割り当てられ空きは173GB。
Wi-FiはIntel Dual Band Wireless-AC 8260。EthernetとBluetoothもIntel製だ。USB 3.0は、デバイスマネージャには表示していないが、同じくIntel製の標準的なものだった。そのほか、TPM 1.2なども一覧にある。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリはなく、デスクトップアプリも「Broadcom Advanced Control Suite 4」、「Thunderbolt設定」、「BANG & OLUFSEN」、「Intel Management and Security Status」、「Alps GlidePoint」、「HP 3D DriveGuard」など、基本的にツール系だ。用途を考えるとこの方が使いやすいのは言うまでもない。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2。QuadroでNVMe対応M.2 SSDなので、3DMark、CrystalDiskMarkの結果も見たい。バッテリ駆動時間テストはBBench。またCrystalMarkの結果も掲載した(今回は4コア8スレッドと条件的に問題があるので参考まで)。
winsat formalの結果は、総合 8.1。プロセッサ 8.13、メモリ 8.1、グラフィックス 8.2、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 9.1。PCMark 8 バージョ2は4201。3DMarkは、Ice Storm 109646、Cloud Gate 15564、Sky Diver 10940、Fire Strike 3422。
winsat formalの結果が8.1以上とハイレベルで整っているのが凄い。3DMarkのスコアも高く、実際テスト中に映像を眺めていてもFire Strike以外はかなりスムーズに動いていた。
CrystalDiskMarkは、Seq Q32T1 Read 2240/Write 1282、4K Q32T1 Read 546.8/Write 379.9、Seq Read 1656/Write 1270、4K Read 57.07/Write 199.4(MB/s)。CrystalMarkは、ALU 67759、FPU 62291、MEM 66512、HDD 62786、GDI 16826、D2D n/a、OGL 240994。
CrystalDiskMarkはさすがのリードライト性能が出ている。またCrystalMarkはあくまでも参考値とは言え、OGLが桁違いのもの凄いスコアだ。
BBenchは、省電力、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で12,365秒/3.4時間。高パフォーマンスでも12,196秒とほぼ同じだった。ここだけ仕様の最大約9.5時間とは全く違う値が出ている。
プロセッサ内蔵のIntel HD Graphics P530なら9時間程度は行きそうだが、そもそもデバイスマネージャを見てもQuadro M1000Mしかなく、省電力/高パフォーマンスともにQuadro M1000Mで作動していると思われる。であれば、このバッテリ駆動時間も納得だ。もしかすると、どこか別のところでグラフィックスの省エネ設定があるかも知れないが、探したところ見当たらなかった。ただ用途上、バッテリ駆動は室内の移動程度だと思われるので、特に問題は無いだろう。
以上のようにHP「ZBook Studio G3 Mobile Workstation/E3-1505M v5」は、Skylake世代のXeonとQuadro M1000M Special Editionを搭載したモバイルワークステーションだ。フルHDで解像度不足な時は、4Kパネルの上位モデルも用意されている。筐体やバックライト付のキーボード、サウンドのクオリティも抜群。内容に伴う最高級のマシンに仕上がっている。
性能を考えれば、動作中普通のノートPCよりは熱く、そして高価になるのは仕方ないだろう。ワークステーションとして使えるノートPCを探しているユーザーにお勧めの逸品と言えよう。