西川和久の不定期コラム

日本サムスン「S27A850D」
~27型PLSパネル2,560×1,440ドットの液晶ディスプレイ



 日本サムスンは1月10日、2012年モデルとして液晶ディスプレイのラインナップを一新し、20機種を1月19日から順次出荷すると発表した。今回はその中から27型PLSパネルを搭載した「S27A850D」をご紹介したい。

●27型PLSパネルで2,560×1,440ドット

 PLS(Plane to Line Switching)式の液晶パネルは、存在こそ知っていたものの、筆者が実機を試すのは今回が初。IPSとどう違うのか興味津々だ。同社がホームページに掲載している「液晶パネル特徴比較」の表を見ると、一番の違いは「透過率」で、PLS式の方がIPS式よりも高いとされている。カラクリは同ページをご覧頂きたいが、透過率が高いと、より明るくなるため、結果、同じ明るさならIPS式より省電力になる。

 1月10日に、発表されたPLS採用製品は、27型「S27A850D」と24型「S24A850DW」の2機種 。概要は、前者が27型/2,560×1,440ドット/DVI-D×2、DisplayPort/69,800円前後、後者は、24型/1,920×1,200ドット/DVI-D、ミニD-Sub15ピン、DisplayPort/39,800円前後となる。入力の構成が一部異なるものの3型+解像度の違いで3万円の差だ。今回編集部から届いたのは27型の「S27A850D」。主な仕様は以下の通り。

【日本サムスン「S27A850D」の仕様】
最大解像度2,560×1,440ドット
スクリーンサイズ27型(非光沢/PLS/LEDバックライト)
色域sRGB対比100%
視野角上下/左右とも178度
応答速度5ms(中間色)
輝度300cd/平方m
コントラスト比1,000:1(ダイナミックコントラスト比500万:1)
入力端子デュアルリンクDVI-D×2、DisplayPort×1、
USB 3.0×3、USBアップリンク×1、音声入出力、電源入力
スピーカー無し
最大消費電力69W(USB無し53W)
高さ調整150mm
チルト前2度~後25度
スウィーベル270度
ピボット機能あり
サイズ/重量642.5×442.5×224.5mm(幅×奥行き×高さ)/6.6kg(スタンド含む)
直販価格69,800円

 スクリーンサイズは27型。冒頭に書いたようにPLS式の液晶パネルだ。LEDバックライトで非光沢となっている。最大解像度は2,560×1,440ドットと、PCへ接続する一般的ディスプレイとしては最大級だ。

 色域はsRGB対比100%。視野角は上下/左右とも178度、中間色での応答速度は5ms、輝度は300cd/平方m、コントラスト比は1,000:1(ダイナミックコントラスト比500万:1)。このクラスでは標準的な性能と言えよう。

 入力端子は、デュアルリンクDVI-D×2、DisplayPort×1、USB 3.0×3、USBアップリンク×1、ライン入力、ヘッドフォン出力、電源入力。3ポートのUSB 3.0 Hubを内蔵しているのはポイントが高い。スピーカーは内蔵していない。2つの入力を1画面に並べて表示するPBP(Picture by Picture)にも対応している。

 最大消費電力は69W(USB無しで53W)。同社の説明によると、同輝度の条件下ではIPSより消費電力が30%低いとされている。参考までに、筆者が所有するEIZO「CG245W」は最大100W、Apple「Thunderbolt Display」は最大250W(MacBook Proを充電中のThunderbolt Display)、HP「ZR2740w」は最大120W(工場初期設定95W)であり、サイズと解像度が同じZR2740wより消費電力はかなり抑えられている。

 加えて「エコモーションセンサー」、「エコライトセンサー」機能により、メニューから簡単にバックライトの明るさを、通常使用時から3段階(50/75/100%)で設定ができ、「Magic Eco機能(エコセービング)」という、より簡単に省エネを支援する機能も搭載している。

 高さは最大150mm、チルト前2度~後25度、スイベル270度、そしてピボットにも対応。サイズは642.5×442.5×224.5mm(幅×奥行き×高さ)だが、これはスタンドを含んだもので、液晶パネルの最薄部(フチ側面)は実測で約2cmと結構薄い。重量は6.6kg(スタンド含)、スタンド無しで4.5kgとなる。

正面/高さ調整最小。扉の写真と比較しても色やコントラストに変化が無いのが分かる裏面。ACアダプタは中央上の凹みの部分へセットする。VESAフリーマウント規格にも対応正面ボタン周辺。OSD MENU/ECO or ↓/輝度調整 or ↑/入力切替 or 確定/PBP/電源
裏面左側。ライン入力/ヘッドフォン出力/USB 3.0×3/USBアップリンク裏面右側。電源入力/DVI-D/DisplayPort/DVI-D。チルトは最大の後25度ピボット回転により、縦置きにして1,440×2,560ドットに。この位置は高さ最小でまだ少し上げる余裕はある
高さ調整を最大の150mmまで上げたところケーブルマネージメントは、挟むだけの簡単なもので、USBを含む全ケーブルを接続すると少し足りないかも知れない付属品。USB 3.0ケーブル、DVIケーブル、電源コード、ACアダプタ、ドライバCD。DisplayPortケーブルは付属しない

 視野角は、扉の写真が上下左右共に結構角度を付けた状態だが、正面の写真と比較してほぼ色やコントラストに変化が無いのが分かる。IPS式とほぼ同じと言っていい。発色は正確で、標準設定だと若干派手目だが、メリハリがあり、コントラストも高い。一般的なディスプレイとしては十分以上と言えよう。

 デザインは、フチの側面のみ光沢ブラック、他はマットブラックでまとめられ落ち着いた雰囲気になっている。ただ台座が少し大きいと思う。スタンド込みで重量は6.6kgなので、ちょっとした移動や位置替えなどでは苦にならない。

 高さ、チルト、スイベル、ピボットの調整も重過ぎず軽過ぎず。スッと動いてピタッと止まる。ガタツキもなく安定していて好印象だ。

 ケーブルマネージメントは写真からも分かるように簡素なもの。太目のACケーブルやDVIケーブル、DisplayPortケーブル、そして4本のUSBケーブルなど、全て挟むと少し窮屈かも知れないが、通常使用では問題無いだろう。

 面白いのはACアダプタの扱いだ。パッケージから取り出した時、妙にACアダプタから出ているケーブルが短く(50cmほど)、さらに電源スイッチとACインレットの位置(電源スイッチの裏にミッキータイプのコネクタがある)が普通では無かったので気になっていたが、これは裏面の上部にACアダプタごと収納できる凹みがあり、そこへ設置するというカラクリだった。

 長年いろいろなディスプレイを試用してきたものの、この仕掛けは初めて。仕様上の薄さを重視したのか、電源が故障しても簡単に交換できるよう配慮したのかは不明だが、合理的な実装だ。

●オーソドックスな構成で魅力的なディスプレイ

 OSDはECO関連のモード設定も含めかなり豊富な内容となっている。少し分かり難い部分だけ簡単に解説すると、「MAGIC Bright」は環境に合わせて画質を最適化、「MAGIC Color」は、同社開発の映像画質向上技術で、画質低下させることなく鮮やかな自然色を実現する。

 内容に関しては以下の通り。

 映像→MAGIC Bright(ユーザー調整/標準/ゲーム/シネマ/ダイナミックコントラスト)。映像→MAGIC Color(オフ/デモ/フル/インテリジェント)。フルは肌色を含む画質向上、デモは通常モードとの比較画面、インテリジェントは肌色以外の画質向上。映像→明るさ/コントラスト/シャープネス/反応時間(標準/高速/最高速)。

 色調→赤/緑/青/色温度(青色系1/青色系2/標準/赤色系1/赤色系2/ユーザー設定)/ガンマ(モード1/モード2/モード3)。

 サイズとポジション→PBP(Picture by Picture)→モード(オン/オフ)/コントラスト。この時、左側はデジタル1かDisplayPort、右側はデジタル2。また解像度は1,280×1,440ドットか1,280×1,024ドットとなる。

 サイズとポジション→画像サイズ(自動/ワイド/4:3/画面に合わせる)/H-ポジション/V-ポジション。

 サイズとポジション→ECO→エコモーションセンサー(オフ/5分/10分/20分/30分/1時間)/バックライト(オフ/暗く)/エコ光センサー(オフ/オン)/感度(高/中/低)/明るさレベル(明るく/現状維持/暗く)/エコセービング/エコアイコンの表示(オフ/オン)。

 サイズとポジション→メニューの透明度(オフ/オン)/言語/PC・AVモード(PC/AV)画像サイズ拡大/自動ソース検出(自動/手動)/表示時間(5秒/10秒/20秒/200秒)OSDが消えるまでの時間/繰り返し回数(速く/1秒/2秒/繰り返しなし)ボタンが押された時の応答速度/カスタマイズキー(ECO/MAGIC/画像サイズ)/オフタイマーのオン・オフ(オフ/オン)/オフタイマー設定(1~23時間)/リセット。

 コンシューマに必要な機能は全て盛り込まれており、特に不満は無いものの、表現があいまいで少し表記を変えて欲しい部分が色調だ。“標準/ガンマ1”がsRGB(6500K/2.2)と思われるが、色温度にしてもガンマにしても具体的な数値が一切使われておらず、本当にあっているのか不安になる。

OSD/映像OSD/色調OSD/サイズとポジション
OSD/セットアップとリセットOSD/セットアップとリセット(続き)2画面モード

 付属のドライバCDには、ICMプロファイル、「MagicRotation Auto」を含むディスプレイドライバ、マニュアル、セットアッププログラムなどが入っている。MagicRotation Autoは、ディスプレイの回転をセンサーで検出、自動的にWindowsの画面が回転する仕掛けだ。

 参考までに付属の“SMS27A850.icm”をMac OS XのColorSyncユーティリティでsRGBと比較したのが掲載したチャートとなる(後ろ側の色の薄い部分がsRGB、表の色が濃い部分がSMS27A850.icm)。

セットアップ・プログラムデバイスマネージャ/ディスプレイColorSyncユーティリティで付属のICMとsRGBを比較


 以上のようにS27A850Dは、2つのDVI-Dと1つのDisplayPortを備え、PLSパネルの採用により、IPSの視野角の広さを引き継ぎつつ、省エネになっているのが魅力的。USB 3.0 Hubを内蔵しているのもポイントが高い。

 最近IPSパネルを採用した液晶ディスプレイは比較的安価になってきているものの、この内容なら価格的にも十分リーズナブル。ハイエンドな27型液晶ディスプレイを探しているユーザーの候補になりえる1台だ。